episode:2
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「あの日」、あの熱心な学生くん、クージョージョータロー君とのあれやこれが幕を閉じ、その日に提案した企画書は佐藤さんや東堂さんの後押しもあって無事に通ったのでした。
いつかまた、クージョージョータロー君がこのイルカショーを見に来た時、新しく変わった、もっともっと楽しんで貰えるようショーにしようと、佐藤さんと東堂さんとショーが終わったあとに練習を繰り返して、忙しなくも充実した毎日を送っていたある日のこと。
あの日からちょうど一週間後
「…………」
『(クージョージョータロー君だ!?!?)』
案外早く私が淡く望んでいた「いつか」は訪れたのです。
「《あら、彼、来てくれたじゃない。良かったわね。》」
『《うん!!思ってたより早く会えて嬉しい!!楽しんでもらわなくっちゃ!》』
私を背に乗せているラブも、クージョージョータロー君に気が付いたらしく、私に話しかけてくる。1週間という短い期間だけど、前と同じ制服で、クージョージョータロー君は他のお客さん達とは少し離れたところに座ってる。皆と一緒に盛り上がろうという性格でないことはなんとなーく分かるのだけど、こちらが少し寂しくなってしまうのが、きっと私が【変わっている】せいなのだろう。
クージョージョータロー君をもう1度チラリ、と見ると、私をじ、と、何だか……【信じられないものを見ている】かのように驚いた表情で私を見ている。何か私の顔についてるだろうか?ぺたぺたと触ってみても何もおかしいところはない。
「《でも良いのかしら、彼。》」
『《?何が?》』
私が私の顔を触って変なものがついてないか確認していると、ラブがよく分からないことを言い出す。佐藤さんの自己紹介を軽く聞き流すようにしながら、ラブに聞き返す。
「《彼、人間で言う所の【学生】ってやつでしょ?》」
『《そうね!前に教えたものね、アレは制服!私よりもう少し下の子、学生達が着る物よ。》』
「《学生は平日に学校って所に通って勉強をするのよね?》」
『《そう!流石はラブね!》』
「《じゃあやっぱり、不味いんじゃあないの?》」
『《え?》』
一体何が不味いのだろうか??クージョージョータロー君が学生である事が?別に何も不味いことは無い。けれどラブは不味いっていう。学生が…………【学生が平日に水族館に来ている】事が!!
バッ!!!と私は勢いよくクージョージョータロー君の方を見上げ、はくはくと空いた口を開いたり閉じたりしてしまう。勢いで【平日に学校サボってきちゃダメなんじゃないの!?】と叫んでしまいそうになったけど、何とか止める。
『《………でも待って?ラブ。確かに学生は学校に行くことが普通だけど、もしかしたら何か理由があるかもしれないじゃない?》』
「《そうなの?》」
『《学校で嫌なことがあったから、ここに来て貴方たちを見て傷ついた心を癒しに来てるのかも!分からないけれど、私、クージョージョータロー君は悪い子ではないと思うし………》』
それに、わざわざ見に来てくれたんだもの。きっと、親子のお客様や恋人同士のお客様達が多いこの水族館で、一人で居づらいこのショーを見に来てくれてる。私があの時また見に来て、とお願いしたから来てくれたなんて、自惚れはしないけれど
来てくれたのなら、めいいっぱい楽しんでもらわないと。私はそう思い、いつの間にか東堂さんから渡されたマイクを手に、いつもの自己紹介をする。クージョージョータロー君は、先程の驚いた顔から無表情に戻っていて、私が手を振ると帽子の鍔を下げて目を逸らしてしまう。何だかそれが少し可愛いなぁ、と思う。年下って何で可愛く思えるのだろうか。不思議だなぁ。
「それでは皆様!本日もイルカショーを存分にお楽しみください!!」
私たち3人はプールからステージへと上がり、それぞれイルカ達に指示をするため、ハンドサインをする。1週間練習してきたんだ。イルカ達のアクロバティックなジャンプを。3頭のイルカがプールをくるくると回り、それぞれタイミングよく上、中、下、とジャンプの高さを調整して交差するようにジャンプをする。
