短編詰め
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万国(トットランド)。
それは四皇、【ビックマム】が治めるワンダーランドのような国
多種多様な種族が平和に暮らし、国は甘いお菓子の香りで包まれている。
万国には主となるホールケーキアイランドのほかに、34の島がある。
34の島にはそれぞれ一人、大臣がおり、その全員がビックマムの娘、息子である。
ここ、コムギ島のハクリキタウンを治める粉大臣【シャーロット・カタクリ】も、ビックマムの実の息子である。
冷静沈着、圧倒的な強さで、見聞色で未来さえ見るという十億越えの男。
ハクリキタウンに住む住人全てはクールなカタクリに憧れを抱いていた―
『いらっしゃいませ!……あ、間違えちゃった!≪こんにちわ≫!』
「瑞帆様!ようこそおいでに!」
『えーっと……何を買うんだったかしら……あらあら忘れちゃったわ!』
「瑞帆様……そのお手に持っていらっしゃる紙は……?」
『あ、そうだったわ!そう!あの人から持たされていたの!』
どうぞ、と紙を渡しては、困った顔をする店員にも気づかずにお願いしますね!と元気よく答える、どこか抜けているこの少女は、この国の大臣、カタクリの嫁である。
しゃんとした背筋からは育ちのいい気品を感じさせる。長い髪は美しく整えられ、顔立ちも優美な美顔。
しかし、一見恐れられるのは、そんな風貌には似つかわない腕についた固そうな鱗と、角、牙……そう、彼女は存在するはずのないドラゴンと人間のハーフ、いわゆる竜人と呼ばれる種族の姫だった。
ビックマムに目をつけられ、一番下の姫である瑞帆が嫁に出されたという訳だ。
しかして彼女は、そんな経緯があるにも関わらず、毎日楽しそうに過ごしている。性格故もあるが……
『ただいま~!【あなた】~!きゃ、あなたって呼んじゃったわ!うふふ!』
「……」
『あ、そうそう、ちゃんとお使いできたわ!でも途中で何を買うか忘れちゃってね?でもでもあなたのメモがあったから問題は―』
「買えたならいい。早く厨房に届けに行くんだな」
『は~い!』
そこ抜けに明るい彼女は、結婚式の前に両家挨拶をしたとき、カタクリに惚れてしまったのだ。
『うふふ!こんな私でもあの人の役に立ててよかった!』
結婚してから数か月。未だ夫婦らしいことはしていないが、それでも彼女は幸せだった。
『でね、あの人ったら照れ屋なのかしら。一緒の布団で寝てくれないの。こんなに寂しいことってないわ!』
「………そうかい。いや……おれからも言うが……」
『いいえ!ママ!私はママとお話ししたくてきたのよ!どうしたらあの人に振り向いてもらえるのかしら……』
「……いや、おれは……」
『ママみたく強くなればドキってさせられちゃうかしら!?』
怖いものしらずなのか、ただの馬鹿なのか。
自分の国さえ滅ぼす気が満々だったビックマムにさえこの態度。
取る嫁を間違えたか?と考えたビックマムだが、こんなにもずけずけとした嫁も逆に面白いか、と数か月経った今は思っていた。
うまいことやっていた瑞帆だが、また数か月経った頃
『………』
「オイ、何の用だ。ノックをしろと言っているだろう」
『【カタクリさん】』
「…………何?」
『もう、もう我慢できないわ。』
「……オイ、何を」
カタクリが目を見開く先には、目を真っ赤に腫らして泣きじゃくる瑞帆の姿が。その手には手紙と大きなトランクが握られており、カタクリの頬に冷や汗が伝う
『離縁させていただきます!!』
そう勢いよく言っては、ゆっくりとカタクリの机にぽす、と一枚の紙を置いて、去っていく。
「…………ッ、待て!」
カタクリの手は空を切り、何度か呼び止めても瑞帆は止まらない。
何があってそうなったのか、カタクリには何の心当たりもなかった。
「……止まれといってるだろう!」
『きゃ!?』
