episode:1
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空条承太郎、という名前を確かに口にした、イルカショーを熱心に見てくれていた目の前の大きな学生さんから渡したマイクを手に戻され、「やれやれだぜ」なんて呟いて帽子の鍔を下げられてしまう。
目が合わなくなってしまったことを少しだけ残念に思いながら、佐藤さんが進め始めたイベントのアドリブではあるが、しっかりとした内容説明を聞く。きっと、私の提出した企画書を隅々まで読んで、理解してくれたんだ。その事にほこほこと胸を温めながら、ラブ達に《楽しもうね》と声をかける。
ふ、と鋭い視線を感じたのでそちらの方へと振り向くと、先程自己紹介をしてくれたクージョージョータロー君が私の方をその鋭い眼光で見つめている。何か彼の気に触る事をしてしまったのだろうか。もしかしたら、いやもしかしたら、イルカに触るのはちょっと怖いのかもしれない。こんな大きな男の子でも、やっぱり怖いものは怖いもの、見るのと触るのではやっぱり体感する度合いが違うもの。私はそう思い、極力彼に安心してもらおうと、にっこりとぎこちない笑顔を浮かべる。
『大丈夫ですよ、クージョージョータロー君。ゆっくり撫でてあげてくださいね!この子の名前はラブ、女の子です!』
きゃあきゃあと喜んでイルカに触る子供達を横目に、クージョージョータロー君を手招きしてラブの前で私が屈むと、彼もゆっくりと私の方へと歩いてきて、ゆっくりとラブの前で座る。そうすると大きな身長の彼が私と同じくらいの目線になって、何だかそんな彼を少しだけ可愛いな、と思ってしまうのは、年上の性なのかな、って。
「………オネーサン。魚は俺たち人間が触っちまうと火傷をすると聞くが………イルカ達は大丈夫なのか?」
途端、口を開いたクージョージョータロー君がこちらを見上げて、無表情だけど、なんとなく不安そうな声音でそう聞くので、質問をしてくれた!という感動に打ち震えながらも、興奮を抑えてその疑問に応えるべく口を開く。
『よく知ってるね、クージョージョータロー君。魚は確かに変温動物だから人が触ってしまうと火傷をしてしまう場合があるのだけど、イルカの皮膚は長時間日光に晒されたり、乾燥されない限りは、優しく人間が触れる程度なら大丈夫なのよ。火傷はしないよ。』
「………そうかい。それじゃ、触らせてもらうぜ。」
安心したのか、少しだけ口角を上げた(ように見えるだけ?かもしれない。)クージョージョータロー君は、そのままゆっくりと、指先からラブの背中に触る。それから優しくなぞるように指先をラブの背中から尾にかけて、段々指先から手のひらへと変わり、その感触を確かめるように時々つついたりしている。
よほどイルカに興味があるんだろうなぁ、と思ってホッコリしながら眺めていると、ラブから目線の離れたクージョージョータロー君がこちらを見上げる。にやけていた顔を戻して、どうしたの?と声をかけると、先程までの楽しそうな雰囲気から、何だか刺々しいものに変わる。
「……オネーサンは、何故俺を指名した?」
『え?何でって………触りたそうだなって思ったから?』
「どうして、そう思う?」
『熱心に見てくれていたから………かな?』
「………アンタはどうしてそう思う?」
『え?ど、どうしてって………』
段々と、何だかいつの間にか立ち上がって私を見下ろしていたクージョージョータロー君の雰囲気が、よく分からないものになっていく。クージョージョータロー君は癖なのか、その学帽の鍔を下ろして、やれやれだぜ、とまた呟いて私をジィ、と刺すように見つめる。その次に出たクージョージョータロー君の言葉は、私のダメなところを深々と突き刺すようで、私は思わず耳を塞ぎたくなってしまった。
「アンタは、どうかしているぜ。」
その後の事は、私は覚えてない。気がついたら更衣室で、佐藤さんと東堂さんに揺さぶられて、肩にはバスタオルがかけられていた。
『あれ………?ふ、触れ合いタイムは………?』
「お客様の反応は上々だったよ。館長も今後も続けていーって。でもさ、叶絵ちゃん。今はそれが一番先じゃないだろ?」
「そうよ………あのヤンキーになんか失礼なこと言われたんでしょ!」
『え?クージョージョータロー君ですか?あ……いえ、逆………です。』
「「逆?」」
2人の声が重なり、ずい、と不思議そうに2人の顔が急に近づく。思わず後ろにのけ反りそうになるも、後ろは壁で、息を飲みながら、目線をさまよわせて、縮こまる。2人の迫力に萎縮しながら、なんとか次の言葉を口にする。