イルカは基本、体重が個体差はあれど200キロ近くある。けれど水中での助走をすることで、イルカのジャンプ力は最大で8mにも及ぶのだ。ジャンプ力ばかりは個体差ではなく、そのイルカの助走によって決まるのです。
そのジャンプ力を活かして、3頭のイルカが空中でぶつからないギリギリを攻めたジャンプのショーを見せる。空中でスピンジャンプ、フロントフリップ、バックフリップ。お客様の歓声も上がるほど綺麗に揃ったジャンプは、練習の成果もありついに形になった。
『(皆喜んでくれてる……良かった。嬉しい……)』
子供も、大人も、何も関係なく楽しんでくれている。イルカ達も楽しくショーに取り組んでくれている。佐藤さんと東堂さんの後押しがなければ、今この形は出来上がってない。何より、新人である私の企画書をちゃんと読んでくれて、受け入れてくれた館長には頭が上がらない。
あの日、クージョージョータロー君も私を支えてくれた1人だ。
ショーは無事に終わり、大きな拍手が聞こえる。今日はイルカに触れ合うイベントはない………というより、試運転が上手く行き過ぎたので、【土日】のみの【ショーが始まる前のくじ】にて限られ選ばれた人しか触れないようにしたのである。クージョージョータロー君はそれを知らないはずだ、出来れば教えてあげたかったのに。
ごめんね、と謝罪の意味も込めてクージョージョータロー君の方をちら、と見ると、そこには空席が1つ。いつの間にかクージョージョータロー君は居なくなってしまっていた。慌ててキョロキョロと視線をさ迷わせるも、あの大きな学生服の影はどこにもない。
もしかしたら、イルカに触れないのに気付いて、ガッカリして帰ってしまったのかも。そう考えると申し訳なさと、何となく呆気ない感じがしてちょっぴり残念な気持ちになる。ちょっぴりていうのは嘘、かなり残念です。
何とかその気持ちを顔に出さないよう退場までやりすごし、舞台袖に隠れた瞬間、はぁーーーと大きなため息を零す。
「《彼?》」
『《いつの間にか居なくなってたー………喜んでもらえたのかなー…………あれだけ自信満々に啖呵切った手前、恥ずかしい感じが………》』
「《私達完璧だったわ。きっと楽しんでくれたわよ。》」
『《…………そうかな》』
そうだといいなぁ、でもなぁ。なんてモヤモヤと考えていると、トントンと肩に手が置かれる。振り向くとニヤニヤとした顔を私に向ける佐藤さんと東堂さんが居た。
『お、お二人共………ど、どうしたんですか………?』
「いや、どーしたとこーしたも……彼、来てたじゃん!また学校サボって、だけど!」
「わっかりやすく嬉しそうな顔してたわよ、叶絵ちゃん!」
『は、はい、見に来てくれたんだなー……って。えへへ。』
「あーーー………何だ、ラブな感じじゃないのぉ?」
『?ラブがどうしたんですか?』
「あー、ダメだこりゃ、東堂さん、まだ叶絵ちゃんには早すぎる会話だったみたい。」
「そうみたいですねー、残念。」
『え、えぇ〜…?な、なんですかぁそれ………!』
やれやれ、と2人が何だか呆れたような感じで肩を落として首を左右に振るので、なんの事か分からない私はどうも気になって2人の周りをラブと一緒にグルグルと回る。バックヤードに入り、ラブ達と一旦別れてから、私たち3人はまた昼からのショーに向けて、先程のショーの問題点を話し合いながらトレーナー用の休憩室へと向かう。
「あれ、館長?」
「おや、佐藤君、東堂さん、叶絵さん、お疲れ様。」
お疲れ様です!と3人で勢いよく頭を下げ、休憩室の前で誰かと話していた感じの館長を3人で仲良く首を傾げて待つ。館長は普段、館長室でお仕事をなさっているので、あまり日中お姿を見かけることは少ない。だからこうしてバックヤードの休憩室の前にいるだけでも、そうそうにレアな人なのです。
「さて、彼女が来たから私はこれで失礼するよ。【ホリィ】さんに宜しく言っておいてくれたまえ、【承太郎】君。」
