長編(メインストーリー沿い)番外編
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この小説の夢小説設定twstメインストーリーの番外編なので、学園での呼称が多いです。
一応設定方法も長編と同じ表示にしてるので、同じように入れていただくと同じような感じで読めるかと。。
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「みんな、次の日曜日って空いてる?マジフト部の試合で、相手の学校がかなりの強豪らしいから見応えあると思うんだ」
「「『マジフトの試合?』」」
ある日の食堂にてエース、デュース、ジャック、エペル、エディシア、ユウ、グリムの1年生たちは昼食を囲んでいた。
たわいもない話をしながら、時にはグリムからおかずを守るべく奮闘していると、エペルが今後の日程について切り出し他のメンバーはエペルを見つめた。
エディシアは文化部なうえに緩い集まりしかなく、オンボロ寮の2人はそもそも部活に所属していない。
残りのメンバーは運動部だが基本日曜は休みであり、その日は試合もなくちょうどフリーであった。
『……と、いうことで来てみたけど』
「なんで喧嘩しちゃうかなぁ」
「ここで我の強さが出てしまったか……」
「おかげで若干押されてるんだゾ」
待ちに待った試合当日。
今回エペルはベンチ入りを果たしたそうで、スタメンではないが活躍の可能性があった。
それもあり誘いを受けたエディシアたちは会場含め試合の空気感も込みで期待していたが、前半の途中からナイトレイブンカレッジのチームで意見のぶつかり合いがあったようで、仲間割れを始めてしまったらしい。
エディシア、ユウ、デュースの順に溜め息を吐きながらこぼした。あのグリムですら呆れている。
エースとジャックに至ってはコメントすらなく静かに頭を抱えていた。
渦中にいるエペルは、上級生たちの突如始まった喧嘩をどうにかなだめようと、小さい体で一生懸命に抑えている。
殴り合いにまでは発展していないが、今にも審判が干渉しそうな様子にエディシアは部長であるレオナを凝視した。
『(何が天才司令塔だ。これで負けたらこっちまで泥塗られるんだけど。一緒に喧嘩してないでどうにかしなよ)』
「……………」
『あ』
「……キングスカラー先輩、もしかしてボクたちに気づいたか?」
『うわ、嫌な顔された』
「確実に気づいたな」
「下級生にみっともないところ見られて恥ずかしくなったんじゃね?」
「はは、まさか」
何かに気付いたらしいレオナの緑の瞳がエディシアの青い瞳を捉えた。
一瞬目を見開いたレオナはエディシアの周囲にいる他の1年生たちをそれぞれ見やると、腰に手をあて頭をかく。
その様子は観客席からでもわかるほどに歓迎ムードではなさげだったが、ロング丈のジャケットを揺らし部員たちの方へと向き直った。
レオナが何かを話しているうちに喧嘩していた部員たちは徐々に大人しくなり、不気味なほど急に喧嘩がおさまったことで間もなく試合の後半戦が開始される。
観客席では何があったんだと小さくざわついていたが、それは相手チームでも同じように不思議に感じていたようだ。
始まった後半戦では、日頃からトレーニングで筋肉や体の動かし方を学んでいるジャックが、チームの初動の様子から前半戦との違いに早くも気付いた。
「……さっきより明らかに統率がとれてるな」
『たしかに。ラギー先輩もエペルも動きやすそう』
「あの2人にマークされてて相手キツそ〜…特にエペル。ずっとへばりついてる」
「ちょこまか動かれるほうが大変そうだもんね」
「…ん?おいユウ、なんでオレ様のこと見ながら言うんだゾ」
「ってことは集中力も散漫になりやすいのか」
『そう。そしてあとは泥棒するだけ』
後半戦ではエペルが交代で試合に加わり、相手チームの得点源であろう主力選手を徹底的にマークする役割を任命されたらしい。
相手選手が振り払おうとするも小回りの良さで避けられ、時にはエペル以外の選手がブロックし、味方にパスをしようものならディスク泥棒の異名を持つラギーが目を光らせている。
そんな状態でストレス負荷がかからないはずもなく、冷静な判断をすることができなくなった相手選手は無理のあるシュートの構えをしてしまった。
もちろん彼はそれを見逃すはずもなく。
