1章
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ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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『……落ち着かない…大丈夫かな……』
エディシアは自分の部屋に帰ってからというものの、取られた帽子は手元に戻っていない状態のためそわそわしていた。
レオナは追い返した時点では1人が帽子を手にしていたと言っていたので、まだあの生徒のどちらかが持っているか捨ててているかという事なのだ。
話を聞いた時は今すぐサバナ寮に自分も行かせろと無理矢理乗り込もうとした。ただ見つけたら回収しておくからとレオナに止められ現状に至る。
『(嫌でも思い出す…悔しい…絶対に後悔させてやる…)』
夕飯後も落ち着かず部屋でウロウロしてしまうので、シャワーでも浴びれば少しは落ち着くかと準備をしようとすると誰かが扉をノックした。
相部屋相手はバイト中のはずだ。
「失礼します」
『…ジェイド先輩』
「こんばんはエディシアさん。少しお邪魔してもよろしいですか?」
『あ…はい。どうぞ』
入ってきたのはジェイドだった。彼も今日はシフトが入っていないそうだ。
「おや、もしかしてあまりご機嫌よろしくなかったですか?お顔が怖いですよ」
『あ、いえ、ちょっと色々あっただけなので………ところでどうしたんですか?』
「そうでしたか。実は落とし物を拾いまして。あなたのではないかと」
ジェイドが後ろに回していた片腕を前に出すと見覚えのある帽子を差し出した。
今日の乱闘や日々の生活で色々な匂いがついてしまったが、確かに残っている香りこそが本物だとその帽子が物語っている。
『これ…!一体どこで…?』
「鏡舎近くに落ちていました」
『そうですか……よかった…』
「…とても大切な物だったようですね、お届けできてよかったです」
植物園を出てから捨てたのだろうか。
まさに探していた物が目の前に来た事でエディシアは深く息をついた。
『……本当にありがとうございます』
「いえいえ。お気に入りの帽子なんですね。でも無くしたらまた新しい物を買えばよいのでは?お金に困っている様子でも無さそうですが」
『…いえ、これがいいんです』
「おや?ここ…」
『っ』
「…大丈夫ですよ」
ふと何かに気づいた様子のジェイドがエディシアの左頬に手を伸ばした。あの時の事がよぎり思わず強張る。
ジェイドはその反応に一瞬手を止めたが、そっと口元の傷跡に優しく触れた。
軽く屈み目線の高さを合わせたことで顔との距離も近づく。エディシアは切れ長の美しいオッドアイに吸い込まれそうになり視線をそらした。
「ここ…つい最近までは無かったと思ったので。帽子が屋外に落ちていたということは、強風に煽られ飛んで行った帽子を追いかけてる時に転んでしまったのでしょうか?」
『…そんな感じですね』
「また怪我を作ってしまうなんて案外おてんばさんなんですね。跡が残らないといいですが」
『あはは、気を付けます』
ジェイドは口元を切り血が出ていた箇所を指摘した。
注意力がないような解釈をされたことに若干いい気はしなかったが、落とし物を届けてもらった上に、目上の立場の人物が相手ということもあり堪えることにした。
「それでは僕は帰りますね」
『あ…先輩、お手数おかけしてしまったのに見返りを要求しないんですか?』
「おや、僕としては部屋に戻るついでに拾っただけなのですが…そんなにお返しがしたいのですか?」
いつかの昼休みのときのように、対価が前提の善意なら事前に知って心の準備をしたいと考え尋ねてみたが、今回はまさかの対価無しで済む話だった。
ジェイドが嬉しそうに悪い顔をしたことで選択を間違えたと後悔した。
『げ。やっぱり何でもないです…あーでも先輩のおかげで無事に戻って来たわけだし…いや何もせずに済むなら一番…ちょっと待ってください』
「ふふふ。では…明日一緒にお昼を食べましょう」
エディシアが聞き返すも同じ内容が返ってくる。
なんでも明日の昼休みは1人らしい。昼食代は一部を奢ってくれればいいとのことだった。