episode:2
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結局承太郎君とは手を繋いだまま、私だけが恥ずかしいまま雑踏の中を2人で歩く。会話はないけれどそれはいつもの事。いつもそれでいいはずなのに、今はそれがとても辛い。だって会話さえあれば会話に集中ができて気が散るけれど、会話がない今はその手の感触だけが私の意識に浮き彫りになっているんだから。
『じょう、たろうくん、あの、ホント、そろそろ………ね?』
「茶」
『えっ?』
「喫茶店にでも行くか。」
『え?えー…………良いけど…………承太郎君………』
「どこか行きたい店あるか?」
『な、無い。よく知らないし………承太郎君の方が詳しいよ、多分。』
「………じゃあ彼処にするか。コーヒーが美味い。」
『あ、それ嬉しい。』
今朝はインスタントコーヒーを飲んだけど、美味しいコーヒーを楽しめるのは外に出た時だけだ。やはり承太郎君は物知りだな、と少し会話ができたのでやはり手を繋いだままという意識は薄れる。承太郎君に引かれるまま、カラン。と扉にかけてある鈴の音が鳴り、落ち着いた照明の店内と流れるクラシックの素敵な喫茶店へと入る。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
『あ、は、はい!』
「こちらの席へどうぞ。」
とても紳士的な中年の男性店員さんが穏やかな笑みを浮かべながら、スマートに私達を2人席へと勧める。承太郎君が入ってきた瞬間ちょっとだけ目を見開いたけど、そこは流石プロ、その顔は引っ込めて私たちににこやかにメニュー表を渡す。私も最初は彼の身長の大きさに驚いたものだ、気持ちは分かる。そして私は今でも彼の体の大きさにビックリすることがあるので、見習わなければいけない。
席に着く時、やっと承太郎君は繋いでいた手を離してくれた。恥ずかしさからは解放されたのだけど、結構あっさり離されたのでそれもそれで何となく心がモヤッとするのは何故だろうか。
そんなモヤを私が抱いている間に、男性店員さんはメニュー表を開いて説明をしてくれている。本当に丁寧な接客で凄いなー。
「只今カップル様にだけ無料でご提供しているパフェが御座います。コーヒーと一緒に如何ですか?」
『エッ』
「?」
凄いなー、なんて感心している場合ではなかった。この人の口から出た言葉に、私は思わず目を見開いては男性店員さんを見る。あぁ!そうか!手を繋いで来店したから!それはそうだ!そんな有り得ない勘違いも起こるはずだ!コレには承太郎君も怒鳴り散らすのでは、と恐る恐る承太郎君を見ると、全く怒ってなかった。アレ??と首を傾げるも、そりゃ自分が私をからかうために手を繋いで来店したのだ、理不尽に承太郎君が怒らない人だと忘れていた。
冷静な承太郎君を見習い、首を傾げている男性店員に、ここは大人としてちゃんと間違いを正さねばならない。コホン!と1つ咳払いをしてから深呼吸をして、店員さんになるだけ笑顔で、『私達はカップルじゃないですよ!』伝えようとする。が、私のその言葉は遮られてしまった。誰に?勿論目の前の、今日はよく私に意地悪をするあの子だ。
「パフェ、食いたいか?」
『えっ?いやだって、私達は「パフェ貰っていいか。」!?』
「畏まりました。コーヒーお2つとカップルサービスパフェ、お一つで宜しいですか?」
「ああ。」
私が衝撃に固まっている間に、店員さんと承太郎君の問答が終わる。あぁ!待って店員さん!違うんです!とここで私が立ち上がってそう引き止めるにももう遅い。店員さんはカウンターの方へと行ってしまった。あぁあ.......と声にならない声を上げて机に頭を伏せるようにすると、前からクツクツと喉を鳴らす声が聞こえる。
『.......今日の君は意地悪だ.......』
「良いじゃねぇか。得したな?」
『良くないよ!こ、こんなのズルじゃない.......』
恨めしそうにジト目で承太郎君を見上げると、悪戯っぽく笑う承太郎君が視界に入る。止められなかった私も悪いのだけど、やっぱり承太郎君が悪い。
「そんなに気にしてんのか?」
『そーだよー.......ズルしちゃったー.......パフェ.......』
「..............そんなに気にするなら、本当にカップルになるか?」
『え?』
パチ。と今までジト目だった目が見開く。承太郎君本人もちょっと驚いた顔だ。今、なんかちょっと信じられない言葉が聞こえたような気がするのだけど。
