1章
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ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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『…はぁーーー……大丈夫かな……』
エディシアは自分の部屋に帰ってからというものの、取られた帽子は手元に戻っていない状態のため落ち着かずにいた。
レオナは追い返した時点では1人が帽子を手にしていたと言っていたので、まだあの生徒のどちらかが持っているか捨ててているかという事になる。
話を聞いた時は今すぐサバナ寮に自分も行かせろと無理矢理乗り込もうとした。
ただ、鼻の利く肉食動物の遺伝子を持つ獣人属や血の気の多い生徒の多く集まるサバナクローは、エディシアにとって一番リスクが高くて相性の悪い寮である。
そのため見つけたら回収しておくからとレオナに止められ渋々戻ってきたという状況だ。
『(嫌でも思い出す……悔しい……絶対に後悔させてやる……)』
夕飯後も落ち着かず部屋でウロウロしてしまうので、シャワーでも浴びれば少しは落ち着くかと準備をしようとすると誰かが扉をノックした。
相部屋相手はバイト中のはずだし、自分の部屋に入るのにわざわざノックはしない。来客ということになる。
『…ジェイド先輩』
「こんばんはエディシアさん。お届け物があるので少しお邪魔してもよろしいですか?」
『あ、はい。どうぞ』
エディシアが扉を開くと想像していた高さに目線がないことに気付き、恐る恐る顔をあげれば特徴的なメッシュが目に入った。
そこにいたのはジェイドだった。彼も今日はシフトが入っていないそうで、にこやかにエディシアへ挨拶した。
「おや、もしかして今は都合がよろしくなかったですか?お顔が怖いですよ」
『あ、いえ、特には…………届け物って何ですか?』
「そうでしたか。実は落とし物を拾いまして。あなたのではないかと」
ジェイドが後ろに回していたままだった腕をエディシアの前に出すと、その手には帽子が握られていた。それはエディシアにとってとても見覚えのあるものだった。
今日の乱闘や日々の生活で色々な匂いがついてしまったが、確かに残っている香りこそが本物だとその帽子が物語っている。
都会暮らしなうえに聴覚の方が得意分野だが、エディシアも猫の獣人である以上、嗅覚も普通の人間には負けない自信がある。
『これ…!一体どこで…?』
「鏡舎近くに落ちていました」
『そうですか……よかった…』
「…とても大切な物だったようですね、お届けできてよかったです」
どうやら植物園を出てから捨てたようだ。
彼らからすればただの帽子。どうせ今さらエディシア相手に役に立たないだろうと考えたのだろう。
まさに探していた物が目の前に現れた事でエディシアは深く息をつき、両手で大事そうに受け取った。
『……本当にありがとうございます』
「いえいえ。お気に入りの帽子なんですね。でも無くしたらまた新しい物を買えばよいのでは?お金に困っている様子でも無さそうですが」
『………いえ、これがいいんです』
「…おや?ここ…」
『っ』
「……大丈夫ですよ」
ふと何かに気づいた様子のジェイドがエディシアの左頬に手を伸ばした。エディシアはあの時の事がよぎり思わず強張る。
ジェイドはその反応に一瞬手を止めたが、そっと口元の傷跡に優しく触れた。
軽く屈み目線の高さを合わせたことで顔の距離も近づく。
エディシアはジェイドの切れ長で美しいオッドアイに吸い込まれそうになり視線をそらした。
ジェイドは構わず言葉を続ける。
「ここ…つい最近までは無かったと思ったので。帽子が屋外に落ちていたということは、おおかた強風に煽られ飛んで行った帽子を追いかけている際に転び口元を切ってしまった…といった具合でしょうか?」
『……そんな感じですね』
「ラウンジでのことといい、また怪我を作ってしまうなんて案外おてんばさんなんですね。跡が残らないといいですが」
『あはは、気を付けます』
ジェイドは先ほどできた傷の箇所を指摘した。
エディシアとしては注意力がないような解釈をされたことに若干いい気はしなかったが、落とし物を届けてもらった上に、目上の立場の人物が相手ということもあり堪えることにした。
「それでは僕は帰りますね」
『あれ……?先輩、お手数おかけしてしまったのに見返りを要求しないんですか?』
「おや、僕としては部屋に戻るついでに拾っただけなのですが……そんなにお返しがしたいのですか?」
『げ』
いつかの昼休みのときのように、対価が前提の善意なら事前に知って心の準備をしたいとエディシアなりに考え尋ねてみたが、今回はまさかの対価無しで済む話だった。本気でついでだったらしい。
ジェイドが嬉しそうに悪い顔をしたことで選択を間違えたと後悔した。
『やっぱり何でもないです………でも先輩が届けてくれなかったら無事に戻ったかわからないし……いや何もせずに済むなら一番……でもこの帽子は……ちょっと待ってください』
「ふふふ。では……明日一緒にお昼を食べましょう」
『はい?』
エディシアが決めあぐねていると頭上から突飛な提案が降ってきた。聞き返すも同じ内容が返ってくる。
なんでも明日の昼休みは1人らしい。一見あまりにも平凡な誘いだが、ジェイドはよく食べる。それはもう跡形もなく綺麗に平らげる。
エディシアは自分でも自信を持って公言できるくらいには裕福な家庭の出身だが、金は他人より自分のために使いたい。
彼の昼食分を奢るとしたらいくらになるのかエディシアは思考したが、一部を奢ってくれればいいとのことだった。