壱ノ巻
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思えば、今日は朝からツイてなかった。
いつも通り朝早く墓参りに行くと、にわか雨に振られ、愛読書であるイチャイチャパラダイスが少しだけ濡れてしまったり
八百屋で茄子だけが売り切れていたり。
行きつけの魚屋が定休日だったり。
とにかく朝から散々で、今日はこれからもどんどんちょっと面倒な事が続くぞ、と思っていたら、案の定厄介なことに巻き込まれてしまった。
どうやら先程、結界にも感知されずに現れたチャクラ反応があったらしい。正体不明の存在だが、確実に味方ではないことは確かだ。
だが、どうにも様子が可笑しいので、この左目――【写輪眼】での瞳術でその正体を暴いて欲しいと尋問と拷問のプロフェッショナル、森乃イビキの部下より報せを受けたのがほんの数分前。
騒がしい火影室への扉を開けると――
イビキの珍しく焦っている顔と、三代目の必死な顔が目に入る。
何事かと2人の視線の先に目をやると、どうにもか弱そうな少女が身体から蒸気が上がるほど苦しんでいる場面だった。
「――――あら。これ、なんの騒ぎですかね。」
咄嗟に出たのは、俺の気の効かない一言だったのだが。 俺の言葉に苦しんでいた少女の顔がぴくり、と動いてこちらを見上げる。
涙に濡れた瞳と、火照っているのか、顔が赤く、弱々しい呼吸をする彼女と目が合ってしまった。
妙に見てはいけないものを見てしまったかのような感覚に陥りドキリとする。明らかにまだ成人していないような子供が香らせる色香のようなものに、思わず目を逸らしてしまった。
「カカシ、良い所に……!」
「え、あぁ…………呼ばれたんでね。ところで彼女は?」
「例の正体不明のチャクラ反応の主だ。掻い摘んで説明する。」
イビキの分かりやすい説明で分かったことは、彼女が何の忍術も使わずこの木ノ葉隠れの里の大通りに姿ひとつで現れたこと。反応から察するに忍ではなく、木ノ葉隠れの里の住人でもないこと。火影室の本を読んでいたらチャクラが乱れ、暴走状態になったこと。そして過剰に俺に反応すること。
「つまり、俺が何とかするしかないって事ですね。」
「ワシとイビキの声掛けには反応せんかった。お前だけが頼りじゃ。カカシよ。 」
「なるほどね。まぁとにかく医療班を呼びましょう――――」
俺が立ち上がり、踵を返すと同時に、小さな手が俺のズボンを引く感覚。
振り返ると、件の少女が息を荒らげながら一生懸命俺を引き止める。
『行かないで。行かないで。』
「え…………」
『1人なの、皆、レンズ越しの私しか、見てくれない』
「ちょっ、ちょっと待って、話なら医務室でゆっくり……」
『ごめんなさい、ごめんなさい。私、もうお仕事出来ない、怖いの。フワフワして、飛んじゃうの。助けて。』
少女の掠れた声には、時折嗚咽が混じり、その嘆願の意味は俺には全くわからないけど、酷く寂しくて。
『お願い、お父さん、お母さん。私を見て…………1人にしないで。』
この子は、何者なのか。こんなに弱々しい存在なのに。急に人知を超えた事を成し遂げてこの里に現れて。こんなに苦しんで。
「三代目。」
「うむ。付いてやっておれ。ワシにはこの少女が敵には見えんよ…………まるで迷子の子供だ。」
「……俺も。そう思います。」
俺のズボンを引いたまま、さっきの言葉を最期に気を失った少女を、俺は優しく抱き抱える。
イビキが三代目と俺に何か言ってる気がしなくもないけど、ま。1人にしないでって言われちゃったしね。
「君が誰なのかは、君が起きてからゆっくり聞こうかな。」
思えば、今日は朝からツイてなかった。
いつも通り朝早く墓参りに行くと、にわか雨に振られ、愛読書であるイチャイチャパラダイスが少しだけ濡れてしまったり
八百屋で茄子だけが売り切れていたり。
行きつけの魚屋が定休日だったり。
とにかく朝から散々で、今日はこれからもどんどんちょっと面倒な事が続くぞ、と思っていたら、案の定厄介なことに巻き込まれてしまった。
どうやら先程、結界にも感知されずに現れたチャクラ反応があったらしい。正体不明の存在だが、確実に味方ではないことは確かだ。
だが、どうにも様子が可笑しいので、この左目――【写輪眼】での瞳術でその正体を暴いて欲しいと尋問と拷問のプロフェッショナル、森乃イビキの部下より報せを受けたのがほんの数分前。
騒がしい火影室への扉を開けると――
イビキの珍しく焦っている顔と、三代目の必死な顔が目に入る。
何事かと2人の視線の先に目をやると、どうにもか弱そうな少女が身体から蒸気が上がるほど苦しんでいる場面だった。
「――――あら。これ、なんの騒ぎですかね。」
咄嗟に出たのは、俺の気の効かない一言だったのだが。 俺の言葉に苦しんでいた少女の顔がぴくり、と動いてこちらを見上げる。
涙に濡れた瞳と、火照っているのか、顔が赤く、弱々しい呼吸をする彼女と目が合ってしまった。
妙に見てはいけないものを見てしまったかのような感覚に陥りドキリとする。明らかにまだ成人していないような子供が香らせる色香のようなものに、思わず目を逸らしてしまった。
「カカシ、良い所に……!」
「え、あぁ…………呼ばれたんでね。ところで彼女は?」
「例の正体不明のチャクラ反応の主だ。掻い摘んで説明する。」
イビキの分かりやすい説明で分かったことは、彼女が何の忍術も使わずこの木ノ葉隠れの里の大通りに姿ひとつで現れたこと。反応から察するに忍ではなく、木ノ葉隠れの里の住人でもないこと。火影室の本を読んでいたらチャクラが乱れ、暴走状態になったこと。そして過剰に俺に反応すること。
「つまり、俺が何とかするしかないって事ですね。」
「ワシとイビキの声掛けには反応せんかった。お前だけが頼りじゃ。カカシよ。 」
「なるほどね。まぁとにかく医療班を呼びましょう――――」
俺が立ち上がり、踵を返すと同時に、小さな手が俺のズボンを引く感覚。
振り返ると、件の少女が息を荒らげながら一生懸命俺を引き止める。
『行かないで。行かないで。』
「え…………」
『1人なの、皆、レンズ越しの私しか、見てくれない』
「ちょっ、ちょっと待って、話なら医務室でゆっくり……」
『ごめんなさい、ごめんなさい。私、もうお仕事出来ない、怖いの。フワフワして、飛んじゃうの。助けて。』
少女の掠れた声には、時折嗚咽が混じり、その嘆願の意味は俺には全くわからないけど、酷く寂しくて。
『お願い、お父さん、お母さん。私を見て…………1人にしないで。』
この子は、何者なのか。こんなに弱々しい存在なのに。急に人知を超えた事を成し遂げてこの里に現れて。こんなに苦しんで。
「三代目。」
「うむ。付いてやっておれ。ワシにはこの少女が敵には見えんよ…………まるで迷子の子供だ。」
「……俺も。そう思います。」
俺のズボンを引いたまま、さっきの言葉を最期に気を失った少女を、俺は優しく抱き抱える。
イビキが三代目と俺に何か言ってる気がしなくもないけど、ま。1人にしないでって言われちゃったしね。
「君が誰なのかは、君が起きてからゆっくり聞こうかな。」