「.............冗談だ。」
『え、あ、あー.......だ、だよねー!び、びっくり、ビックリしたなー!もー!今日の君は本当に意地悪だね!』
本当に、ビックリしたんだ。ビックリしただけだ。だから違うんだ。承太郎君は、私の可愛い後輩だ。ドキドキと心臓がうるさいのは、承太郎君が驚かせたから。私は誰に言い訳するでもなく、心の中でそう思った。コーヒーとパフェが来るまで、私と承太郎君には、会話がなくて、何となく気まずい雰囲気だけが漂っていた。
『パフェ!美味しー!』
「.......花より団子だな。結局食ってんじゃねーか。」
『うっ、で、でもホラ、来ちゃったしたべ、食べない方が失礼だ.......と思うんだけど.......?』
「..............事を急いたな。俺らしくねー。」
『え?何か言った?あ、承太郎君も食べなよ!本当に美味しいこのパフェ!』
「要らん。.......やれやれだぜ。叶絵さんが食べな。」
『えー!流石に悪いよー!あ、アイスだけでも食べたら?ほらー!口開けて!』
「..............やれやれだぜ。」
承太郎君がしつこい私に観念したような顔をしてパカ、と開く口にアイスを乗せたスプーンを入れる。美味しい?と聞くと、甘い。と答えた。そりゃアイスだからそうだよ。と返す。私は先程までの気まずい雰囲気も、胸の鼓動も、今承太郎君に行ったソレがまたカップルみたいな行動であることも気付かず、ただただ美味しいパフェを堪能した。
『へへー、楽しかったね!承太郎君!』
「.......まァな。本当にアンタと居ると飽きん。」
『それ、褒めてますか?』
「俺にしちゃあな。もう少し自覚を持った方がいいぜ。叶絵さん。」
『.......私が思ってるより、もしかして私達は.......仲良しさんですか.......?』
「............................やれやれだぜ。先が見えん。」
『違うの!?』
「.......まぁ、間違ってはない。」
『へへ.......て、照れるなー。』
「.......また、行くか。映画。」
『うん!』
帰り道、夕陽に伸びるその2つの影は、とても楽しそうにゆらゆらと揺れていた。
結局承太郎君とは手を繋いだまま、私だけが恥ずかしいまま雑踏の中を2人で歩く。会話はないけれどそれはいつもの事。いつもそれでいいはずなのに、今はそれがとても辛い。だって会話さえあれば会話に集中ができて気が散るけれど、会話がない今はその手の感触だけが私の意識に浮き彫りになっているんだから。
『じょう、たろうくん、あの、ホント、そろそろ………ね?』
「茶」
『えっ?』
「喫茶店にでも行くか。」
『え?えー…………良いけど…………承太郎君………』
「どこか行きたい店あるか?」
『な、無い。よく知らないし………承太郎君の方が詳しいよ、多分。』
「………じゃあ彼処にするか。コーヒーが美味い。」
『あ、それ嬉しい。』
今朝はインスタントコーヒーを飲んだけど、美味しいコーヒーを楽しめるのは外に出た時だけだ。やはり承太郎君は物知りだな、と少し会話ができたのでやはり手を繋いだままという意識は薄れる。承太郎君に引かれるまま、カラン。と扉にかけてある鈴の音が鳴り、落ち着いた照明の店内と流れるクラシックの素敵な喫茶店へと入る。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
『あ、は、はい!』
「こちらの席へどうぞ。」
とても紳士的な中年の男性店員さんが穏やかな笑みを浮かべながら、スマートに私達を2人席へと勧める。承太郎君が入ってきた瞬間ちょっとだけ目を見開いたけど、そこは流石プロ、その顔は引っ込めて私たちににこやかにメニュー表を渡す。私も最初は彼の身長の大きさに驚いたものだ、気持ちは分かる。そして私は今でも彼の体の大きさにビックリすることがあるので、見習わなければいけない。
席に着く時、やっと承太郎君は繋いでいた手を離してくれた。恥ずかしさからは解放されたのだけど、結構あっさり離されたのでそれもそれで何となく心がモヤッとするのは何故だろうか。
そんなモヤを私が抱いている間に、男性店員さんはメニュー表を開いて説明をしてくれている。本当に丁寧な接客で凄いなー。
「只今カップル様にだけ無料でご提供しているパフェが御座います。コーヒーと一緒に如何ですか?」
