hzbn短編
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この小説の夢小説設定公式情報でも回収されていない伏線や背景、
判明していない設定など不明瞭な情報が多いため、
しばらくは短編で更新していきます。
時系列はバラバラ。
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『ゔぇっっっくし!!!』
「随分と立派なくしゃみだが、食欲はあるかい?」
『んー………だるい』
エマは深手を負っていたアラスターの看病したのち、天使との戦闘の疲労も相まって風邪を引いてしまっていた。
まだ怪我や疲労が癒えていない者ばかりのため、現在は主にルシファーがホテル内を奔走している。
後から参戦したのもあるが、1人だけピンピンしているのはさすが地獄の王だ。
「ホテルの修復では元気に走り回っていたのに。反動か?」
『アドレナリンは確実に出てた……』
「ベルボーイへの世話がトドメだろうな。無理をするからそうなる」
『あ”ー…そうかも…………………え?』
「ん?包帯抱えて奴の部屋に行ってたろう?」
エマは絶句した。全員部屋で休んでいると思っていたから。
あれだけ治療を拒否していたプライドの高さだ、これまでも友人という立場の関係から暴力的なことはされなかったが…
『……他言無用でお願いします……バレたら本気でミンチにされる……』
「秘密って君たちがイイ仲だと?」
『ぶっっっは!違う違う。アラスターは友達で契約主だよ』
「なんだそりゃ」
アラスターとは犬猿のルシファーだが、エマに何かあれば最愛の娘が悲しむとルシファーは考え、なんとか要望を受け入れられることとなった。
やがて喋ってるうちにだるさがぶり返したエマは布団に潜り直し、眠りについた。
エマが次に目を覚ますと、部屋の暗さから数時間経過したらしいことに気づく。
『…りんご…』
「それなら私が食べました」
『うわぶ!……っんんん!?』
「Shhh……」
エマは自分しかいないと思っていた室内に他の声がしたことで思わず叫びかける。
しかしその一瞬開かれた口は勢いよく塞がれた。
エマの目の前には赤。塞いだ手と声の主はアラスターだった。
彼はもう一方の手で人差し指を立てている。
「もう夜です。近所迷惑になりますよ」
『それなら驚かさないでよ……飛び上がるかと思った……』
「翼なしにどれほどの高さまで飛び上がれるか見てみたかったですねぇ」
エマの反応を楽しんだアラスターは、全く悪びれる様子もなく「何か食べます?」と別の話を振った。
そこでエマは思い出す。ルシファーが食欲湧いたら食べるようにと置いていった林檎を、アラスターが食べたと言っていたことを。
うさぎや薔薇、葉っぱなど様々な形にカットされていたのでエマは食べるのを楽しみにしていたのだ。
「あのままでは悪くなりますし、私の方が面倒見良いので」
『また王様と競ってんの』
「私ならあんなただ切っただけのものより、食べやすく栄養にも意識を向けられます。はい、口を開けて」
『?……ん。美味しい』
アラスターがエマの口に運ばせたのはすり林檎をヨーグルトと蜂蜜で混ぜたものだった。
ヨーグルトの程よい酸味、林檎と蜂蜜のほのかな甘みにエマは少し口元が緩くなる。
「他に食べたいものはありますか?無ければ貴女だけに寝るまでラジオ生放送をしてあげましょう」
『嬉しいけど不気味だな……』
「心外ですねぇ。せっかく雇用主としてではなく、友人として手を差し伸べてあげているのに」
『でもアラスターのほうが重症なんだから安静にしなきゃ』
「座ってるだけなので大丈夫ですよ」
そう言うとアラスターはゆったりとしたBGMを流し、オープニングトークを始めた。
アラスターのノイズ混じりの声はエマだけに聞かせるようにボリュームを落として流れてくる。
それが心地良く感じたエマはまた眠気に襲われ、気づけば瞼が閉じていた。
寝息を立てるエマの頭をそっと撫で、アラスターは一人囁く。
「…良い夢を」
後日、エマの体調が落ち着いた頃にはホテルメンバーもいつも通りの生活をし、アラスターも傷を隠しながらではあるものの、ルシファーといがみ合い、エマやハスクをこき使いつつホテル運営に携わっていた。
そしてこれから3人の上級悪魔たちが大きく動き出す始まりでもあった。