館長のその言葉に、私達3人は脳内に1人の人物を思い浮かべる。いや、でもまさかそんな、だって、何で館長と?どういう関係で?館長はそんな私たちが質問を投げかける隙もなく、くるりと踵を返して去ってしまう。
キィ、と館長が居た休憩室のドアが完全に開かれ、そこからすっ、と、先程まで客席にいた制服姿が見える。
『く、うじょー………ジョータロー君………?』
「………ああ。久しぶりだな、オネーサン。ちとアンタに聞きたいことがある………時間を貰うぜ。」
1週間ぶりの彼は相変わらずの無表情だったけれど、何となく私を……なんだろう、私を見る目が違う。理解できないものを目にしたような、何となく焦っているような感じがする。
私も丁度、聞きたいことが出来た所だ。ジョータロー君のその雰囲気に圧倒されたのか、ちょっと怖がっている佐藤さんと東堂さんの前に出て、ジョータロー君を下から見上げて、すぅはぁと深呼吸をしてから落ち着いて喋り出す。
『うん、いいよ。佐藤さんと東堂さんも聞いてて大丈夫?』
「………いや、出来りゃ2人がいい。その方が…………いや、何でもねぇ。とにかく2人だ。いいな。」
『分かった。あの、佐藤さん、東堂さん』
「え?あ、うん。大丈夫、更衣室行ってるから。」
『はい!じゃあまた!』
おずおずと、私を心配そうに見つめる2人は、どことなく行きづらそうにしている。私はもう一度深呼吸をしてから、なるべくの笑顔を2人に見せて、2人を安心させるよう、はっきりと言いたいことを口にした。
『大丈夫ですよ、クージョージョータロー君はいい子ですから!』
「「「…………」」」
『へ?あれっ?』
「………やれやれだぜ。」
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「あの日」、あの熱心な学生くん、クージョージョータロー君とのあれやこれが幕を閉じ、その日に提案した企画書は佐藤さんや東堂さんの後押しもあって無事に通ったのでした。
いつかまた、クージョージョータロー君がこのイルカショーを見に来た時、新しく変わった、もっともっと楽しんで貰えるようショーにしようと、佐藤さんと東堂さんとショーが終わったあとに練習を繰り返して、忙しなくも充実した毎日を送っていたある日のこと。
あの日からちょうど一週間後
「…………」
『(クージョージョータロー君だ!?!?)』
案外早く私が淡く望んでいた「いつか」は訪れたのです。
「《あら、彼、来てくれたじゃない。良かったわね。》」
『《うん!!思ってたより早く会えて嬉しい!!楽しんでもらわなくっちゃ!》』
私を背に乗せているラブも、クージョージョータロー君に気が付いたらしく、私に話しかけてくる。1週間という短い期間だけど、前と同じ制服で、クージョージョータロー君は他のお客さん達とは少し離れたところに座ってる。皆と一緒に盛り上がろうという性格でないことはなんとなーく分かるのだけど、こちらが少し寂しくなってしまうのが、きっと私が【変わっている】せいなのだろう。
クージョージョータロー君をもう1度チラリ、と見ると、私をじ、と、何だか……【信じられないものを見ている】かのように驚いた表情で私を見ている。何か私の顔についてるだろうか?ぺたぺたと触ってみても何もおかしいところはない。
「《でも良いのかしら、彼。》」
『《?何が?》』
私が私の顔を触って変なものがついてないか確認していると、ラブがよく分からないことを言い出す。佐藤さんの自己紹介を軽く聞き流すようにしながら、ラブに聞き返す。
「《彼、人間で言う所の【学生】ってやつでしょ?》」
『《そうね!前に教えたものね、アレは制服!私よりもう少し下の子、学生達が着る物よ。》』
「《学生は平日に学校って所に通って勉強をするのよね?》」
『《そう!流石はラブね!》』
「《じゃあやっぱり、不味いんじゃあないの?》」
『《え?》』
一体何が不味いのだろうか??クージョージョータロー君が学生である事が?別に何も不味いことは無い。けれどラブは不味いっていう。学生が…………【学生が平日に水族館に来ている】事が!!