『エッ』
「?」
凄いなー、なんて感心している場合ではなかった。この人の口から出た言葉に、私は思わず目を見開いては男性店員さんを見る。あぁ!そうか!手を繋いで来店したから!それはそうだ!そんな有り得ない勘違いも起こるはずだ!コレには承太郎君も怒鳴り散らすのでは、と恐る恐る承太郎君を見ると、全く怒ってなかった。アレ??と首を傾げるも、そりゃ自分が私をからかうために手を繋いで来店したのだ、理不尽に承太郎君が怒らない人だと忘れていた。
冷静な承太郎君を見習い、首を傾げている男性店員に、ここは大人としてちゃんと間違いを正さねばならない。コホン!と1つ咳払いをしてから深呼吸をして、店員さんになるだけ笑顔で、『私達はカップルじゃないですよ!』伝えようとする。が、私のその言葉は遮られてしまった。誰に?勿論目の前の、今日はよく私に意地悪をするあの子だ。
「パフェ、食いたいか?」
『えっ?いやだって、私達は「パフェ貰っていいか。」!?』
「畏まりました。コーヒーお2つとカップルサービスパフェ、お一つで宜しいですか?」
「ああ。」
私が衝撃に固まっている間に、店員さんと承太郎君の問答が終わる。あぁ!待って店員さん!違うんです!とここで私が立ち上がってそう引き止めるにももう遅い。店員さんはカウンターの方へと行ってしまった。あぁあ.......と声にならない声を上げて机に頭を伏せるようにすると、前からクツクツと喉を鳴らす声が聞こえる。
『.......今日の君は意地悪だ.......』
「良いじゃねぇか。得したな?」
『良くないよ!こ、こんなのズルじゃない.......』
恨めしそうにジト目で承太郎君を見上げると、悪戯っぽく笑う承太郎君が視界に入る。止められなかった私も悪いのだけど、やっぱり承太郎君が悪い。
「そんなに気にしてんのか?」
『そーだよー.......ズルしちゃったー.......パフェ.......』
「..............そんなに気にするなら、本当にカップルになるか?」
『え?』
パチ。と今までジト目だった目が見開く。承太郎君本人もちょっと驚いた顔だ。今、なんかちょっと信じられない言葉が聞こえたような気がするのだけど。
「.............冗談だ。」
『え、あ、あー.......だ、だよねー!び、びっくり、ビックリしたなー!もー!今日の君は本当に意地悪だね!』
本当に、ビックリしたんだ。ビックリしただけだ。だから違うんだ。承太郎君は、私の可愛い後輩だ。ドキドキと心臓がうるさいのは、承太郎君が驚かせたから。私は誰に言い訳するでもなく、心の中でそう思った。コーヒーとパフェが来るまで、私と承太郎君には、会話がなくて、何となく気まずい雰囲気だけが漂っていた。
『パフェ!美味しー!』
「.......花より団子だな。結局食ってんじゃねーか。」
『うっ、で、でもホラ、来ちゃったしたべ、食べない方が失礼だ.......と思うんだけど.......?』
「..............事を急いたな。俺らしくねー。」
『え?何か言った?あ、承太郎君も食べなよ!本当に美味しいこのパフェ!』
「要らん。.......やれやれだぜ。叶絵さんが食べな。」
『えー!流石に悪いよー!あ、アイスだけでも食べたら?ほらー!口開けて!』
「..............やれやれだぜ。」
承太郎君がしつこい私に観念したような顔をしてパカ、と開く口にアイスを乗せたスプーンを入れる。美味しい?と聞くと、甘い。と答えた。そりゃアイスだからそうだよ。と返す。私は先程までの気まずい雰囲気も、胸の鼓動も、今承太郎君に行ったソレがまたカップルみたいな行動であることも気付かず、ただただ美味しいパフェを堪能した。
『へへー、楽しかったね!承太郎君!』
「.......まァな。本当にアンタと居ると飽きん。」
『それ、褒めてますか?』
「俺にしちゃあな。もう少し自覚を持った方がいいぜ。叶絵さん。」
『.......私が思ってるより、もしかして私達は.......仲良しさんですか.......?』
「............................やれやれだぜ。先が見えん。」
『違うの!?』
「.......まぁ、間違ってはない。」
『へへ.......て、照れるなー。』
「.......また、行くか。映画。」
『うん!』
帰り道、夕陽に伸びるその2つの影は、とても楽しそうにゆらゆらと揺れていた。