異種族エンカウント!(ジェイド/中編)
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「……マリシアサン」
『あ、ジェイドさんこんにちは。早速なんですけど……はい、どうぞ』
「?」
『陸の本です』
「陸……」
後日、マリシアはジェイドに陸のことを知ってもらうべく植物や生き物の載った図鑑を持ってきた。
陸という単語と本の表紙を見聞きしたジェイドは、まだ表紙だというのに食い入るように見つめている。
中を見せてやると、これでもかというほどさらに目を見開いた。
そのいつも澄ましたような表情と違う夢中な様子を見て、これなら沈められる心配は無さそうだとマリシアは少しばかり安堵した。
「……〇※△¥……」
『?』
ジェイドの口からマリシアには聞き慣れない言葉が出た。
たまたま聞き取れなかったのではなく、完全に聞いたことの無い言語だということだけはわかった。
おそらく人魚の独自の言葉だろう。
咄嗟に独り言が漏れてしまうほど1つ1つの写真を見つめている。
「……、☆$Λ……?」
『?ああ、これは……ガーデニア』
「がー、…ニ…?」
『ガーデニア』
「ガーデ、ニア……ガーデニア……」
ジェイドはとある花の説明文を指さした。
マリシアが代わりに名前や内容を読み上げると、ジェイドは懸命に陸の言葉を繰り返す。
そしてこれは?じゃあこれは?と、陸の文字の読み上げを次々と頼んではまた聞いた言葉を繰り返す。まるで小さな子どもだ。
「……僕ノ名まエ、陸ノもじ、ドウシて書きますか?」
『ジェイドさんの名前を陸の文字で書くと、ですか?』
「はい」
『じゃあ、本を貸してください』
「?」
『………はい。こっちがジェイドさん、ついでにこっちが私です』
図鑑に並ぶたくさんの陸の文字を見て疑問に思ったのか、突然ジェイドはそうマリシアに聞いた。
マリシアは先ほど渡した図鑑を一度返してもらい、裏表紙に直接油性ペンで名前を書き再度ジェイドに渡した。
それぞれを指をさしながら読み上げられることで、どちらがどちらの名前なのかを認識したらしいジェイドは同じように読み上げ、これで合っているかと何度も空に自身とマリシアの名前を連ねた。
字体が少し不格好なのが初々しい。
『そしたら、海の文字で、私と、ジェイドさんの名前は、どう書くんですか?』
「海…もじ…名マエ…書く…、…………マリシアさン、ジェイド」
『おお…こっちが私、こっちがジェイドさん、ですね。なるほど…まったく読めないな』
ジェイドは以前見せた空を指でなぞると線が浮かぶあの魔法をもう一度やってみせ、間もなく2つの単語がマリシアの前に並んだ。
メモ代わりとして写真を撮ってみたところ、写真にはしっかりと魔法の文字も写っている。
吸血鬼は鏡に映らないとは言われるが、人魚の魔法は肉眼でしか見えないということでもないらしい。
『……ふぅ、そろそろ帰りますね』
「……」
『それはあげますよ』
「?」
『プレゼント』
「プレ…?」
名前の練習の後は再び本に記載された写真たちをひとしきり眺め、その横に書かれた文字をマリシアが代わりに読んでいるとあっという間に空がオレンジ色になっていた。
ジェイドは今日はこれで終わりだと察したようで図鑑を返却しようとマリシアに差し出す。
マリシアはいつかのテラリウムをあげたときのジェイドのように、図鑑を受け取らずジェイドの方に押し込むとようやく理解したらしい。
『……あ、でも海で暮らしてるのに紙の本はだめか。これは毎回私が』
持ってきますよ。マリシアはそう海を眺めながら言いかけたところでジェイドに目を向けると、彼の手から淡い光が放たれ、その光が本を包んでいた。
光はすぐに収まり、すると本を片手にジェイドはニコニコと水中に潜ったり出てきたりを繰り返した。本は全く濡れていない。
『そんなことまでできるんだ……いらない心配だったみたいですね』
「#¥☆○」
『?なんです?』
「#¥☆○」
『…#、¥☆○……?』
ジェイドは突然人魚の言葉をマリシアを見つめながら発した。
マリシアが首をかしげるとゆっくり繰り返し同じ言葉を発するので、見よう見まねでオウム返しをしてみる。
人魚の言葉は人間が普段使わない舌の使い方をするかと思えば、決まった音程や母音だけで単語として成立することもあり難しい。おそらくはジェイドから見た人間の言葉も同じだろうが。
マリシアは言葉を真似ることができていたか不安げにジェイドの様子をうかがうと、彼は嬉しそうに頷いていた。
あの反応と流れからして「ありがとう」と言っているのだろうか。
『(ジェイドさんはすごいな、吸収が早い。今度は渡した図鑑を自力で読めるように文字でも教えてみてもいいかもしれない。私も単語くらいは身に着けてみたいな)』