『私、昔から………空気が、読めなくて………いつも、【そうなのかな?】って、思っちゃって………お節介を、しちゃうんです。クージョージョータロー君も……イルカ、好きなのかなって……触りたいのかなって思ったから……思ってしまったから、クージョージョータロー君に、お節介、しちゃったんだと……思います。きっと、迷惑だったと……思います。』
だから、私はきっとおかしいんだ。きっとどうかしていて、だから、私は駄目なんだ。漠然と、それだけは分かるのに、どこがどうダメなのかも分からなくて、結局きっと私は逃げ続けているのだろう。そんな自分が情けなくて、また体を縮こませて膝を抱えてしまう。
そんな私の頭に、ぽんぽんと優しい手が触れて、2人の呆れたようなため息が聞こえて、ビクッ!と肩を揺らしてしまう。きっと2人も幻滅して、と顔を恐る恐る見上げると、想像とは別の優しい笑顔が2人から向けられていた。
「………叶絵ちゃん、恥ずかしい話なんだけど、私と佐藤さんはね、最初客席にそのクージョージョータロー君を見つけた時、「うわ、厄介な冷やかしが居るな」って思ってた。」
『え?』
「見るからに学校サボったヤンキーだったでしょ?気まぐれで水族館に来て、ショーをめちゃくちゃにさるんじゃないか?ってずっと心配してた。」
「でも、叶絵ちゃんさ、東堂さんが自己紹介してる時……あのヤンキーに手ぇ振ったでしょ。あれから俺達、やっぱり気が気じゃなくてさ!叶絵ちゃんがあのヤンキーを指名した時も、「何してんだ!?」って焦ったの。」
私がちゃんと理解できるように、1つずつ優しい声音と笑顔で話す目の前のふたりに、段々と落ち着きを取り戻す。あぁそういえば、クージョージョータロー君が、「どうかしている」と言ったあと、何かを続いて言っていた気もする。ショックで忘れてしまったのだけれど、なんだっけ。
「でも、あのヤンキーはショーの最中も俺達が危惧してたトラブルも起こさず、指名されたらステージに降りて、渡されたマイクで自己紹介までして、イルカに触っても大丈夫か丁寧に聞いてくれたよな。それでさ、俺達恥ずかしくなったよ。自分たちがさ。見かけで判断してたんだ。本当は叶絵ちゃんが言うように、きっとイルカショーを真剣に見てくれて、イルカに興味を持って触りたいって思ってくれたろうにさ。」
勿論、本当のとこは俺たちにも分からないけれど、きっとそうだったよ。とそう付け足して私を励ましてくれる、目の前の2人。暗い気持ちが晴れたあと、クージョージョータロー君があの後言った言葉を、ハッと思い出す。
《…………けど、ありがとうよ。オネーサン。いい経験だったぜ。》
彼の、少し嬉しさに溢れた言葉を、顔を、私ははっきりと思い出して、ずきりと胸が痛む。だって私、早とちりをして、彼のその言葉にきっと応えられなかった。
『ど、うしよう、佐藤さん、東堂さん………私………早とちりして………』
「……反応無くなっちゃってたからねぇ、完全に。」
「多分?ちょっと?慌てたクージョージョータロー君が私たちを控えめに呼んでくれたから、館長の耳にも入ってないと思うわ。」
『うっ………す、すみません………』
なんという大失態だ。私のメンタルの弱さのせいで、純粋なクージョージョータロー君の言葉を反故にしてしまった。大人の私が。その事実にまた逃げそうになるけれど、ぐ、と堪える。逃げたらまた、彼の言葉を裏切ってしまうと思ったから。
「………叶絵ちゃんがさ、昔のこと言わないのは分かってるの。きっと酷いことがあった事も何となくわかってて、それはあなたが悪いことじゃあないのも分かってるわ。でもそれは……」
『はい………はい、わかってます。弱いままでいい、理由にはなりません。私は大人で、イルカショーのトレーナーで、お客様を笑顔にさせたい、だからイルカのトレーナーになったんだから……!』
クージョージョータロー君に、謝りたい。けれどきっと彼はもう、来てはくれないだろう。今日初めて水族館で見かけた彼は、常連さんという訳でもなく、無反応になってしまった私の反応を見て傷ついてしまった。私の責任だ。だから、だからこそ、繰り返さないように。
ぐ、と胸の痛みに耐えながら、私は佐藤さんと東堂さんに向かってそう言うと、2人ともわしゃわしゃと私の頭を撫でてくれる。恥ずかしさやら嬉しさで目が霞む。
もし、もしもまた彼と会うことがあったなら、きちんと謝って、また楽しんで貰えるように最高のショーを、届けたい。それが私の、私なりの責任の取り方だと、思うから。
そして私は、まだ知らない。
彼、クージョージョータロー君がとても律儀で優しい子だということを。
望んでいた謝罪のための再会がすぐに訪れるということを。
