6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「まったく!対価も決めずに1番危険な役を引き受けるなんて。〖雷霆の槍〗の充電だって充分じゃないんですよ!」
『本当ですよ…報連相をしてください』
「フッ。そんな悪態をついているけど、キミたちだってこれが最善策だとわかってるんだろう」
各々の持ち場へ就くため3チームが解散した途端、リドルのチームメイトであるアズールとエディシアが詰め寄った。
しかしリドルはそんな2人のことなどどこ吹く風と、気にする様子もなく小さく笑ってみせる。
『それはそうなんですけど……!』
「ええ、ええ。万が一僕らがヘマをしても、あの先輩たちならすぐさま次の策を展開できるでしょうからね!」
あたりに充満する高濃度の瘴気、目前には複数のファントムを取り込んだ巨大なオルトとオーバーブロットした寮長クラスのイデア。
それに対し、こちらは人数はいるが疲労困憊。あのファントムにまともに対抗できうる頼みの綱の〖雷霆の槍〗は半分も充電が無いときた。
おそらく他の2チームも充電残量はリドルたちと同程度だろう。
まっとうな正論で返されたエディシアは行き場の無い怒りに手元をわなわなとさせ、アズールは眼鏡をカチャリと上げた。
「よろしい。では、ボクが砲手で、エディシアはサポートを。そしてキミが操縦手だ。さあ、【チャリオット】に乗りこもう」
「ちょっと待ってください。僕が運転担当ですか!?」
「ボクは運転免許を持っていないからね。……私有地内だから、気にする必要はないだろうか?」
「そんなの、僕だって持っていませんよ!箒に乗るのだってやっとだっていうのに。いきなり見たこともない乗り物を操縦しろだなんて。無茶振りも大概にしてください!」
リドルの指示にアズールは慌てて抗議した。
リドルはリドルなりの理由、アズールはアズールなりの理由で操縦を拒む。
そんな2人に通信機から先ほどの所員がチャリオットについて軽く説明した。
魔導ビークルであるチャリオットは箒と違い、進行方向にハンドルを切るだけで自動でバランスをとってくれるのだと言う。
「よっぽどのことがなければ転倒しない。マジカルホイールと同じだよ!さあ急いで!」
「マジカルホイールなんて、人魚である僕には箒より馴染みがありませんが!?」
「ううん……こんなことなら教習所に通い、魔導車免許をとっておけばよかった」
「そんなことを言ってる場合か!」
『運転は僕がしますから、2人は攻撃に集中してください』
操作方法について説明を聞いたリドルとアズールは再び各々の心情を口にする。
難しいものではないと言われても、どうしても操縦に抵抗があるらしい。
そんな彼らの様子を静かに見ていたエディシアは操縦手への立候補と共に先にチャリオットへ乗り込んだ。
リドルとアズールはピタリと話をやめ、エディシアに視線を移す。
エディシアの海のように青い瞳は荒波を立てることなく、ずっと下にいるシュラウド兄弟をじっと捉え続けている。
「エディシアは免許を取得しているというのかい?」
『ありません』
「では知識があるとか……?」
『いいえ』
「そのわりにはずいぶん自信ありげに声をあげましたね!?」
『上級生の2人が攻撃した方がいいに決まっているでしょう!しかも揃って寮長クラス!操作は難しくないようなので大丈夫です。ほら、マジカルペンを構えてください』
「な、え、……は?」
リドルとアズールは交互に質問を投げかけ、エディシアは順番に答える。
しかしことごとく否定ばかり返ってくる答えに、アズールはせっかくかけ直した眼鏡をずらすほどのリアクションをしてしまった。
それに対し、エディシアも視線を2人に映し負けじと同じ勢いで返答する。
突然威勢のいい返事が返ってきたことでアズールは呆気に取られた。
リドルも呆然と見つめている。
『なに突っ立ってるんですか。まさかあんなでかい的を外すなんて言わないですよね?それともどちらかが弾になります?お2人のように足出ますよ』
「わかった!わかったから!まったく、オクタヴィネルのところはどういう躾をしているんだ…」
『こちらが散々迷惑被っていたのを知らないなんて言わせませんよ。途中調子がよかったのにこんな大事なところでぐだぐだと……!もう耐えられない!オルトがもうすぐそこまで来てるんですよ!早く!』
尻尾を叩きつけ牙を剥いているエディシアが、己のかかとでカツカツと威嚇のように地面を鳴らす。
その様子から宣言した行動へ移される前にリドルが同意を示した。小言付きで。
かかとを鳴らさなくはなったが、いまだ体勢に入らないリドルとアズールにエディシアの尻尾の動きは止まらない。
再度飛んできた威勢のいい指示で次にチャリオットに乗り込む意思を見せたのはアズールだった。
「し、仕方ないですね……リドルさん、上級生…そして寮長クラスの力を見せてやりましょう!」
「あ、ああ…いこうアズール!」
『ではいきますよ。振り落されないようにしっかり掴まってください』
「「うわっ!?」」
「ま、待て!エディシア!」
「飛ばしすぎです!」
『黙ってくれません?言い合いしてた分、時間をロスしてるんですから自業自得ですよ!』
アズールに名前を呼ばれハッとしたリドルは頷いた。
今のエディシアは怒りを露わにしてはいるが変なことは言っていない。実際ただの1年生が火力を担ったところでたかが知れている。
こういう時こそ今までのように下級生が後衛にまわり、上級生が前衛に立つのが順当だろう。
しかしエディシアの操縦は急発進、急加速、急カーブとカーチェイスをしているかのようにとても荒い。
リドルとアズールはそれぞれ抗議したがピシャリと跳ね返されてしまった。
エディシアは時間がないからと言うが、家族からおてんばと呼ばれる所以はここにもあるのだろう。
「ハハハ!1年坊が直属のボスと暴君を尻に敷いてやがる!こりゃいいエンターテインメントだ」
「笑いごとじゃないですよ。こんなときに何をしているんだか……」
「今のあの子なら本当に人間を弾にしかねないわ……」
「白い猫(ル・シャ・ブラン)の迫力、音声だけでもひしひしと伝わるね!」
「VDCのレッスンのときとは違う怖さ……どこか達観したところはあったけど、あんなに怒ることあるんだ……」
「僕も初めて。そうとう鬱憤が溜まってたんだろうなぁ……」
各チームの状況が共有できるよう通信機は全てオンになっており、ゆえに今の3人のやりとりも筒抜けであった。
レオナはいい気味だと笑い、ジャミルは呆れ、ヴィルは2人を案じ、ルークは楽し気に声を弾ませ、エペルはレッスンでの日々を思い出し、ユウはエディシアに同情した。