「お!盗った!」
「パスだ!」
「パス先は……」
「「『レオナ先輩!!』」」
見事泥棒の役割を果たして見せたラギーは手早く味方へディスクを飛ばした。
しかしそのディスクは上空へと飛んでいく。
まさか垂直にパスされるなど考えていなかった相手選手たちは反応が遅れ、上空で待機していたレオナの方がディスクを取るのが早かった。
相手チームがレオナをマークしないはずがなかったが、ナイトレイブンカレッジの選手たちが、レオナから注意を逸らすため相手選手たちを逆にマークし妨害していたため見失ってしまったのだ。
ディスクを受け取ったレオナは魔力を込め、軌道先まで素早く下降すると思い切り自陣から相手チームのゴールへとディスクを投げ込んだ。
「決まったー!!」
「すごい!!」
『超ロングシュート…!?』
「にゃはー!かっけーんだゾ!!」
「さっきまで険悪だったとは思えないほどの連携……!」
「ウチの学園もマジフトが強いのは知ってたけど、これが強豪校の部長のパワーと統率力……えっぐ……」
「ああ、レオナ先輩はやればできる男なんだ。部長自ら豪快なゴールを決めて一気に会場の空気も変えやがるなんて、本当にすげぇ…!」
飛ばされたディスクはまるで流星のように速く力強く、勢いの衰えないままゴールのど真ん中を突き抜けた。
さすがの威力にほぼ端から端までにも関わらず、マークされながらの相手選手たちは抑えきることができずに見送ることしかできなかった。
ゴール内の外枠に入れば2点、さらに小さな枠内に入れば3点となる。
レオナのシュートは堂々の3点を後半戦始まってすぐに決め、会場内では大歓声が上がった。
「凄かったな。特にキングスカラー先輩!後半からはまさに絶好調って感じで、ズババッと決めて、ガッと抑えて!」
「一時はどうなることかと思ったけど、後半は盛り上がったよな〜」
「さすがはレオナ先輩だぜ。しっかり群れをまとめてやがった」
『たまには生で試合を観戦するのもいいね』
「そうだね。あとでエペルにお礼と労いのメッセージを送っておこう」
『(……前言撤回。さすが天才司令塔だな)』
さすが相手も強豪校というだけあり、互いの作戦に素早く対策を立て試合は白熱した。
そして結果はナイトレイブンカレッジの勝利。
ことごとく司令塔であるレオナに先読みと相手を上回る早さで対策され、まさしく司令塔レベルの差で勝敗が決したと言っても過言ではなかった。
改めてレオナの能力の高さを目の当たりにしたエディシアは彼を再評価し、自分にはない圧倒的な強さと会場で繰り広げられた様々なスーパープレイにいまだ静かに胸が高鳴っていた。
エディシア:[試合、お疲れ様でした。おめでとうございます。]
レオナ:[楽勝すぎて退屈したくらいだ]
エディシア:[仲間割れしていたのはわざとだったと]
レオナ:[あれくらいのハンデはやらねぇとな]
エディシア:[そのわりにはみんなギスギスしていましたね]
レオナ:[何事にも一生懸命な奴らだから、そのうち本気と捉えたのかもしれねぇなァ]
勝手にとはいえ再評価した彼にも、一言労いの言葉でもかけてやろうとエディシアがメッセージを飛ばすと案外早く返信が返ってきた。
レオナ曰く仲間割れについては作戦のうちだったとのことだが、すでにエペルから内情を聞いていたエディシアは首をかしげる。
『……なんで謙遜するんだろう』
喧嘩は作戦でもなんでもなく本当に起きたもの。
それをレオナは持ち前の頭の回転の速さで部員たちを言いくるめ、後半戦の景気付けとしてあのロングシュートまでの作戦を急遽立てたのだという。
結果会場の空気感はNRCコールに寄り、相手は司令塔のレベル差と会場の空気に飲まれたことで決したという流れだった。
オーディエンスの声援や反応というのは試合に影響が出やすい。
さらには一度変わった会場の空気を塗り替えるというのもそう簡単にはいかないものだ。
それを喧嘩の仲裁からあの統率まで仕上げること含めやってのけたのだから、もっと威張ってくるものだとエディシアは想定していたのだった。
一方レオナは、ベッドに寝転がりながらエディシアからのメッセージに返信するとスマホを小さく放り投げ、天井を仰いだ。
そして当時のことを思い起こしながら呟く。
「あの時のアイツ、人ひとり殺っててもおかしくない顔してたな……おかげで冷静にはなれたが、そんなみっともねぇこと言えるかよ」