犯罪都市グレグル
霧深いグレグルの町では、今日も金と悲鳴と血が飛び交っている。
悪人ばかりのこの町で、新人の運び屋が殺人狂の殺し屋と飲んでいた。
「……」
「カサネちゃん、お酒進まないねー。もしかして気分悪いの?」
「気分悪くならない方がおかしいです」
ダイニングバー『クレナイ』で2人、カウンター席に座り話す。
カサネが新人の運び屋としてタッグを組んだ初めての相手が、殺人狂と名高い殺し屋のキキョウだった。
その殺しっぷりといったら、凄まじいものがあった。
ターゲットの殺す相手はもちろん、その味方まで切り刻み、悲鳴を上げる相手に「あはは、あはっ」と高笑い。
運び屋初日にして、心が折れそうな出来事だった。
「そんなに具合悪いなら、オレんち来る?」
「なんでそうなるんですかっ」
「いや、ベッドに寝かせてよしよししてあげよーかなって」
「いりませんっ」
そしてなんだか気に入られてしまい、終始
口説かれる始末。
「もう私、帰ります」
「送って行くよー」
「いりません」
スタスタとカサネが帰ってしまうと、キキョウはマスターに泣きつく。
「連れないよねーマスター」
「あんたの殺し方みたらそりゃね」
グラスを拭きながら、マスターは話相手に
なる。
「本当さー、こんな犯罪都市で珍しいよねーああいう子。知ってるーマスター?」
「なあに?」
「カサネちゃんみたいな純粋無垢な子の血って、綺麗な血なんだよねー」
「それ聞いたら益々あの子、あんたから逃げるわよ」
「あっははー。かもねー」
愛用のナイフを弄びながら、キキョウは想像する。
彼女の悲鳴を聞きながら引き裂き見る血なら、どんなに綺麗だろうか……。
「また仕事、一緒になるかなぁー」
「どうかしらね。今日でやめちゃうかもしれないわよ」
「そしたら追いかけようかなー」
「こんな殺人鬼に執着されて、あの子もとんだ災難ね」
カサネは霧雨が降る暗闇の中、くしゃみを
ひとつする。
「誰か噂してるのかな?」
そしてこれからの運び屋稼業を考え、気が重くなるのだった。
今日も明日も明後日も、グレグルの町には悪人が集い、犯罪者が闊歩する。
果たしてカサネはこの町に、馴染むのだろうか……。
完
悪人ばかりのこの町で、新人の運び屋が殺人狂の殺し屋と飲んでいた。
「……」
「カサネちゃん、お酒進まないねー。もしかして気分悪いの?」
「気分悪くならない方がおかしいです」
ダイニングバー『クレナイ』で2人、カウンター席に座り話す。
カサネが新人の運び屋としてタッグを組んだ初めての相手が、殺人狂と名高い殺し屋のキキョウだった。
その殺しっぷりといったら、凄まじいものがあった。
ターゲットの殺す相手はもちろん、その味方まで切り刻み、悲鳴を上げる相手に「あはは、あはっ」と高笑い。
運び屋初日にして、心が折れそうな出来事だった。
「そんなに具合悪いなら、オレんち来る?」
「なんでそうなるんですかっ」
「いや、ベッドに寝かせてよしよししてあげよーかなって」
「いりませんっ」
そしてなんだか気に入られてしまい、終始
口説かれる始末。
「もう私、帰ります」
「送って行くよー」
「いりません」
スタスタとカサネが帰ってしまうと、キキョウはマスターに泣きつく。
「連れないよねーマスター」
「あんたの殺し方みたらそりゃね」
グラスを拭きながら、マスターは話相手に
なる。
「本当さー、こんな犯罪都市で珍しいよねーああいう子。知ってるーマスター?」
「なあに?」
「カサネちゃんみたいな純粋無垢な子の血って、綺麗な血なんだよねー」
「それ聞いたら益々あの子、あんたから逃げるわよ」
「あっははー。かもねー」
愛用のナイフを弄びながら、キキョウは想像する。
彼女の悲鳴を聞きながら引き裂き見る血なら、どんなに綺麗だろうか……。
「また仕事、一緒になるかなぁー」
「どうかしらね。今日でやめちゃうかもしれないわよ」
「そしたら追いかけようかなー」
「こんな殺人鬼に執着されて、あの子もとんだ災難ね」
カサネは霧雨が降る暗闇の中、くしゃみを
ひとつする。
「誰か噂してるのかな?」
そしてこれからの運び屋稼業を考え、気が重くなるのだった。
今日も明日も明後日も、グレグルの町には悪人が集い、犯罪者が闊歩する。
果たしてカサネはこの町に、馴染むのだろうか……。
完