バッ!!!と私は勢いよくクージョージョータロー君の方を見上げ、はくはくと空いた口を開いたり閉じたりしてしまう。勢いで【平日に学校サボってきちゃダメなんじゃないの!?】と叫んでしまいそうになったけど、何とか止める。
『《………でも待って?ラブ。確かに学生は学校に行くことが普通だけど、もしかしたら何か理由があるかもしれないじゃない?》』
「《そうなの?》」
『《学校で嫌なことがあったから、ここに来て貴方たちを見て傷ついた心を癒しに来てるのかも!分からないけれど、私、クージョージョータロー君は悪い子ではないと思うし………》』
それに、わざわざ見に来てくれたんだもの。きっと、親子のお客様や恋人同士のお客様達が多いこの水族館で、一人で居づらいこのショーを見に来てくれてる。私があの時また見に来て、とお願いしたから来てくれたなんて、自惚れはしないけれど
来てくれたのなら、めいいっぱい楽しんでもらわないと。私はそう思い、いつの間にか東堂さんから渡されたマイクを手に、いつもの自己紹介をする。クージョージョータロー君は、先程の驚いた顔から無表情に戻っていて、私が手を振ると帽子の鍔を下げて目を逸らしてしまう。何だかそれが少し可愛いなぁ、と思う。年下って何で可愛く思えるのだろうか。不思議だなぁ。
「それでは皆様!本日もイルカショーを存分にお楽しみください!!」
私たち3人はプールからステージへと上がり、それぞれイルカ達に指示をするため、ハンドサインをする。1週間練習してきたんだ。イルカ達のアクロバティックなジャンプを。3頭のイルカがプールをくるくると回り、それぞれタイミングよく上、中、下、とジャンプの高さを調整して交差するようにジャンプをする。
イルカは基本、体重が個体差はあれど200キロ近くある。けれど水中での助走をすることで、イルカのジャンプ力は最大で8mにも及ぶのだ。ジャンプ力ばかりは個体差ではなく、そのイルカの助走によって決まるのです。
そのジャンプ力を活かして、3頭のイルカが空中でぶつからないギリギリを攻めたジャンプのショーを見せる。空中でスピンジャンプ、フロントフリップ、バックフリップ。お客様の歓声も上がるほど綺麗に揃ったジャンプは、練習の成果もありついに形になった。
『(皆喜んでくれてる……良かった。嬉しい……)』
子供も、大人も、何も関係なく楽しんでくれている。イルカ達も楽しくショーに取り組んでくれている。佐藤さんと東堂さんの後押しがなければ、今この形は出来上がってない。何より、新人である私の企画書をちゃんと読んでくれて、受け入れてくれた館長には頭が上がらない。
あの日、クージョージョータロー君も私を支えてくれた1人だ。
ショーは無事に終わり、大きな拍手が聞こえる。今日はイルカに触れ合うイベントはない………というより、試運転が上手く行き過ぎたので、【土日】のみの【ショーが始まる前のくじ】にて限られ選ばれた人しか触れないようにしたのである。クージョージョータロー君はそれを知らないはずだ、出来れば教えてあげたかったのに。
ごめんね、と謝罪の意味も込めてクージョージョータロー君の方をちら、と見ると、そこには空席が1つ。いつの間にかクージョージョータロー君は居なくなってしまっていた。慌ててキョロキョロと視線をさ迷わせるも、あの大きな学生服の影はどこにもない。
もしかしたら、イルカに触れないのに気付いて、ガッカリして帰ってしまったのかも。そう考えると申し訳なさと、何となく呆気ない感じがしてちょっぴり残念な気持ちになる。ちょっぴりていうのは嘘、かなり残念です。
何とかその気持ちを顔に出さないよう退場までやりすごし、舞台袖に隠れた瞬間、はぁーーーと大きなため息を零す。
「《彼?》」
