episode:3
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承太郎君と知り合って、もう早二ヶ月ほどが経ちました。あの出会いから、私も大分変わりました。
「《今日も、彼と勉強?》」
『《うん。承太郎君ね。》』
「《結構マメなのね、彼。》」
『《いい子だもの。それに頑張り屋さん。》』
そう、承太郎君はとても頑張り屋さん。だからかな、彼に負けないように私も頑張れる。昔の私が見たらビックリするんじゃないかな。今の私はちょっと成長したんだよって、胸を張って言える。美容室も怖くなくなったし、誰かに話しかけられても吃ることも少なくなってきた。この間だって、駅で道に迷って困っていた人に、自分から話しかけることも出来た。
「《そうね、最近の貴方凄く輝いてる。》」
『《え、本当!?》』
「《私ほどじゃないけど。》」
『《えへ、嬉しい。ありがとう。》』
承太郎君という男の子との出会いが、私を成長させてくれた。あの日、彼が水族館に来てくれて本当に良かったと、心から思う。彼にも、感謝を伝えなくっちゃ。また何恥ずかしい事言ってるんだって怒られるかもしれないけれど、やっぱりそれでも言える時に、言いたい言葉を伝えたい。後悔しないように。私は、昔からそうしてきたのだから。
『えへへ、という訳でハイ!コレ!』
「…………【いつもありがとう】なんてのはこっちの台詞だと言ってるだろーが。しかも何だこれ。」
『プレゼントまで渡すつもりは無かったんだけど…………でもやっぱり何か、君に喜んで欲しくて。今度イルカと写真が撮れるイベントをやるの。それの参加券!』
「………………オイ。公衆の面前で俺に赤恥かけって?中々意地悪するじゃあねぇか。」
『え?じゃあ要らない?』
「………………………………………要る。」
『はい。よく出来ました!えらい!』
「オイ、何か慣れてきてるだろう。叶絵さん。」
『ふっふっふっ。君の事ならもう何でもお見通しか、も、よ?』
「ほぉ?」
電車に揺られながらの帰り道。承太郎君は慣れてきたな?と言ってるけれど、実際もう二ヶ月、しかもほぼ毎日彼の顔を見て過ごして、彼の事を考えているのだ。勿論慣れてきた、なんてモノでなく、数週間前は自信がなかったけど今は胸を張って思う。私と彼は、友人なのだ。彼が私に変に取り繕わないから、とてもいい子だから、私をそうさせてくれたのだ。
ズイ、と彼の顔が近づき、私の鼻と彼の鼻とが触れそうな距離に近づく。あ、この顔は私に意地悪する時の顔だ。さしずめ会話の流れからするに、「俺が今何を考えているか当ててみな」って事だろう。当たらない自信があるのだ。そして私も当てる自信は無い。流石に彼が今何を考えてるかなんて、見つめられてるだけでは分からない。うーん?と首を捻ってみて、彼をくまなく観察するけれど分からない。
『もー!ダメ!降参!君が何を考えてるか分からないよ!』
「…………答え、知りたいか?」
『え?あー………うん。はい。知りたいかな。』
「…………【可愛い】」
『ん?』
「【可愛い】と考えてた。」
『………じょ、承太郎君……………』
「……………」
『主語がないよ主語が!それじゃあ国語のテストいい点取れないよー?今日は国語系やってこうか!』
「……………やれやれだぜ。」
しかし【可愛い】なんて考えてるなんて分かるわけないのに、本当に意地悪だな承太郎君は。イルカや魚を見てる時くらいしかそう思わないでしょうに。私が心の中でやれやれだ!と承太郎君の口癖を呟いていると、隣に座っている人がモゾリ、と動く。咄嗟にごめんなさい、と言葉にしようと思ったのだが、その隣の人物を見て言葉を失う。
「は、Hi!承太郎!叶絵ちゃん!お、オホホ!偶然ね!げ、元気ぃ?」
『ほ、ホリィさん!?何で……あ、お買い物袋………隣町まで行ってたんですか?』
「そ、そう!今日偶然!たまたま!叶絵ちゃんのほら、職場近くのスーパーのね?タイムセールに行こーって思って……」
「ババア…………テメェ……………!」
『え!?なんで怒ってるの!?す、座って承太郎君!』
何故かホリィさんの姿を見て、怒っているのか、顔色の変わらない彼が少し顔を赤くして立ち上がったのを見て慌てて彼の腕を引っ張って座らせ、ごめんなさぁい〜、と私の後ろに隠れるホリィさんと怒れる承太郎君との間に挟まれる。何がどうしてこうなったのか皆目検討がつかないものの、電車が私たちの駅に止まる事によって解放される。
