6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「……夢を叶えるには犠牲がつきもの……か」
『リドル先輩はどうなんですか?2人の夢を壊すことに後ろめたさを感じますか?』
「全く無い…とは言いきれない」
リドルは熟睡するアズールを見つめながら呟いた。彼との先ほどのやり取りが気になるらしい。
独り言を聞いたエディシアは、まだリドルの答えを聞いていないことを思い出し訊ねる。
返ってきた答えはやや煮え切らないものだった。
しかしリドルは「ただ、」と顔を上げた。
「ボクにはボクの夢がある。それを他人に譲ってやるほど甘くはないさ。…先ほどのやり取りでやることが増えそうだしね」
『奇遇ですね。僕もです』
そう言ったリドルは小さく目を細め、答えを聞いたエディシアは嬉しそうに笑顔になる。
2人の間にはとても世界の危機が迫っているとは思えないほどに穏やかな空気が流れていた。
「さあ、ここはボクが見張りをしているから、君も早く休んだ方がいい」
『いえ、先輩もここまででブロットや疲労が溜まっています。僕が見張るので次に備えてください』
「……あ、そうか」
しかしゆっくりできる時間はそう長くない。
少しでも体力を回復させるため、リドルはエディシアに指示を出した。
このチームの中で魔力が少ないのはエディシアだが、後方支援が主だったエディシアと違い、戦い続けているリドルの消耗も相当のはずだ。
限られた戦力で最終戦が目前まで来ている以上、少しでも全員が万全な状態で臨みたい。
リドルがどうしたものか…と自身の顎に手を添えながら何気なくエディシアを瞳に捉えると、何かを思い出したようでハッとした。
「キミ、たしかここにはブロットを取り込めるからってことで連れてこられたんだったね」
『(こ、この流れは……)』
「ボクのブロットを取り除いてくれないか」
『やっぱり……』
「そうすればわずかな休息でも見張りをすることができる。このブロット量では難しいかい?」
この後の展開を察したエディシアは上がっていた口角をひくつかせ、リドルの案の定な提案に思わず俯いた。
リドルはエディシアの反応を全く気にしていないようで、構わず自身のマジカルペンを差し出す。
そのペンについている魔法石はブロットで汚れており、このあとのことを考えたエディシアは他に手がないことを知った。
『(槍を操縦してる分、アズール先輩のときよりかなり多いな……でもこのあと必ずまた槍を使うと考えていい……)これなら1時間超えるかどうかかと……』
「そうか……まぁ、もし出発時間になっても少しなら待てるし、アズールに運ばせればいいだろう」
『その分この戦いが終わるまでの間しっかり僕を守り、そして前衛で働いてください。これが対価です。こっちは覚醒までの間休息になってるわけではないんですから』
「いいだろう。完璧なエスコートをしてみせるよ。なんたって普段は女王を敬うよう寮生たちを躾けている側だからね」
互いに同意した2人はそれぞれ頷くと、エディシアがリドルの手を取り詠唱を始めた。
手元に魔力が急速に集まっていき、1つのティーカップが現れる。
『〈貴方が消えれば私は悲しみ、私が消えれば貴方は喜ぶ〉。【眠りの国】
「……レオナ先輩のオーバーブロットのときにも見たが、本当にブロットが抜けている…おかげで体が楽になったよ」
『重ねて言っておきますが、戦いが終わるまでなので目を覚ますまでの間もですよ。絶対丁重に扱ってくださいね』
「わかっているから早くお眠り」
エディシアの詠唱が終わるとリドルから何かが出ていき、ティーカップに注がれていく。
それは一見なんの変哲もないミルクとなった。
リドルは軽くなった自身の体に目を丸くさせながら、マジカルペンの魔法石をまじまじと見つめる。
カップを手にしたエディシアは再度リドルに釘を刺すと、ミルクを飲み干し間もなく意識を手放した。
『………ん……』
「……?もう起きたのかい。聞いていたよりずいぶん早いね」
『これは…先輩のマント?』
「丁重に扱うのが条件なのだから当たり前だろう」
しばらくし目を覚ましたエディシアは周囲を見渡し、リドルがそれに気づく。
布団のようにかけられたマントは、リドルがさっそく条件を守るために実行された証だった。
『………僕が眠ってどのくらいですか?』
「30分程度だね」
『……寮長のときと変わらない時間……?』
「どうかしたのかい」
『いいえ……間に合ってよかったです。その分自分の休息にまわせるので…引き続き見張りをお願いしても?』
「もちろんだよ」
リドルから意識を手放していた時間を聞いたエディシアは驚愕する。
テストでレオナのブロットを取り込んだ時は30分程度、そして先ほどのアズールもレオナと同じ程度のブロット量だったため、それを基準にリドルのブロット量から必要時間を想定していた。はずだった。
しかし今回明らかにブロット量が多かったにも関わらず、同程度の時間で目覚めた。
ナイトレイブンカレッジに入学してからユニーク魔法を何度も使ったことで、成長したとでもいうのだろうか。
本来の眠気が押し寄せたエディシアにそれを考える余裕は無く、リドルのマントを握ると力なく瞼を閉じた。
——————————……
ドゴオオオオン!
「「『!?』」」
「なっ、なにごとです!?」
「外から轟音が……まさかまたタイタンか!?〖雷霆の槍〗の充電は……」
「現在、充電は30%完了しています」
「まだ3分の1しかエネルギーが溜まっていない」
『そんな…少なすぎる』
「それでも何もないよりはいいはずだ。持っていきましょう!」
「わかった。行こう!」
『はい……!』
無意識にリドルもうつらうつらとしていた頃、突然の轟音に3人は飛び起きた。
雷霆の槍の充電は全く進んでいないが、明らかな異常事態に急いで走り出し部屋を出た。