短編詰め
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――
その人との出会いは、新社会人一年目の春――
「オイ……何しちょる」
「ひ、ヒぃッ……!?」
『え……』
誰もこんな暗い路地裏じゃ、見つけてくれないと、助けてくれないと思っていた
暗い路地裏で変質者に襲われた私を、暗闇に呑まれそうになっていた私を……
「怖かったろうに……怪我はないようじゃのう。」
『あ、あ、あの、あのッ……た、助けてくれて、ありがとうございますッ……!!』
「人として正しい事をしたまでじゃァ、礼はいらん」
謙虚で、正義感にあふれてて、硬派で、不器用だけどちょっと優しくて――
その後、心配した私を家まで送ってくれた、紅いスーツの、私の好きなブランドの香水がちょっとだけ香る人
名前をサカズキさん、といって、本来ならそこで縁が途切れてしまうような、そんな関係
でも、私とサカズキさんは、運命の赤い糸で結ばれているのだと思う。
頭がおかしいとか、そういうのではなく、本当に。
私の脳内がそんなお花畑になってしまった偶然は、まず襲われた翌日、出勤するために我慢して入った満員電車での再会だった
『あ、あれ……もしかして……昨日の……!?』
「ん……ああ、昨日の、じゃ。昨日はどうじゃァ……寝れたか?」
『あ、は、はい!その、サカズキさんが……その、くださった……ぬいぐるみのお蔭で……』
「ああ……あれで眠れたんかァ。」
『ふふ、はい。とっても……犬のぬいぐるみなんて貰っちゃってよかったんですか?』
「ワシも貰いもんじゃからのう。」
『そうだったんですか!』
サカズキさんと私のひそひそ話は面白いほど会話が弾み、私の会社のある駅へ着き、お別れだと思ったら……
「む、ワシもこの駅じゃァ」
『え、ほ、本当ですか!?』
「折角じゃァ、途中まで一緒に行かんか」
『ぜ、是非!』
ああ、これから毎日同じ時間に電車に乗れば、もしかしたらサカズキさんと……こうして隣に並んで途中まで行けるかも、そんな事実に喜んでいたら――
『ま、まさか……?』
「……こりゃァ……驚いた。会社まで一緒か……?」
『じゃ、じゃあサカズキさん……私の上司ってことになりますよね……!?』
「………そうなるのう……しかし、ここまで気の合う女もおらん……お前は、特別じゃァ、二人の時は気軽に話しかけてきぃ」
『さ、サカズキさん……!』
サカズキさんとの運命は、会社が一緒だった、までじゃなかった。
会社では同じ部署、何かと一緒に出張、外出した際も偶然デパートで会ったり、やっぱり外出した時はばったり会ったり……
『も、もうさぁ、これって運命なんじゃないかって……!!どう、思う?スモーカー……!』
「………」
私はついに、サカズキさんへの想いが自分一人じゃ抱え込めず、同僚であるスモーカーに、新社会人一年目から……現在社会人三年目になって、はじめて。
『もう、これ偶然じゃすまされないよね!?かんっぜんに赤い糸で結ばれてると思わない!?』
「……どうって………お前……それはヤ――」
「瑞帆……?偶然じゃのう……おお、今日はスモーカーも一緒か」
『え!?さ、サカズキさ……じゃなかった!部長!?』
「瑞帆、お前とは偶然が随分と多いのう……」
『え、ええ!自分も驚いてます、まさか、こんな所でも会えるなんて、その、ぶ、部長に……!』
上がる心拍数を押さえられず、顔に熱がどんどんと集まるのが分かる。
ああ、部長、好きです……
「……ここで会ったのも、偶然と片付けるには……ワシにゃあ出来ん。すまん、スモーカー……瑞帆、借りるぞ」
「いや、ちょっと待ってくださいよ……アンタは―」
『き、聞きます!仕事の話、ですか!?』
「いや……まぁ、ついてきぃ」
部長に手を掴まれ、その手を引かれて店を出る
ああ、この角ばった手、ちょっと乾燥肌なのかな、かさついた、男の人の手……
「瑞帆………もう、ずっと偶然が、つづいちょる」
『え、ええ、そう、ですね……その、すみません、あの、プライベートまで……』
「何を謝る……ワシは、むしろ……その偶然が……【運命】であればええ……と、ずっと……おもっちょった。」
『え……』
「……好きじゃァ……瑞帆。この偶然が、運命でありゃァええと、年甲斐なく思うくらいには……」
『さ、サカズキ、さん、わ、私も、私も、愛してます!ずっと、運命だったら、いいなって――』
抱き締められて、優しく触れるだけのキス
