hzbn短編
お名前編集はこちら
この小説の夢小説設定公式情報でも回収されていない伏線や背景、
判明していない設定など不明瞭な情報が多いため、
しばらくは短編で更新していきます。
時系列はバラバラ。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『…………ただいま』
「ジジ……またですか?」
買い出しから戻ったエマは、先ほど良いウィスキーを飲ませろと威勢よく交渉していたとは思えないほどげっそりしていた。外出からこの状態で戻ることは何度かある。
アラスターが失踪するよりもさらに前、地獄に来て間もないころのエマは街の様子には慣れたが、あるものだけが克服できずにいた。
それは爆発や爆撃である。今回は突如起こった抗争に巻き込まれたらしい。
これはエマの生前の死因にも関係しており、死因がトラウマになる悪魔は少なくない。
「仕方ありません。今日はもう好きになさい」
「……じゃあ……さっき約束したウィスキー頂戴」
「そのがめつさならまだ働けますね」
「ナンデモナイデス」
「それより今の貴女にはこちらがいいでしょう」
「…!……ありがとう」
アラスターはエマの様子からもう使い物にならないと察し荷物を受け取ると、指をパチンと鳴らしホットミルクを出現させた。
それはソファで縮こまるエマの前に差し出される。
「私は例のウィスキーをいただきますがね!ニャハ!」
「悪魔…」
「私と貴女の貴重な共通点ですねぇ?」
横に座ったアラスターの手には、エマの飲みたがっていたウィスキーがグラスに注がれている。
エマは恨めしそうにそのグラスとアラスターを交互に見たが、トラウマが呼び起こされたときに飲むホットミルクにはいつも安堵していたため突き返す気にもなれない。
アラスターの言う通り、今は自身の手元の飲み物の方が合っていた。
「さぁさとりあえず乾杯です。私より先に飲み終われば貴女にも入れてあげましょう」
「いいの?……いや、あっっっつ」
「どうやら火加減を誤ってしまったようです〜」
「はぁーーーほんとこいつ」
アラスターの提案にエマは目を輝かせ、さっそくミルクを飲もうとするもすぐに飲める温度ではなかった。
その様子を見たアラスターはケタケタと笑っている。
わざとこの熱さで用意したのだろうと考えたエマは、アラスターを睨みながらチビチビと飲み始めた。
「…〜という話を聞いて、興味が湧いて調べたらあっという間に時間が過ぎていてね」
「(……あれ?)」
しばらく時間が経ち、エマはついにホットミルクがそろそろ無くなるというところで、アラスターのグラスにはウィスキーがほとんど減っていないことに気づいた。
思えば横の赤い鹿はずっと喋っている。それこそラジオを聞いている時のような気分にさせるほどに。
そしてマグカップを口に当てたまま真上に向けたエマを見て飲みきったと察したアラスターは「お見事!」と声をかけた。
「まさか先に飲みきるとは!ついついお喋りに夢中になってしまっていたようです」
「……私が飲み終わるのを待ってくれてたの?」
「何故わざわざ私がそんなことを?」
殺しの話題がなかったわけではないものの直接的には言わなかったりと、エマにはアラスターの話していた内容は注意が払われていたように思えた。
夢中になっていたのが本当なのかは不明だが、今の弱っているエマには話題が尽きないように言葉も選んで頭を働かせていたんじゃないかと思わずにはいられず、ミルクとはまた違った温かさを感じた。
「約束した以上仕方ないですね。1杯だけですよ」
「わあ…ありがとう!」
アラスターはやれやれと呟きながらもう一杯のグラスにウィスキーを注ぎエマに渡した。
氷に光が反射し煌びやかに踊る琥珀色に、エマは子どものように目を輝かせた。
「では改めて乾杯」
「乾杯!」
年月が流れある日のホテル。それはペンシャスの襲撃でホテルの壁が破壊された夜のことだ。
爆発なんて日常茶飯事の地獄で数十年過ごしてきたことが功を奏し、エマのトラウマはほぼ乗り越えたと言ってもいいほどに改善していた。
慣れとは末恐ろしいもので、現在は背後に置かれたキュウリに驚いた猫のように大きく驚く程度である。
深夜にも一悶着あったが無事解決し、部屋に戻るエマにアラスターはニヤニヤとイタズラ少年のように声をかけた。
「そういえば、今日はホットミルクはいいのですか~?」
「ふうん……用意してくれるならいただこうかな」
「冗談に決まってるでしょう」
「まぁいいじゃん。1杯だけ!」