霞んだ視界を振り払うように目を擦った私は、まだ、知らない。
空条承太郎、という名前を確かに口にした、イルカショーを熱心に見てくれていた目の前の大きな学生さんから渡したマイクを手に戻され、「やれやれだぜ」なんて呟いて帽子の鍔を下げられてしまう。
目が合わなくなってしまったことを少しだけ残念に思いながら、佐藤さんが進め始めたイベントのアドリブではあるが、しっかりとした内容説明を聞く。きっと、私の提出した企画書を隅々まで読んで、理解してくれたんだ。その事にほこほこと胸を温めながら、ラブ達に《楽しもうね》と声をかける。
ふ、と鋭い視線を感じたのでそちらの方へと振り向くと、先程自己紹介をしてくれたクージョージョータロー君が私の方をその鋭い眼光で見つめている。何か彼の気に触る事をしてしまったのだろうか。もしかしたら、いやもしかしたら、イルカに触るのはちょっと怖いのかもしれない。こんな大きな男の子でも、やっぱり怖いものは怖いもの、見るのと触るのではやっぱり体感する度合いが違うもの。私はそう思い、極力彼に安心してもらおうと、にっこりとぎこちない笑顔を浮かべる。
『大丈夫ですよ、クージョージョータロー君。ゆっくり撫でてあげてくださいね!この子の名前はラブ、女の子です!』
きゃあきゃあと喜んでイルカに触る子供達を横目に、クージョージョータロー君を手招きしてラブの前で私が屈むと、彼もゆっくりと私の方へと歩いてきて、ゆっくりとラブの前で座る。そうすると大きな身長の彼が私と同じくらいの目線になって、何だかそんな彼を少しだけ可愛いな、と思ってしまうのは、年上の性なのかな、って。
「………オネーサン。魚は俺たち人間が触っちまうと火傷をすると聞くが………イルカ達は大丈夫なのか?」
途端、口を開いたクージョージョータロー君がこちらを見上げて、無表情だけど、なんとなく不安そうな声音でそう聞くので、質問をしてくれた!という感動に打ち震えながらも、興奮を抑えてその疑問に応えるべく口を開く。
『よく知ってるね、クージョージョータロー君。魚は確かに変温動物だから人が触ってしまうと火傷をしてしまう場合があるのだけど、イルカの皮膚は長時間日光に晒されたり、乾燥されない限りは、優しく人間が触れる程度なら大丈夫なのよ。火傷はしないよ。』
「………そうかい。それじゃ、触らせてもらうぜ。」
安心したのか、少しだけ口角を上げた(ように見えるだけ?かもしれない。)クージョージョータロー君は、そのままゆっくりと、指先からラブの背中に触る。それから優しくなぞるように指先をラブの背中から尾にかけて、段々指先から手のひらへと変わり、その感触を確かめるように時々つついたりしている。
よほどイルカに興味があるんだろうなぁ、と思ってホッコリしながら眺めていると、ラブから目線の離れたクージョージョータロー君がこちらを見上げる。にやけていた顔を戻して、どうしたの?と声をかけると、先程までの楽しそうな雰囲気から、何だか刺々しいものに変わる。
「……オネーサンは、何故俺を指名した?」
『え?何でって………触りたそうだなって思ったから?』
「どうして、そう思う?」
『熱心に見てくれていたから………かな?』
「………アンタはどうしてそう思う?」
『え?ど、どうしてって………』
段々と、何だかいつの間にか立ち上がって私を見下ろしていたクージョージョータロー君の雰囲気が、よく分からないものになっていく。クージョージョータロー君は癖なのか、その学帽の鍔を下ろして、やれやれだぜ、とまた呟いて私をジィ、と刺すように見つめる。その次に出たクージョージョータロー君の言葉は、私のダメなところを深々と突き刺すようで、私は思わず耳を塞ぎたくなってしまった。
「アンタは、どうかしているぜ。」
その後の事は、私は覚えてない。気がついたら更衣室で、佐藤さんと東堂さんに揺さぶられて、肩にはバスタオルがかけられていた。
『あれ………?ふ、触れ合いタイムは………?』
「お客様の反応は上々だったよ。館長も今後も続けていーって。でもさ、叶絵ちゃん。今はそれが一番先じゃないだろ?」
「そうよ………あのヤンキーになんか失礼なこと言われたんでしょ!」
『え?クージョージョータロー君ですか?あ……いえ、逆………です。』
「「逆?」」
2人の声が重なり、ずい、と不思議そうに2人の顔が急に近づく。思わず後ろにのけ反りそうになるも、後ろは壁で、息を飲みながら、目線をさまよわせて、縮こまる。2人の迫力に萎縮しながら、なんとか次の言葉を口にする。