流石に焦ったカタクリは、自身の能力を使って瑞帆を捕まえる
「離縁など認めん。」
『え……』
「………どこにも行くな。お前は俺の傍で馬鹿みたいに笑ってるだけでいい。」
『………』
「お、俺が何かしたか。いや、分かっている。俺が口下手なせいでお前が愛想を尽かしたんだろうが、しかし、離縁だけはよしてくれ」
『……』
「ゆ、許してくれとは言わん。……ただ、傍にいてくれ。」
『………』
「……瑞帆――」
そこまで言うと、カタクリの唇に何か柔らかいものがあたり、二重の意味で言葉が出なくなる
竜人の持ち前の怪力で、カタクリの拘束から難なく逃れた瑞帆が、カタクリの唇を奪ったのだ。
『うふふふふふ………私が【あなた】に愛想尽かすなんて……天地がひっくり返ってもないわ!!』
「!?、!?」
「マーマママ……!良かったなァ瑞帆」
「ママ……!?」
『ええ!ママの【言った通り】にしたらこの人の本音が聞けたわ!』
「……ッ、」
「おうとも。それよりカタクリィ……おめぇこの結婚を誰よりも待ち遠しくしてたのによぉ……かっこつけやがって」
『え!?』
「ママ!それは言わねェ約束……」
「仲良くやんな。夫婦だろ。ママママ!!!」
そう言って笑いながら機嫌が良さそうに帰っていくマム。
茫然としたカタクリは、いまだ腕の中で甘えてくる瑞帆を見て、やられた。と思うと同時に吹っ切れる
「……最初は、どうでもよかったんだ。結婚なんて。」
『?』
「ただ、前もって挨拶することになった時、初めて見たあの日だ。」
「お前が笑顔を見せてくれた時に、好きに、」
『きゃーーーーー!』
「!?」
『あなた!大好きよ!私のこと好きだったのね!ありがとう!』
嬉しそうに笑いながら、うわんうわんと泣きだす仕方のない嫁に、たまらなく愛しさを感じたカタクリが思わず抱き締める
コムギ島ハクリキタウンでは……とっても仲のいい似合いの夫婦がよく買い物に来てはそのラブラブっぷりを見せつけていくという―
――
カタクリさんと元気なお嫁さん
万国(トットランド)。
それは四皇、【ビックマム】が治めるワンダーランドのような国
多種多様な種族が平和に暮らし、国は甘いお菓子の香りで包まれている。
万国には主となるホールケーキアイランドのほかに、34の島がある。
34の島にはそれぞれ一人、大臣がおり、その全員がビックマムの娘、息子である。
ここ、コムギ島のハクリキタウンを治める粉大臣【シャーロット・カタクリ】も、ビックマムの実の息子である。
冷静沈着、圧倒的な強さで、見聞色で未来さえ見るという十億越えの男。
ハクリキタウンに住む住人全てはクールなカタクリに憧れを抱いていた―
『いらっしゃいませ!……あ、間違えちゃった!≪こんにちわ≫!』
「瑞帆様!ようこそおいでに!」
『えーっと……何を買うんだったかしら……あらあら忘れちゃったわ!』
「瑞帆様……そのお手に持っていらっしゃる紙は……?」
『あ、そうだったわ!そう!あの人から持たされていたの!』
どうぞ、と紙を渡しては、困った顔をする店員にも気づかずにお願いしますね!と元気よく答える、どこか抜けているこの少女は、この国の大臣、カタクリの嫁である。
しゃんとした背筋からは育ちのいい気品を感じさせる。長い髪は美しく整えられ、顔立ちも優美な美顔。
しかし、一見恐れられるのは、そんな風貌には似つかわない腕についた固そうな鱗と、角、牙……そう、彼女は存在するはずのないドラゴンと人間のハーフ、いわゆる竜人と呼ばれる種族の姫だった。
ビックマムに目をつけられ、一番下の姫である瑞帆が嫁に出されたという訳だ。
しかして彼女は、そんな経緯があるにも関わらず、毎日楽しそうに過ごしている。性格故もあるが……
『ただいま~!【あなた】~!きゃ、あなたって呼んじゃったわ!うふふ!』
「……」
『あ、そうそう、ちゃんとお使いできたわ!でも途中で何を買うか忘れちゃってね?でもでもあなたのメモがあったから問題は―』
