hzbn短編
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この小説の夢小説設定公式情報でも回収されていない伏線や背景、
判明していない設定など不明瞭な情報が多いため、
しばらくは短編で更新していきます。
時系列はバラバラ。
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『よし……いいよ、アラスター。お願い』
「わかりました」
ホテルメンバーに会う前のとある日。
エマは万全の装備でキッチンに立っていた。その表情はいつになく真剣。
すぐそばに控えているアラスターも大人しく、儀式を始めるのか疑うほどキッチンの空気が重々しい。
「まず野菜をみじん切りにしてください」
『みじん……木っ端微塵……細かく切るってこと?』
「……ええ」
エマから飛んだ質問にアラスターは眉間を抑えた。
家事雑用はエマがする契約だが、食事は契約主のアラスターが担当している。
料理好きとこだわりの強さから、キッチンは自分で管理したいという意向だ。
エマがここに入るのは床掃除、皿洗い、水を飲むとき程度。
そもそもエマは生前も地獄に来てからもまともに料理をしたことがなかった。
しかしアラスターの調理する様子を見ているうちに興味が湧き、何度も頼み込んでようやくアラスターの言う事を絶対に聞くという約束で許されたのだった。
よってこの空気の重さである。
「私はアクセントとして賛成ですが、貴女は自分の指を食材の1つにしたいんですか?」
『え、ちょ』
「包丁はこう。抑える側はこうです」
エマの玉ねぎを抑える手を指摘したアラスターは、エマの後ろから覆い被さるようにして左右の手を抑えた。
アラスターの手にすっぽり収まった自身の手元、そして耳元で心地よく聞こえるノイズ混じりの声にエマは気が気でなくなる。
『分かったから、あとは自分でやらせて』
「一度手本をしっかり確認した方がいいでしょう?」
『だけど、でも』
「今回約束しましたよね?私の言う事は?」
『……絶対』
「よく言えまちたね〜」
アラスターに約束の件を出されたエマはこれ以上の抗議が出来なくなった。
仮に無理矢理にでも抵抗したところでアラスターの力には敵わず、約束も反故にしたということでこの材料たちの仲間入りを果たしてしまうことが学の無いエマでも容易に想像できてしまう。
アラスターはそんなエマの頭をペットや子どもにするようにポンポンと撫でた。
その際何かを思い出したアラスターは目を細め、弧を描いていた口角をさらに上げエマにさらに密着する。
「……あ、今はこちらの方が聞きやすいのでは?」
『……っ、この距離で前みたいに大声出さないでよ…?』
「包丁使ってるときにやると思います?」
『やる』
アラスターは声のノイズを消し素の肉声でエマに囁いた。
過去に似た状況で耳元に肉声で囁いたと思えば大声を出したという前科があるので、エマは二重の意味で気が気で無いのだ。
相手がアラスターならみじん切りの最中だろうが関係なくしでかすはず。
もう一つの意味は生前ラジオスターだっただけあり素直に彼の声が良く、そんなつもりは無くてもエマの視線はつい泳いでしまう。
しかし相手の予想通りになりたくなかったのか、アラスターの悪ふざけでエマの鼓膜が終わることは避けられた。
「……やはり最後の塩胡椒ですね」
『……ほんとだ…アラスターが作るのより喉渇く…うげぇしょっぱ辛い』
みじん切りさえ終われば他はエマでもアラスターの指示を聞くだけで済み、無事ポーク&ビーンズが完成した。
しかし2人は味見をすると無言で水を飲んだ。
最後の軽い塩胡椒で味を整えるはずが、『少々ってどのくらい?』「ジジ!質問しながら入れるんじゃない!」とアラスターが答える前にエマが塩胡椒を振り続け、通常よりかなり多く入ってしまったのだ。
「幼少期の私でもあんなことしたことないです」
『く、悔しいけど何も言えない…』
「まぁ幼児向けのとーーーっても簡単なものなら考えてやってもいいですよ?」
『なっ…ムカつく!次は見返してやる!』