『私、昔から………空気が、読めなくて………いつも、【そうなのかな?】って、思っちゃって………お節介を、しちゃうんです。クージョージョータロー君も……イルカ、好きなのかなって……触りたいのかなって思ったから……思ってしまったから、クージョージョータロー君に、お節介、しちゃったんだと……思います。きっと、迷惑だったと……思います。』
だから、私はきっとおかしいんだ。きっとどうかしていて、だから、私は駄目なんだ。漠然と、それだけは分かるのに、どこがどうダメなのかも分からなくて、結局きっと私は逃げ続けているのだろう。そんな自分が情けなくて、また体を縮こませて膝を抱えてしまう。
そんな私の頭に、ぽんぽんと優しい手が触れて、2人の呆れたようなため息が聞こえて、ビクッ!と肩を揺らしてしまう。きっと2人も幻滅して、と顔を恐る恐る見上げると、想像とは別の優しい笑顔が2人から向けられていた。
「………叶絵ちゃん、恥ずかしい話なんだけど、私と佐藤さんはね、最初客席にそのクージョージョータロー君を見つけた時、「うわ、厄介な冷やかしが居るな」って思ってた。」
『え?』
「見るからに学校サボったヤンキーだったでしょ?気まぐれで水族館に来て、ショーをめちゃくちゃにさるんじゃないか?ってずっと心配してた。」
「でも、叶絵ちゃんさ、東堂さんが自己紹介してる時……あのヤンキーに手ぇ振ったでしょ。あれから俺達、やっぱり気が気じゃなくてさ!叶絵ちゃんがあのヤンキーを指名した時も、「何してんだ!?」って焦ったの。」
私がちゃんと理解できるように、1つずつ優しい声音と笑顔で話す目の前のふたりに、段々と落ち着きを取り戻す。あぁそういえば、クージョージョータロー君が、「どうかしている」と言ったあと、何かを続いて言っていた気もする。ショックで忘れてしまったのだけれど、なんだっけ。
「でも、あのヤンキーはショーの最中も俺達が危惧してたトラブルも起こさず、指名されたらステージに降りて、渡されたマイクで自己紹介までして、イルカに触っても大丈夫か丁寧に聞いてくれたよな。それでさ、俺達恥ずかしくなったよ。自分たちがさ。見かけで判断してたんだ。本当は叶絵ちゃんが言うように、きっとイルカショーを真剣に見てくれて、イルカに興味を持って触りたいって思ってくれたろうにさ。」
勿論、本当のとこは俺たちにも分からないけれど、きっとそうだったよ。とそう付け足して私を励ましてくれる、目の前の2人。暗い気持ちが晴れたあと、クージョージョータロー君があの後言った言葉を、ハッと思い出す。
《…………けど、ありがとうよ。オネーサン。いい経験だったぜ。》
彼の、少し嬉しさに溢れた言葉を、顔を、私ははっきりと思い出して、ずきりと胸が痛む。だって私、早とちりをして、彼のその言葉にきっと応えられなかった。
『ど、うしよう、佐藤さん、東堂さん………私………早とちりして………』
「……反応無くなっちゃってたからねぇ、完全に。」
「多分?ちょっと?慌てたクージョージョータロー君が私たちを控えめに呼んでくれたから、館長の耳にも入ってないと思うわ。」
『うっ………す、すみません………』
なんという大失態だ。私のメンタルの弱さのせいで、純粋なクージョージョータロー君の言葉を反故にしてしまった。大人の私が。その事実にまた逃げそうになるけれど、ぐ、と堪える。逃げたらまた、彼の言葉を裏切ってしまうと思ったから。
「………叶絵ちゃんがさ、昔のこと言わないのは分かってるの。きっと酷いことがあった事も何となくわかってて、それはあなたが悪いことじゃあないのも分かってるわ。でもそれは……」
『はい………はい、わかってます。弱いままでいい、理由にはなりません。私は大人で、イルカショーのトレーナーで、お客様を笑顔にさせたい、だからイルカのトレーナーになったんだから……!』
クージョージョータロー君に、謝りたい。けれどきっと彼はもう、来てはくれないだろう。今日初めて水族館で見かけた彼は、常連さんという訳でもなく、無反応になってしまった私の反応を見て傷ついてしまった。私の責任だ。だから、だからこそ、繰り返さないように。
ぐ、と胸の痛みに耐えながら、私は佐藤さんと東堂さんに向かってそう言うと、2人ともわしゃわしゃと私の頭を撫でてくれる。恥ずかしさやら嬉しさで目が霞む。
もし、もしもまた彼と会うことがあったなら、きちんと謝って、また楽しんで貰えるように最高のショーを、届けたい。それが私の、私なりの責任の取り方だと、思うから。
そして私は、まだ知らない。
彼、クージョージョータロー君がとても律儀で優しい子だということを。
望んでいた謝罪のための再会がすぐに訪れるということを。
霞んだ視界を振り払うように目を擦った私は、まだ、知らない。