「…………尾けてやがったな?」
「ち、違うもーん!たまたまだもーん!」
『あ、ホリィさん。お買い物袋持ちますよ。』
「オイ、俺が持つ。叶絵さんは気にしなくていい」
「Wow!素敵よ承太郎!」
「ババア……………!!」
『こら!承太郎君!駄目でしょ!ホリィさんに向かって!』
駅から出た後も、何故か承太郎君はホリィさんに怒っていて、ホリィさんも心当たりがあるのか分かりやすく嘘をついて誤魔化しているのだけど、もう全く2人がどうしてこの調子なのか分からない。折角板挟みから開放されたかと思えば、今度は歩道で板挟み状態だ。話題を変えようとしてホリィさんが持っていた買い物袋を持とうとしたのだけれど、承太郎君にひったくられる様に取られてしまった。
『ホリィさん、今晩もお邪魔させてもらいますね。』
「ええ!そんなの全然いいのよ!叶絵ちゃんなら何時でも!welcome!でも中々お泊まりしてくれなくって私寂しいのよ〜!」
『あ、あはは………それはあの、何れ…………』
「そういえば!この間持ってきてくれた煮物!とっても美味しかったわ!叶絵ちゃんお料理上手なのね!」
「オイ、ちょっと待ちな。煮物?何だそれは。」
どうやら今までの承太郎君の怒りは収まったようで、雰囲気が和やかなものになる。良かったー!話題が変えられて!頑張ったぞ私!
『この間平日にお休みがあったから、煮物作ったんだけどね?作りすぎちゃって………ホリィさんに持って行ったの。』
「美味しくってお昼にぜーんぶ食べちゃった!」
『わ、ほ、本当ですか?う、嬉しい……………』
「……………………」
刹那、少しだけ承太郎君がまた不機嫌になる。
承太郎君はいい子だけどよく分からないうちに不機嫌になるから、私はもう気にしないことにしているので華麗にスルーする。だが、ホリィさんはそうもいかないようだった。承太郎君の顔色を見て、焦ったように続ける。
「ハッ!!そ、そ、そうよ!す、すごく美味しかったから、是非!あぁそうだわ!今日!今日一緒にお夕飯作らない!?叶絵ちゃん!」
『!是非!ずっと頂くばかりで心苦しくて………』
願ってもいなかった申し出に思わず食い気味に反応する。ホリィさんは本当にお料理が上手なので、一緒に作ってみたいなーなんてずっと思っていたのだ。そんな私にホリィさんは先程までの焦った顔を引っ込めて、いつもの眩しい笑顔を浮かべる。
「そんなの気にしなくていいのに!私が好きでやってる事よ?それに叶絵ちゃん、お休みの時はお掃除にお手伝いにしに来てくれたり、こうやってお勉強会の時にお皿洗いだってしてくれるでしょう?とっても助かってるわ!」
「…………ちょっと待ちな。掃除の手伝い…………?」
『あ、うん。お庭広くて大変かなって思って。承太郎君が学校行ってる間にね!ホリィさんとお茶したりもさせて貰ってて………』
「茶…………ね。随分と俺の知らない所で仲良くやってるじゃねーか。いい事だ。いい事だな。」
「oh……………Sorry……………」
『?』
さっきまで笑顔だったホリィさんが真っ青になるが、承太郎君は逆に笑っている。不機嫌だけど。でも、喧嘩しているようではないから、もしかしたらこれが普通なのかもしれない。
『承太郎君。』
「…………何だ?」
『ホリィさんの味には敵わないけど、私も頑張るから………私の料理、食べてくれる?』
「………………食わねーと思うか?」
『ううん。きっと承太郎君は私の料理が残念なレベルのやつでも、残さず食べてくれるって信じてるよ。あ、好きな食べ物ある?何食べたい?ホリィさんと頑張る!』
「叶絵ちゃん…………!」
「……………ハンバーグ。」
『うん!ハンバーグね!ホリィさん、挽肉ってありますか?』
「ある!あるわ!もー!叶絵ちゃんってとっても可愛い!!大好きよ!!」
『わー!私もホリィさん大好きです!』
何故かは分からないけど私の腕に抱き着いてくる可愛いホリィさんに、自然と笑みが溢れる。承太郎君をちらり、と見ると何処か羨ましそうで、そして嬉しそうにこちらを見ている。私はそんな承太郎君に、『可愛い』と口パクで言うと、やかましい。と頭を小突かれてしまった。
伸びる影が今日は、大きな承太郎君の影と、私の影、私より少し小さいホリィさんの影。揺らめく姿がとても楽しそうで、私は思わず声を出して笑ってしまった。