”互いの文化を教え学ぶ”———はからずもマリシアに新しい趣味ができたきっかけになった日となった。
『あ、ジェイドさんこんにちは。早速なんですけど……はい、どうぞ』
「?」
『陸の本です』
「陸……」
後日、マリシアはジェイドに陸のことを知ってもらうべく植物や生き物の載った図鑑を持ってきた。
陸という単語と本の表紙を見聞きしたジェイドは、まだ表紙だというのに食い入るように見つめている。
中を見せてやると、これでもかというほどさらに目を見開いた。
そのいつも澄ましたような表情と違う夢中な様子を見て、これなら沈められる心配は無さそうだとマリシアは少しばかり安堵した。
「……〇※△¥……」
『?』
ジェイドの口からマリシアには聞き慣れない言葉が出た。
たまたま聞き取れなかったのではなく、完全に聞いたことの無い言語だということだけはわかった。
おそらく人魚の独自の言葉だろう。
咄嗟に独り言が漏れてしまうほど1つ1つの写真を見つめている。
「……、☆$Λ……?」
『?ああ、これは……ガーデニア』
「がー、…ニ…?」
『ガーデニア』
「ガーデ、ニア……ガーデニア……」
ジェイドはとある花の説明文を指さした。
マリシアが代わりに名前や内容を読み上げると、ジェイドは懸命に陸の言葉を繰り返す。
そしてこれは?じゃあこれは?と、陸の文字の読み上げを次々と頼んではまた聞いた言葉を繰り返す。まるで小さな子どもだ。
「……僕ノ名まエ、陸ノもじ、ドウシて書きますか?」
『ジェイドさんの名前を陸の文字で書くと、ですか?』
「はい」
『じゃあ、本を貸してください』
「?」
『………はい。こっちがジェイドさん、ついでにこっちが私です』
図鑑に並ぶたくさんの陸の文字を見て疑問に思ったのか、突然ジェイドはそうマリシアに聞いた。
マリシアは先ほど渡した図鑑を一度返してもらい、裏表紙に直接油性ペンで名前を書き再度ジェイドに渡した。
それぞれを指をさしながら読み上げられることで、どちらがどちらの名前なのかを認識したらしいジェイドは同じように読み上げ、これで合っているかと何度も空に自身とマリシアの名前を連ねた。
字体が少し不格好なのが初々しい。
『そしたら、海の文字で、私と、ジェイドさんの名前は、どう書くんですか?』
「海…もじ…名マエ…書く…、…………マリシアさン、ジェイド」
『おお…こっちが私、こっちがジェイドさん、ですね。なるほど…まったく読めないな』
ジェイドは以前見せた空を指でなぞると線が浮かぶあの魔法をもう一度やってみせ、間もなく2つの単語がマリシアの前に並んだ。
メモ代わりとして写真を撮ってみたところ、写真にはしっかりと魔法の文字も写っている。
吸血鬼は鏡に映らないとは言われるが、人魚の魔法は肉眼でしか見えないということでもないらしい。
『……ふぅ、そろそろ帰りますね』
「……」
『それはあげますよ』
「?」
『プレゼント』
「プレ…?」
名前の練習の後は再び本に記載された写真たちをひとしきり眺め、その横に書かれた文字をマリシアが代わりに読んでいるとあっという間に空がオレンジ色になっていた。
ジェイドは今日はこれで終わりだと察したようで図鑑を返却しようとマリシアに差し出す。
マリシアはいつかのテラリウムをあげたときのジェイドのように、図鑑を受け取らずジェイドの方に押し込むとようやく理解したらしい。
『……あ、でも海で暮らしてるのに紙の本はだめか。これは毎回私が』
持ってきますよ。マリシアはそう海を眺めながら言いかけたところでジェイドに目を向けると、彼の手から淡い光が放たれ、その光が本を包んでいた。
光はすぐに収まり、すると本を片手にジェイドはニコニコと水中に潜ったり出てきたりを繰り返した。本は全く濡れていない。
『そんなことまでできるんだ……いらない心配だったみたいですね』
「#¥☆○」
『?なんです?』
「#¥☆○」
『…#、¥☆○……?』
ジェイドは突然人魚の言葉をマリシアを見つめながら発した。
マリシアが首をかしげるとゆっくり繰り返し同じ言葉を発するので、見よう見まねでオウム返しをしてみる。
人魚の言葉は人間が普段使わない舌の使い方をするかと思えば、決まった音程や母音だけで単語として成立することもあり難しい。おそらくはジェイドから見た人間の言葉も同じだろうが。
マリシアは言葉を真似ることができていたか不安げにジェイドの様子をうかがうと、彼は嬉しそうに頷いていた。
あの反応と流れからして「ありがとう」と言っているのだろうか。
『(ジェイドさんはすごいな、吸収が早い。今度は渡した図鑑を自力で読めるように文字でも教えてみてもいいかもしれない。私も単語くらいは身に着けてみたいな)』
”互いの文化を教え学ぶ”———はからずもマリシアに新しい趣味ができたきっかけになった日となった。
