犯罪都市グレグル

「この男が我に願い、我は叶えた。代価を頂くのが当然だろう」

 少女は愛らしい顔に反して、低くしゃがれた声で話す。

「ま、おっちゃんもそう思うんだけどサ」

 神父姿の男は頭を掻きつつ、困った様子で
ため息をつく。

「神父コクトー様、どうか娘を……」

 必死に神父コクトーの服に縋り、懇願する
父親。

 元はと言えば、この父親が自分勝手な願いをし、悪魔は代価として娘を頂く約束をした。

 なので、悪魔の言い分はもっともなのだが。

「でもおっちゃん、金で頼まれちまったからヨ、悪く思わねーでくれや」

 神父はポケットから聖水を取り出し、少女にかけながら呪文を唱える。

「ぐ、やめろ! 貴様、許さんぞ」

「悪いねー」

 悪魔が「呪ってやる」「許さない」「殺す」と喚いても一向にやめず、呪文を唱え続けた結果、悪魔は少女の身体から出て行った。

「パパー」

「ライラ!」

 父娘は抱き合って喜び合う。

 しかしよくもまあ、あんな上位の悪魔を召喚出来たもんだ。基本的に低位か中位くらいの悪魔しか、普通の人間は呼び出せないもんだが。

「ありがとうございました」

 成功報酬もたっぷりともらい、神父は家を
あとにする。

 金持ちどもの欲望は果てしない。神父コクトーは、あとまだ三件悪魔払いの仕事が残っていた。

「ちゃちゃっと終わらせますかー」

 チャラチャラと胸の十字架を鳴らしながら、神父コクトーは戦いへと赴くのだった……。



 完

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