ずっとこの運命の出会いに感謝して、一緒になろう、と
ああ。ああ。愛してます、サカズキさん。
やっぱりこの恋は、運命だったんですね――
「………サカズキ部長。ご結婚おめでとうございます」
「あァ……スモーカーか。何じゃい、らしくないのォ―」
「アンタ、瑞帆のストーカーだろう。」
「……何故、そう思う?」
その男は
「まず、あの頭お花畑を助けたっていう路地裏ですけどね。俺ァ結構友達思いでして、その場所……確認してきたんですよ。」
酷く歪んでいた
「その場所は、廃れた工場と工場の、長い長い路地の裏。暗ければ人の気配すらしない、完全に人目につかない場所だった。」
その歪みは決して直るものでもなく、歪みは増していくばかり
「アイツが襲われたとき、口を布で押さえられて声も出せなかったみたいですね。アンタ――なんで気付いたんです?」
歪みは、複雑ではあったが、終着点はあった
「それと、アンタが渡した犬のぬいぐるみね、俺ァちょいと気になったんで、アイツに見せてもらったんですよ。そしたらまァ腹から盗聴器、ぬいぐるみの目は小型カメラときたんでね。」
終着点は――
「アンタいつからアイツに付き纏ってたんですか?」
「………そうじゃなァ……瑞帆が中学生の時か、ワシが落とした書類を、瑞帆だけが、声をかけて拾うのを手伝ってくれたんじゃァ。こりゃ運命だとワシは思った。」
「それからずっと、ずっと、ずっと、見ていた。瑞帆の好物がパンケーキだということ、犬が好きだということ、使っている電車、バス、通学路、家に帰った時必ず靴をそろえる几帳面さ、手洗いうがいは今も欠かさずやっとる習慣じゃァ、ああ、それからそう、塾に通って、少しの間だけワシ以外の男を見ていたようじゃったが、あの男今はどうしておるのじゃろうなァ、興味もないが、ああ、そう、塾のお蔭で難関高校に受かった時の笑顔は忘れられんのう、それから高校生活も楽しかったようじゃァ、全部、全部」
ワシもしっちょる。
「……アンタ、相当狂ってる。」
「何を言うか……世界は愛が、正義じゃろう」
捩じりまがった、先の、一つの愛しい人
ああ、愛している
運命を、作り上げてしまう、そのくらいに
永遠の愛を、誓おう。
ワシの大事な瑞帆
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その人との出会いは、新社会人一年目の春――
「オイ……何しちょる」
「ひ、ヒぃッ……!?」
『え……』
誰もこんな暗い路地裏じゃ、見つけてくれないと、助けてくれないと思っていた
暗い路地裏で変質者に襲われた私を、暗闇に呑まれそうになっていた私を……
「怖かったろうに……怪我はないようじゃのう。」
『あ、あ、あの、あのッ……た、助けてくれて、ありがとうございますッ……!!』
「人として正しい事をしたまでじゃァ、礼はいらん」
謙虚で、正義感にあふれてて、硬派で、不器用だけどちょっと優しくて――
その後、心配した私を家まで送ってくれた、紅いスーツの、私の好きなブランドの香水がちょっとだけ香る人
名前をサカズキさん、といって、本来ならそこで縁が途切れてしまうような、そんな関係
でも、私とサカズキさんは、運命の赤い糸で結ばれているのだと思う。
頭がおかしいとか、そういうのではなく、本当に。
私の脳内がそんなお花畑になってしまった偶然は、まず襲われた翌日、出勤するために我慢して入った満員電車での再会だった
『あ、あれ……もしかして……昨日の……!?』
「ん……ああ、昨日の、じゃ。昨日はどうじゃァ……寝れたか?」
『あ、は、はい!その、サカズキさんが……その、くださった……ぬいぐるみのお蔭で……』
「ああ……あれで眠れたんかァ。」
『ふふ、はい。とっても……犬のぬいぐるみなんて貰っちゃってよかったんですか?』
「ワシも貰いもんじゃからのう。」
『そうだったんですか!』
サカズキさんと私のひそひそ話は面白いほど会話が弾み、私の会社のある駅へ着き、お別れだと思ったら……
「む、ワシもこの駅じゃァ」
『え、ほ、本当ですか!?』
「折角じゃァ、途中まで一緒に行かんか」
『ぜ、是非!』
ああ、これから毎日同じ時間に電車に乗れば、もしかしたらサカズキさんと……こうして隣に並んで途中まで行けるかも、そんな事実に喜んでいたら――
『ま、まさか……?』
「……こりゃァ……驚いた。会社まで一緒か……?」
『じゃ、じゃあサカズキさん……私の上司ってことになりますよね……!?』