「買えたならいい。早く厨房に届けに行くんだな」
『は~い!』
そこ抜けに明るい彼女は、結婚式の前に両家挨拶をしたとき、カタクリに惚れてしまったのだ。
『うふふ!こんな私でもあの人の役に立ててよかった!』
結婚してから数か月。未だ夫婦らしいことはしていないが、それでも彼女は幸せだった。
『でね、あの人ったら照れ屋なのかしら。一緒の布団で寝てくれないの。こんなに寂しいことってないわ!』
「………そうかい。いや……おれからも言うが……」
『いいえ!ママ!私はママとお話ししたくてきたのよ!どうしたらあの人に振り向いてもらえるのかしら……』
「……いや、おれは……」
『ママみたく強くなればドキってさせられちゃうかしら!?』
怖いものしらずなのか、ただの馬鹿なのか。
自分の国さえ滅ぼす気が満々だったビックマムにさえこの態度。
取る嫁を間違えたか?と考えたビックマムだが、こんなにもずけずけとした嫁も逆に面白いか、と数か月経った今は思っていた。
うまいことやっていた瑞帆だが、また数か月経った頃
『………』
「オイ、何の用だ。ノックをしろと言っているだろう」
『【カタクリさん】』
「…………何?」
『もう、もう我慢できないわ。』
「……オイ、何を」
カタクリが目を見開く先には、目を真っ赤に腫らして泣きじゃくる瑞帆の姿が。その手には手紙と大きなトランクが握られており、カタクリの頬に冷や汗が伝う
『離縁させていただきます!!』
そう勢いよく言っては、ゆっくりとカタクリの机にぽす、と一枚の紙を置いて、去っていく。
「…………ッ、待て!」
カタクリの手は空を切り、何度か呼び止めても瑞帆は止まらない。
何があってそうなったのか、カタクリには何の心当たりもなかった。
「……止まれといってるだろう!」
『きゃ!?』
流石に焦ったカタクリは、自身の能力を使って瑞帆を捕まえる
「離縁など認めん。」
『え……』
「………どこにも行くな。お前は俺の傍で馬鹿みたいに笑ってるだけでいい。」
『………』
「お、俺が何かしたか。いや、分かっている。俺が口下手なせいでお前が愛想を尽かしたんだろうが、しかし、離縁だけはよしてくれ」
『……』
「ゆ、許してくれとは言わん。……ただ、傍にいてくれ。」
『………』
「……瑞帆――」
そこまで言うと、カタクリの唇に何か柔らかいものがあたり、二重の意味で言葉が出なくなる
竜人の持ち前の怪力で、カタクリの拘束から難なく逃れた瑞帆が、カタクリの唇を奪ったのだ。
『うふふふふふ………私が【あなた】に愛想尽かすなんて……天地がひっくり返ってもないわ!!』
「!?、!?」
「マーマママ……!良かったなァ瑞帆」
「ママ……!?」
『ええ!ママの【言った通り】にしたらこの人の本音が聞けたわ!』
「……ッ、」
「おうとも。それよりカタクリィ……おめぇこの結婚を誰よりも待ち遠しくしてたのによぉ……かっこつけやがって」
『え!?』
「ママ!それは言わねェ約束……」
「仲良くやんな。夫婦だろ。ママママ!!!」
そう言って笑いながら機嫌が良さそうに帰っていくマム。
茫然としたカタクリは、いまだ腕の中で甘えてくる瑞帆を見て、やられた。と思うと同時に吹っ切れる
「……最初は、どうでもよかったんだ。結婚なんて。」
『?』
「ただ、前もって挨拶することになった時、初めて見たあの日だ。」
「お前が笑顔を見せてくれた時に、好きに、」
『きゃーーーーー!』
「!?」
『あなた!大好きよ!私のこと好きだったのね!ありがとう!』
嬉しそうに笑いながら、うわんうわんと泣きだす仕方のない嫁に、たまらなく愛しさを感じたカタクリが思わず抱き締める
コムギ島ハクリキタウンでは……とっても仲のいい似合いの夫婦がよく買い物に来てはそのラブラブっぷりを見せつけていくという―
――
カタクリさんと元気なお嫁さん