hzbn短編
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この小説の夢小説設定公式情報でも回収されていない伏線や背景、
判明していない設定など不明瞭な情報が多いため、
しばらくは短編で更新していきます。
時系列はバラバラ。
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「エマ、たまには思いきりましょう」
『え、急にどうしたの』
「どうもしてないですよ。毎日同じようなことの繰り返しもつまらないじゃないですか」
『でも明日出かけるって……まぁ、私はいいけど。そのワイン気になってたんだよねー』
ある夜、アラスターの提案で貯蔵していた良い酒数本と、いつもより品数の多いごちそうが並んだ。
そんなラインナップに彼女がNOと言うはずもなく、酒好きの2人は食事をしつつボトル数本をあっという間に空けてしまう。
『美味しかった~お腹いっぱい』
「………」
『アラスター大先生はもう一杯飲む?』
「……ん……」
『んん?』
「満腹なら踊りましょう!にゃはは!」
『わー出来上がってるー!』
アラスターは黙って立ち上がるとエマの手を引いた。
2人がテーブルから離れるとアラスターはニカッと笑い、穏やかなジャズを軽快な曲調に変えそのまま踊りだした。
ダンスの得意なアラスターと最低限しか踊れないエマ。そして互いに酔っている。
よってスキル差が顕著となり、エマはもはや物理的に振り回されていた。
『飲みすぎたねぇ……ふへへ』
「そーですねぇ……」
『……アラスター…動けないからどいて』
「嫌です」
『どいてくれないとそのフワフワなお耳触っちゃうよ』
「………さわっていいですよ」
『えっいいの?…………ふふ、ふわもこ。気持ちいいー』
「……My Dear……」
『…えっ…………ふーん?』
やがて酔いと踊り疲れから、アラスターがエマを抱き枕のようにしがみつく形で2人はソファになだれ込んだ。
子猫と化したアラスターのふわ耳を今のうちにとエマが堪能していると、アラスターがエマに回している腕を強め、彼女はピクッと反応する。
しかし顔を埋めるアラスターの呟きを聞いたエマは、普段彼から言われないワードにニヤリと不敵に口角を上げた。
『アラスターにとって私は大事なんだ?だから触らせてくれるの?』
「はい。大事……私だけの鹿…My Deer…」
『そっち?えぇー……同族食べるじゃん……鹿の味はしないよ』
「食べませんよ。働き蜂のように動いてもらうので」
『それなら頑張るために生活水準を高く維持してもらわないとなぁ。たとえば気になってるシャンプーがあるんだけど』
「…がめついですねぇ」
エマは思っていた回答と違うことに落胆したような安堵したような、なんとも形容しがたい気持ちを抱えた。
一方のアラスターはアラスターでこの関係に心地よさを感じていた。
彼女は友で下僕で、自分のおかげで生活ができている居候。
今もこうして立場も力も上の相手に欲しいものを強請るとはなんて傲慢か、思わず常に上がっている口の端がさらに上がった。
『……動けないとこのまま寝ちゃうよ?明日起きれる?』
「……だいじょうぶ……だからもう少しこのまま…………」
『……まぁ、ふわふわだし……出かけるのはアラスターだからいいや……』
アラスターは大丈夫と言いつつ直後には寝落ちたようで、埋めているため顔は見えないが寝息が聞こえた。
エマの体には今もアラスターが絡みついている。完全に身動きの取れなくなったエマは、アラスターから発せられる寝息と体温を感じているうちに、重い瞼が閉じるまでそう時間はかからなかった。
『……あらすたー…?』
あれから何時間経っただろうか。ふとエマが目を覚ますと頑固に絡んでいたエマ以外の腕や体温が綺麗に消えていた。
それどころかソファにいたはずが自室のベッドでご丁寧に肩まで布団に収まっている。
昨夜共に寝落ちた雇用主は家のどこにもおらず、エマは寝ぼけながらにも寝坊せず起きれたから外出したのだろうと納得した。
しかし1日で戻ると言っていたその鹿が次に顔を出したのは7年後だった。
『今日はいい買い物だったなぁ』
「おかえりなさい、エマ」
『……………………は?』
7年ぶりに聞いた声で名前を呼ばれたエマは思考が停止した。
そこにはたしかにあの鹿がいる。あのときと変わらない服、髪、笑顔で。
思わずエマは口をあわあわさせながらアラスターなのかと訊ねた。
「はい。あなたの雇い主のアラスターです。少々ゆっくりしすぎてしまいました。再会のハグを許しますよ!」
『……~こんっの…クソバンビ!!……避けるな!ここは素直に殴られろ!!』
「失礼。あまりにも形相が恐ろしかったので、つい」
『あんたに言われたくない!それに今回は殴られる義務がある!ここを出る前にいつ戻るって言ったか覚えてる?あんたの1日は7年か!?7日でもおかしいわ!!』
意気揚々と腕を広げるアラスターにエマは瞬時にデーモン化し殴りかかった。
それをアラスターは楽しそうにスルリとかわしてみせる。
虚しく空振りしたことでエマの怒りはまた一段階上がり、アラスターを怒鳴りつけた。
『どこにいるのか見つからないし、連絡手段もないし!!全然戻らないから絶交されたのかと…でもここにかけられた魔法は、残ってたしでっ、意味分からなくて……っ…』
「………ハグしないんですか?」
『……うえええばかあああ』
「…しばらく見ない間に随分泣き虫になりましたね。寂しい思いをさせてしまったようだ」
徐々に顔を歪ませ言葉が詰まるエマをアラスターは静かに見つめ、再度腕を広げた。
それを見たエマは、怒りながらではあるもののアラスターに飛びつき号泣した。
その様子にアラスターはエマの頭に片手を呟く。
『ぐす…よかったぁ……今日はずっとこのまま離れない…』
「ジジ……それはちょっと嫌ですねぇ…邪魔だし鼻水ついたら汚いです」
涙でグズグズのエマに対し、アラスターの口元は笑顔ながらも明らかに嫌がっている様子が伺えた。
その後エマから質問という名の尋問が始まるのは言うまでもない。