『デュース、僕が強化するから大釜出して！』
「おう！こ、これでどうだ！」
「うおっ！？」


デュースが得意の大釜を[#da=1#]の強化魔法でさらに大きく出すも、ラギーはスレスレで避けた。
もう追う側は息絶え絶えである。


「正直ちょっとびびったッス…。でもまぁ、その様子を見ると今のが最後の悪あがきってカンジッスね～」
「はぁ、はぁ…あんなに走ったのになんでまだピンピンしてんだよ…！」
『人数では勝ってるのに…』


1年生のみとはいえ、複数で追いかけてるのになかなか捕まらない。
何度魔法を放ってもかわされてしまい、後半には体力が持たず魔法も狙いを外しがちになってしまった。


「つかさぁ、もしここでオレを捕まえたってアンタらオレが犯人って言いきれなくないッスか？」
「なんだと？」
「だって、オレが怪我させたって証拠ないっスよね。誰かオレが魔法使ってるとこ見たんスか？そんで、それ写真に撮ったりしたんスか？してないッスよねぇ？」
『一目散に逃げたくせに』
「そちらさんが怖い顔で囲んでこようとしたからとりあえず逃げただけッスよ。シシシッ！次にオレを追い回すときには証拠揃えてから来てくださいッス。ま、君たちじゃ次も無理だろうけど」


結局ラギーは捕まることなく、盗んだマジカルペンを置いてその場から去ってしまった。
煽られて何も言い返せなかったエースたちはただ悔しがることしかできなかった。


「でも今、「次も無理だろうけど」って言ってたよね」
『…そうだね。また何かやるつもりかも。あー悔しい…』
「てめーら、まだ懲りずに犯人捜しやってんのか」


背の高い獣人の生徒が声をかけてきた。サバナクロー寮生だ。狼だろうか。
[#da=1#]以外は彼を知ってるような雰囲気だったので、ユウに耳打ちしてみると昨日会った選抜候補のジャックというそうだ。1年生とは思えないほど体格が良い。

ジャックは何故他人のために必死になれるのかと質問する。が、その質問に全員が異を唱えた。


「怪我したダチの仇討とうって気持ちはわからなくもねぇが…」
「だーれが他人のためなんかにやるかっつーの」
「僕たちはこの事件の犯人を捕まえて手柄を立てたいだけだ」
「オレ様だって、絶対アイツを捕まえてテレビに映ってやるんだゾ！」
『僕は欲しいものがあるから』
「…ハッ！他人のために動くようなヤツは信用ならねぇと思ってたが…お前ら、思ってたよりひでぇ奴らだな」


ジャックは[#da=1#]たちの動機に納得したようだ。
しかしひどいのはジャックもである。
首謀者が誰なのかわかっていた上で今回の調査に協力しなかったようなのだから。
エースが犯人を知ってたんだろと問い詰める。


「あっ！そうか。同じ寮だから「自分は狙われない」って言ってたのか？」
「………オイ、てめーら。オレと勝負しろ」
「はぁ～？突然なんだよ？」
「男が腹割って話すんなら、まずは拳からだろ」


口だけじゃないと証明できれば知ってることを吐いてくれるらしいが、そういうことに冷めているエースと[#da=1#]は嫌悪を示す。
しかしデュースはわかりやすくていいと乗り気になってしまった。


「よし、拳で語り合おう！」
『なんでこうなるの…』
「今だけリドル先輩の怒号とユニーク魔法飛んでこねぇかな…」