承太郎君と知り合って、もう早二ヶ月ほどが経ちました。あの出会いから、私も大分変わりました。
「《今日も、彼と勉強?》」
『《うん。承太郎君ね。》』
「《結構マメなのね、彼。》」
『《いい子だもの。それに頑張り屋さん。》』
そう、承太郎君はとても頑張り屋さん。だからかな、彼に負けないように私も頑張れる。昔の私が見たらビックリするんじゃないかな。今の私はちょっと成長したんだよって、胸を張って言える。美容室も怖くなくなったし、誰かに話しかけられても吃ることも少なくなってきた。この間だって、駅で道に迷って困っていた人に、自分から話しかけることも出来た。
「《そうね、最近の貴方凄く輝いてる。》」
『《え、本当!?》』
「《私ほどじゃないけど。》」
『《えへ、嬉しい。ありがとう。》』
承太郎君という男の子との出会いが、私を成長させてくれた。あの日、彼が水族館に来てくれて本当に良かったと、心から思う。彼にも、感謝を伝えなくっちゃ。また何恥ずかしい事言ってるんだって怒られるかもしれないけれど、やっぱりそれでも言える時に、言いたい言葉を伝えたい。後悔しないように。私は、昔からそうしてきたのだから。
『えへへ、という訳でハイ!コレ!』
「…………【いつもありがとう】なんてのはこっちの台詞だと言ってるだろーが。しかも何だこれ。」
『プレゼントまで渡すつもりは無かったんだけど…………でもやっぱり何か、君に喜んで欲しくて。今度イルカと写真が撮れるイベントをやるの。それの参加券!』
「………………オイ。公衆の面前で俺に赤恥かけって?中々意地悪するじゃあねぇか。」
『え?じゃあ要らない?』
「………………………………………要る。」
『はい。よく出来ました!えらい!』
「オイ、何か慣れてきてるだろう。叶絵さん。」
『ふっふっふっ。君の事ならもう何でもお見通しか、も、よ?』
「ほぉ?」
電車に揺られながらの帰り道。承太郎君は慣れてきたな?と言ってるけれど、実際もう二ヶ月、しかもほぼ毎日彼の顔を見て過ごして、彼の事を考えているのだ。勿論慣れてきた、なんてモノでなく、数週間前は自信がなかったけど今は胸を張って思う。私と彼は、友人なのだ。彼が私に変に取り繕わないから、とてもいい子だから、私をそうさせてくれたのだ。
ズイ、と彼の顔が近づき、私の鼻と彼の鼻とが触れそうな距離に近づく。あ、この顔は私に意地悪する時の顔だ。さしずめ会話の流れからするに、「俺が今何を考えているか当ててみな」って事だろう。当たらない自信があるのだ。そして私も当てる自信は無い。流石に彼が今何を考えてるかなんて、見つめられてるだけでは分からない。うーん?と首を捻ってみて、彼をくまなく観察するけれど分からない。
『もー!ダメ!降参!君が何を考えてるか分からないよ!』
「…………答え、知りたいか?」
『え?あー………うん。はい。知りたいかな。』
「…………【可愛い】」
『ん?』
「【可愛い】と考えてた。」
『………じょ、承太郎君……………』
「……………」
『主語がないよ主語が!それじゃあ国語のテストいい点取れないよー?今日は国語系やってこうか!』
「……………やれやれだぜ。」
しかし【可愛い】なんて考えてるなんて分かるわけないのに、本当に意地悪だな承太郎君は。イルカや魚を見てる時くらいしかそう思わないでしょうに。私が心の中でやれやれだ!と承太郎君の口癖を呟いていると、隣に座っている人がモゾリ、と動く。咄嗟にごめんなさい、と言葉にしようと思ったのだが、その隣の人物を見て言葉を失う。
「は、Hi!承太郎!叶絵ちゃん!お、オホホ!偶然ね!げ、元気ぃ?」
『ほ、ホリィさん!?何で……あ、お買い物袋………隣町まで行ってたんですか?』
「そ、そう!今日偶然!たまたま!叶絵ちゃんのほら、職場近くのスーパーのね?タイムセールに行こーって思って……」
「ババア…………テメェ……………!」
『え!?なんで怒ってるの!?す、座って承太郎君!』
何故かホリィさんの姿を見て、怒っているのか、顔色の変わらない彼が少し顔を赤くして立ち上がったのを見て慌てて彼の腕を引っ張って座らせ、ごめんなさぁい〜、と私の後ろに隠れるホリィさんと怒れる承太郎君との間に挟まれる。何がどうしてこうなったのか皆目検討がつかないものの、電車が私たちの駅に止まる事によって解放される。
