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海軍本部の、食堂のすぐそば――







海軍将校の中でも高い位置――【大将】の部屋が並ぶ階の一つの部屋から、その声は聞こえた







『寝坊した！！！』







それは朝の五時から――







可愛らしいパジャマの上からエプロンを着ては、食堂へと走る影







彼女はそう、つい三日前に海軍の【総料理長】を務めることになった、齢１４歳の可憐な少女







あどけなさは残るものの、整った顔立ちに、発育しきっていない体、純粋無垢な、清すぎる性格――







彼女は、まさにここ……女っ気の少ない海軍の中でも、更に希少な少女――【可能性】とは彼女のためにある言葉ではないだろうか、というほどに。そう、今後が楽しみで仕方のない少女なのである。







【総料理長】就任三日目にして――







『ごめんなさい～！寝坊しちゃいました！あれあれ？今日はお手伝いの海兵さん多いんですねぇ～！』







「「「「【総料理長】の為に馳せ参じました！！」」」」







『えぇ！？私のため、ですか！？ええぇ～、えっと、えへ、嬉しいです！じゃあじゃあ皆で、美味しい朝ごはん作っちゃいましょうか！！』







「「「「はい、喜んで♡」」」」







この有様である。







正義を掲げる海軍も――可愛いものには徹底的に弱かった。







『今日の朝ごはんは、お味噌汁、私特製のお漬物とー、焼き魚、あとは副菜にほうれん草のおひたしと冷奴を！えへ、一般家庭のお食事の味を目指しましょうね！』







そう言っては、厨房にあるホワイトボードに、背伸びをしながらそれぞれの作り方の手順が書かれたレシピを貼り付けて







周りの暖かな目に見守られながら、貼り終わる。







『では、さっそく取り掛かりましょう！！』







「「「「はい！【総料理長】！！」」」」







およそ千人以上の海兵の食事を作るのには、並大抵の早さでは間に合わない――が







『やっぱり、設備が揃ってるって素敵です～～～！おっきな炊飯器に～～、おっきなお鍋、おっきなフライパン！！』







まるで厨房で可憐に踊るかのように、次から次へと仕込みから調理まで滑らかに済ませるラナンキュラスに、海兵からは気絶者も多数。







彼女は、総料理長――







海軍の胃袋をわずか三日でワシ掴みにした魔法使いである







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導入