犯罪都市グレグル
闇夜の帳が降りたここグレグルの町にある、お洒落なダイニングバー『クレナイ』。
その店で、暗殺者『ナイトメア』の2つ名を持つナツキは、カクテルを傾けながら重いため息をついた。
あーあ、今日の仕事も失敗しちゃったな。あと少しでターゲットを殺せたのに……アイツ。
アイツこと、ターゲットを守っていたボディーガードのことを思い出し、カクテルを一気に飲み干す。
薄暗い店内は軽やかなテンポの曲が流れており、ナツキの今の気分にはそぐわない。
「マスター、おかわり」
「飲み過ぎじゃないの?」
「いいのよ、今日は飲みたい気分なのっ」
ナツキに「はいはい」と受け答えして、マスターがおかわりのカクテルを作る。
「隣り、いいかい?」
「いいわよ、別に」
ナツキの隣りに、男性が座ってきた。紺色のコートを着た背の高い紳士。
「お待たせ」
マスターがおかわりのカクテルを、注いでくれる。
それをまた一気に飲み干し「おかわり」と言ったナツキから、グラスを取り上げた紳士。
「なにすんのよっ」
「飲み過ぎじゃない?」
「そんなの、私の勝手でしょっ」
紳士の声にどこか聞き覚えがあるな、と感じながらグラスを取り返す。
どこでだったか……つい最近、聞いた気がする。
「ミメイちゃんは何か飲む?」
「じゃあ、バーボンの水割り」
思い出そうとするナツキの熱視線を受け、紳士は笑って答える。
「まだ思い出せない? 今日、戦ったばかりだろ?」
そのニヒルな笑いを見て、ナツキはやっと思い出した。
「ボディーガードのスーツ男っ!」
「おいおい、名前くらい覚えて欲しいな。俺の名前はミメイだよ、弱者な暗殺者のナイトメアさん?」
「お前のせいで……いっ!」
今日のこの男との戦いで傷ついた足に、痛みが走る。
「おいおい、大丈夫か? 俺、思いっきりナイフ刺したから、あんまり無理しない方がいいぞ?」
「今日の恨み、ここで果たす……!」
ナツキがミメイに飛びかかると、彼は片手で彼女の動きを止めてしまう。
「店に迷惑かけるな」
ミメイがナツキにデコピンをすると、ナツキは店内の端までぶっ飛んだ。
「ちょっとミメイちゃん、どっちが店に迷惑かけてるのよー」
「わりぃマスター」
デコピンでナツキは気を失い、ピクリともしない。
「じゃじゃ馬は好みじゃないんだが……」
ナツキを担ぎ上げ、ミメイがマスターに声をかける。
「マスター、ツケで頼む」
「はいはい」
こうしてナツキは、敵であるミメイにお持ち帰りされた。
目を覚ましたナツキが、ベッドの上で顔を青ざめたのは、時間の問題だった。
完
その店で、暗殺者『ナイトメア』の2つ名を持つナツキは、カクテルを傾けながら重いため息をついた。
あーあ、今日の仕事も失敗しちゃったな。あと少しでターゲットを殺せたのに……アイツ。
アイツこと、ターゲットを守っていたボディーガードのことを思い出し、カクテルを一気に飲み干す。
薄暗い店内は軽やかなテンポの曲が流れており、ナツキの今の気分にはそぐわない。
「マスター、おかわり」
「飲み過ぎじゃないの?」
「いいのよ、今日は飲みたい気分なのっ」
ナツキに「はいはい」と受け答えして、マスターがおかわりのカクテルを作る。
「隣り、いいかい?」
「いいわよ、別に」
ナツキの隣りに、男性が座ってきた。紺色のコートを着た背の高い紳士。
「お待たせ」
マスターがおかわりのカクテルを、注いでくれる。
それをまた一気に飲み干し「おかわり」と言ったナツキから、グラスを取り上げた紳士。
「なにすんのよっ」
「飲み過ぎじゃない?」
「そんなの、私の勝手でしょっ」
紳士の声にどこか聞き覚えがあるな、と感じながらグラスを取り返す。
どこでだったか……つい最近、聞いた気がする。
「ミメイちゃんは何か飲む?」
「じゃあ、バーボンの水割り」
思い出そうとするナツキの熱視線を受け、紳士は笑って答える。
「まだ思い出せない? 今日、戦ったばかりだろ?」
そのニヒルな笑いを見て、ナツキはやっと思い出した。
「ボディーガードのスーツ男っ!」
「おいおい、名前くらい覚えて欲しいな。俺の名前はミメイだよ、弱者な暗殺者のナイトメアさん?」
「お前のせいで……いっ!」
今日のこの男との戦いで傷ついた足に、痛みが走る。
「おいおい、大丈夫か? 俺、思いっきりナイフ刺したから、あんまり無理しない方がいいぞ?」
「今日の恨み、ここで果たす……!」
ナツキがミメイに飛びかかると、彼は片手で彼女の動きを止めてしまう。
「店に迷惑かけるな」
ミメイがナツキにデコピンをすると、ナツキは店内の端までぶっ飛んだ。
「ちょっとミメイちゃん、どっちが店に迷惑かけてるのよー」
「わりぃマスター」
デコピンでナツキは気を失い、ピクリともしない。
「じゃじゃ馬は好みじゃないんだが……」
ナツキを担ぎ上げ、ミメイがマスターに声をかける。
「マスター、ツケで頼む」
「はいはい」
こうしてナツキは、敵であるミメイにお持ち帰りされた。
目を覚ましたナツキが、ベッドの上で顔を青ざめたのは、時間の問題だった。
完
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