「…………尾けてやがったな?」
「ち、違うもーん!たまたまだもーん!」
『あ、ホリィさん。お買い物袋持ちますよ。』
「オイ、俺が持つ。叶絵さんは気にしなくていい」
「Wow!素敵よ承太郎!」
「ババア……………!!」
『こら!承太郎君!駄目でしょ!ホリィさんに向かって!』
駅から出た後も、何故か承太郎君はホリィさんに怒っていて、ホリィさんも心当たりがあるのか分かりやすく嘘をついて誤魔化しているのだけど、もう全く2人がどうしてこの調子なのか分からない。折角板挟みから開放されたかと思えば、今度は歩道で板挟み状態だ。話題を変えようとしてホリィさんが持っていた買い物袋を持とうとしたのだけれど、承太郎君にひったくられる様に取られてしまった。
『ホリィさん、今晩もお邪魔させてもらいますね。』
「ええ!そんなの全然いいのよ!叶絵ちゃんなら何時でも!welcome!でも中々お泊まりしてくれなくって私寂しいのよ〜!」
『あ、あはは………それはあの、何れ…………』
「そういえば!この間持ってきてくれた煮物!とっても美味しかったわ!叶絵ちゃんお料理上手なのね!」
「オイ、ちょっと待ちな。煮物?何だそれは。」
どうやら今までの承太郎君の怒りは収まったようで、雰囲気が和やかなものになる。良かったー!話題が変えられて!頑張ったぞ私!
『この間平日にお休みがあったから、煮物作ったんだけどね?作りすぎちゃって………ホリィさんに持って行ったの。』
「美味しくってお昼にぜーんぶ食べちゃった!」
『わ、ほ、本当ですか?う、嬉しい……………』
「……………………」
刹那、少しだけ承太郎君がまた不機嫌になる。
承太郎君はいい子だけどよく分からないうちに不機嫌になるから、私はもう気にしないことにしているので華麗にスルーする。だが、ホリィさんはそうもいかないようだった。承太郎君の顔色を見て、焦ったように続ける。
「ハッ!!そ、そ、そうよ!す、すごく美味しかったから、是非!あぁそうだわ!今日!今日一緒にお夕飯作らない!?叶絵ちゃん!」
『!是非!ずっと頂くばかりで心苦しくて………』
願ってもいなかった申し出に思わず食い気味に反応する。ホリィさんは本当にお料理が上手なので、一緒に作ってみたいなーなんてずっと思っていたのだ。そんな私にホリィさんは先程までの焦った顔を引っ込めて、いつもの眩しい笑顔を浮かべる。
「そんなの気にしなくていいのに!私が好きでやってる事よ?それに叶絵ちゃん、お休みの時はお掃除にお手伝いにしに来てくれたり、こうやってお勉強会の時にお皿洗いだってしてくれるでしょう?とっても助かってるわ!」
「…………ちょっと待ちな。掃除の手伝い…………?」
『あ、うん。お庭広くて大変かなって思って。承太郎君が学校行ってる間にね!ホリィさんとお茶したりもさせて貰ってて………』
「茶…………ね。随分と俺の知らない所で仲良くやってるじゃねーか。いい事だ。いい事だな。」
「oh……………Sorry……………」
『?』
さっきまで笑顔だったホリィさんが真っ青になるが、承太郎君は逆に笑っている。不機嫌だけど。でも、喧嘩しているようではないから、もしかしたらこれが普通なのかもしれない。
『承太郎君。』
「…………何だ?」
『ホリィさんの味には敵わないけど、私も頑張るから………私の料理、食べてくれる?』
「………………食わねーと思うか?」
『ううん。きっと承太郎君は私の料理が残念なレベルのやつでも、残さず食べてくれるって信じてるよ。あ、好きな食べ物ある?何食べたい?ホリィさんと頑張る!』
「叶絵ちゃん…………!」
「……………ハンバーグ。」
『うん!ハンバーグね!ホリィさん、挽肉ってありますか?』
「ある!あるわ!もー!叶絵ちゃんってとっても可愛い!!大好きよ!!」
『わー!私もホリィさん大好きです!』
何故かは分からないけど私の腕に抱き着いてくる可愛いホリィさんに、自然と笑みが溢れる。承太郎君をちらり、と見ると何処か羨ましそうで、そして嬉しそうにこちらを見ている。私はそんな承太郎君に、『可愛い』と口パクで言うと、やかましい。と頭を小突かれてしまった。
伸びる影が今日は、大きな承太郎君の影と、私の影、私より少し小さいホリィさんの影。揺らめく姿がとても楽しそうで、私は思わず声を出して笑ってしまった。