犯罪都市グレグル

「クラヴィスー、こんちはー!」

 勢いよく、闇医者クラヴィスの家のドアを開けるは、殺し屋キキョウ。

「ちょっと殺しちゃいけなかった奴、半殺しにしちゃってさー。治してくんない?」

 ずるずると男を引きずり、クラヴィスの前に連れてくる。

「……キキョウ、もう少し静かに出来ないのか?」

「ごめーん」

 笑いつつキキョウは、クラヴィスに改めて
お願いをする。

「コイツ死んじゃうと、報酬半分になっちゃうからさ、ちゃちゃっと治してやって。報酬は弾むよー」

 後で取りに行くからーと、言い残して出て行くキキョウ。

「やれやれ。せっかくの休日が、台無しになってしまったな」

 キキョウは『休業』の札が見えなかったらしい。

「ならば、さっさと終わらせよう……」

 血まみれの男を手術台に乗せ、針を握る。

「オペ、スタート」

 言うや否や、目にも止まらぬ速さで消毒、縫合をして傷を塞ぐクラヴィス。

 ものの十五分で治療は終えた。そして電話を一本入れる。

「ああ、運び屋か? 仕事だ。ある男をキキョウの元まで運んで欲しい。……どうした、何か問題でもあるのか? そうか、では頼む」

 キキョウの『後で』というのはかなり遅いので、クラヴィスはせっかくの休日を楽しむべく、運び屋に運んでもらう依頼をした。

「またマスターのところで飲むとするか……」

 あそこはいい。静かで時間がゆっくりと流れていて、とても気に入っている。



 その後、運び屋に治療した男を託し、クラヴィスはダイニングバー『クレナイ』へと向かうのであった……。



 完


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