犯罪都市グレグル

 霧の町グレグルで繁盛するダイニングバー『クレナイ』。

 今日もたくさんの悪人たちが集まり、息抜きをしていく。

「はあー。あなたオススメのディタグレープも美味しいわね」

「暗殺者さんオススメのカクテルもいいですね」

 暗殺者のナツキと運び屋のカサネは、互いのオススメのカクテルを飲み、酒のつまみを食べる。

 二人は今日初めてタッグを組み、ターゲットの首を依頼主に運んで来たのだった。

「なんか久しぶりにいい仕事した気がする。カサネちゃんだっけ? また次も組みたいわね」

「あたしの方こそ、やりやすかったですよ。あの殺人癖のある方じゃなくて良かったです」

「あー、あの殺し屋のキキョウに追いかけ回されているんだって?」

「ええ、まあ」

 酒の進んだ二人はやがて、お互いの天敵について語り合う。

「そっか。私はさ、あのボディーガードの奴にいつか、痛い目に合わせてやりたいのよね」

「ああ、ミメイさんですか? そんなに悪い人じゃなさそうですけど」

 カサネはタッグを組んだ事のある、ミメイを頭に思い浮かべ答える。

「何言ってんの! アイツ私の仕事を邪魔した上、その、あのっ」

「食べられちゃったんでしたっけ?」

 けろっと言葉にするカサネに、顔を赤くするナツキ。

「でもミメイさん、ナツキさんの事心配してましたよ?」

「あの時爆弾を放り投げてきて、心配も何もないでしょっ」

 最初の仕事では足にナイフを刺された上に抱かれ、次の仕事では銃の弾を受けた上、最後に爆弾を投げてきたのだ。

「まあ仕事ですから、攻撃をするのは仕方ないと思いますよ」

「攻撃しといて心配って……そんなの、信じられないわ。マスター、おかわり」

 話が妙な方向にいきそうなので、ナツキはカサネの方を改めて聞く。

「カサネちゃんの方は、どうなの。あのキキョウとは」

「あたしですか? まあ運のいい事に、しばらく逢わずにいるので良かったですけど」

「そうなの。まあ、あの高笑いしながら人をミンチにするの、やめてほしいわよね」

 一度タッグを組み共に戦ったが、敵をあんな肉塊にするならば、あまりキキョウとは手を組みたくないとナツキは思う。

「まあ、今日は仕事の成功を祝って飲みましょう」

 マスターに新たにカクテルを作ってもらい、乾杯をした。






「あっ、ラッキー。今日の僕の星座一位だってー」

「俺のは最下位かぁー」

 キキョウとミメイの二人は携帯で、星座占いを確認する。

 話題の二人は今日一緒に仕事をしていて、やっと終わった所だった。

「ちょっとクレナイで飲んで行こうよー」

「そうだな、寄って行くかぁ」




 ナツキとカサネの天敵が来るまで、あと十秒。



 完


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