『《いつの間にか居なくなってたー………喜んでもらえたのかなー…………あれだけ自信満々に啖呵切った手前、恥ずかしい感じが………》』
「《私達完璧だったわ。きっと楽しんでくれたわよ。》」
『《…………そうかな》』
そうだといいなぁ、でもなぁ。なんてモヤモヤと考えていると、トントンと肩に手が置かれる。振り向くとニヤニヤとした顔を私に向ける佐藤さんと東堂さんが居た。
『お、お二人共………ど、どうしたんですか………?』
「いや、どーしたとこーしたも……彼、来てたじゃん!また学校サボって、だけど!」
「わっかりやすく嬉しそうな顔してたわよ、叶絵ちゃん!」
『は、はい、見に来てくれたんだなー……って。えへへ。』
「あーーー………何だ、ラブな感じじゃないのぉ?」
『?ラブがどうしたんですか?』
「あー、ダメだこりゃ、東堂さん、まだ叶絵ちゃんには早すぎる会話だったみたい。」
「そうみたいですねー、残念。」
『え、えぇ〜…?な、なんですかぁそれ………!』
やれやれ、と2人が何だか呆れたような感じで肩を落として首を左右に振るので、なんの事か分からない私はどうも気になって2人の周りをラブと一緒にグルグルと回る。バックヤードに入り、ラブ達と一旦別れてから、私たち3人はまた昼からのショーに向けて、先程のショーの問題点を話し合いながらトレーナー用の休憩室へと向かう。
「あれ、館長?」
「おや、佐藤君、東堂さん、叶絵さん、お疲れ様。」
お疲れ様です!と3人で勢いよく頭を下げ、休憩室の前で誰かと話していた感じの館長を3人で仲良く首を傾げて待つ。館長は普段、館長室でお仕事をなさっているので、あまり日中お姿を見かけることは少ない。だからこうしてバックヤードの休憩室の前にいるだけでも、そうそうにレアな人なのです。
「さて、彼女が来たから私はこれで失礼するよ。【ホリィ】さんに宜しく言っておいてくれたまえ、【承太郎】君。」
館長のその言葉に、私達3人は脳内に1人の人物を思い浮かべる。いや、でもまさかそんな、だって、何で館長と?どういう関係で?館長はそんな私たちが質問を投げかける隙もなく、くるりと踵を返して去ってしまう。
キィ、と館長が居た休憩室のドアが完全に開かれ、そこからすっ、と、先程まで客席にいた制服姿が見える。
『く、うじょー………ジョータロー君………?』
「………ああ。久しぶりだな、オネーサン。ちとアンタに聞きたいことがある………時間を貰うぜ。」
1週間ぶりの彼は相変わらずの無表情だったけれど、何となく私を……なんだろう、私を見る目が違う。理解できないものを目にしたような、何となく焦っているような感じがする。
私も丁度、聞きたいことが出来た所だ。ジョータロー君のその雰囲気に圧倒されたのか、ちょっと怖がっている佐藤さんと東堂さんの前に出て、ジョータロー君を下から見上げて、すぅはぁと深呼吸をしてから落ち着いて喋り出す。
『うん、いいよ。佐藤さんと東堂さんも聞いてて大丈夫?』
「………いや、出来りゃ2人がいい。その方が…………いや、何でもねぇ。とにかく2人だ。いいな。」
『分かった。あの、佐藤さん、東堂さん』
「え?あ、うん。大丈夫、更衣室行ってるから。」
『はい!じゃあまた!』
おずおずと、私を心配そうに見つめる2人は、どことなく行きづらそうにしている。私はもう一度深呼吸をしてから、なるべくの笑顔を2人に見せて、2人を安心させるよう、はっきりと言いたいことを口にした。
『大丈夫ですよ、クージョージョータロー君はいい子ですから!』
「「「…………」」」
『へ?あれっ?』
「………やれやれだぜ。」
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