「………そうなるのう……しかし、ここまで気の合う女もおらん……お前は、特別じゃァ、二人の時は気軽に話しかけてきぃ」
『さ、サカズキさん……!』
サカズキさんとの運命は、会社が一緒だった、までじゃなかった。
会社では同じ部署、何かと一緒に出張、外出した際も偶然デパートで会ったり、やっぱり外出した時はばったり会ったり……
『も、もうさぁ、これって運命なんじゃないかって……!!どう、思う?スモーカー……!』
「………」
私はついに、サカズキさんへの想いが自分一人じゃ抱え込めず、同僚であるスモーカーに、新社会人一年目から……現在社会人三年目になって、はじめて。
『もう、これ偶然じゃすまされないよね!?かんっぜんに赤い糸で結ばれてると思わない!?』
「……どうって………お前……それはヤ――」
「瑞帆……?偶然じゃのう……おお、今日はスモーカーも一緒か」
『え!?さ、サカズキさ……じゃなかった!部長!?』
「瑞帆、お前とは偶然が随分と多いのう……」
『え、ええ!自分も驚いてます、まさか、こんな所でも会えるなんて、その、ぶ、部長に……!』
上がる心拍数を押さえられず、顔に熱がどんどんと集まるのが分かる。
ああ、部長、好きです……
「……ここで会ったのも、偶然と片付けるには……ワシにゃあ出来ん。すまん、スモーカー……瑞帆、借りるぞ」
「いや、ちょっと待ってくださいよ……アンタは―」
『き、聞きます!仕事の話、ですか!?』
「いや……まぁ、ついてきぃ」
部長に手を掴まれ、その手を引かれて店を出る
ああ、この角ばった手、ちょっと乾燥肌なのかな、かさついた、男の人の手……
「瑞帆………もう、ずっと偶然が、つづいちょる」
『え、ええ、そう、ですね……その、すみません、あの、プライベートまで……』
「何を謝る……ワシは、むしろ……その偶然が……【運命】であればええ……と、ずっと……おもっちょった。」
『え……』
「……好きじゃァ……瑞帆。この偶然が、運命でありゃァええと、年甲斐なく思うくらいには……」
『さ、サカズキ、さん、わ、私も、私も、愛してます!ずっと、運命だったら、いいなって――』
抱き締められて、優しく触れるだけのキス
ずっとこの運命の出会いに感謝して、一緒になろう、と
ああ。ああ。愛してます、サカズキさん。
やっぱりこの恋は、運命だったんですね――
「………サカズキ部長。ご結婚おめでとうございます」
「あァ……スモーカーか。何じゃい、らしくないのォ―」
「アンタ、瑞帆のストーカーだろう。」
「……何故、そう思う?」
その男は
「まず、あの頭お花畑を助けたっていう路地裏ですけどね。俺ァ結構友達思いでして、その場所……確認してきたんですよ。」
酷く歪んでいた
「その場所は、廃れた工場と工場の、長い長い路地の裏。暗ければ人の気配すらしない、完全に人目につかない場所だった。」
その歪みは決して直るものでもなく、歪みは増していくばかり
「アイツが襲われたとき、口を布で押さえられて声も出せなかったみたいですね。アンタ――なんで気付いたんです?」
歪みは、複雑ではあったが、終着点はあった
「それと、アンタが渡した犬のぬいぐるみね、俺ァちょいと気になったんで、アイツに見せてもらったんですよ。そしたらまァ腹から盗聴器、ぬいぐるみの目は小型カメラときたんでね。」
終着点は――
「アンタいつからアイツに付き纏ってたんですか?」
「………そうじゃなァ……瑞帆が中学生の時か、ワシが落とした書類を、瑞帆だけが、声をかけて拾うのを手伝ってくれたんじゃァ。こりゃ運命だとワシは思った。」
「それからずっと、ずっと、ずっと、見ていた。瑞帆の好物がパンケーキだということ、犬が好きだということ、使っている電車、バス、通学路、家に帰った時必ず靴をそろえる几帳面さ、手洗いうがいは今も欠かさずやっとる習慣じゃァ、ああ、それからそう、塾に通って、少しの間だけワシ以外の男を見ていたようじゃったが、あの男今はどうしておるのじゃろうなァ、興味もないが、ああ、そう、塾のお蔭で難関高校に受かった時の笑顔は忘れられんのう、それから高校生活も楽しかったようじゃァ、全部、全部」
ワシもしっちょる。
「……アンタ、相当狂ってる。」
「何を言うか……世界は愛が、正義じゃろう」
捩じりまがった、先の、一つの愛しい人
ああ、愛している
運命を、作り上げてしまう、そのくらいに
永遠の愛を、誓おう。
ワシの大事な瑞帆
――