6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「な、なんだ!?」
「なにかが収容所の入り口を破ろうとしています!」
『この急激な暑さ……そんな……!』
戦闘が終わったのも束の間、突如大きな衝撃と熱気が3人を襲った。
互いに見合い、エディシアの脳裏にとある存在がよぎったと同時に案の定怒号が再び響き渡る。
〖タイタンズ・マグマ〗が再び3人を追ってやって来たというのだ。
ソレは先ほどと変わらずジュピターの名前を叫び続けている。
「どういうことだ!〖雷霆の槍〗を食らったというのにピンピンしてるじゃありませんか!?」
「ここで迎え撃つしかない。急いで準備を!〖雷霆の槍〗はボクが!エディシアはボクのサポートを。アズールは収容所のドアに氷でバリケードを作り、少しでも時間を稼いでくれ!」
「わかりました!」
『はい!』
収容所の先で暴れている正体が判明したところでさっそくリドルが指示を出した。
一度目に撃退したときと同じ要領で迎撃の準備を始める。
「氷よ!扉を覆いつくせ!」
「〖雷霆の槍〗、起動!」
「操縦者認証。全魔導回路、および安全装置のロック解除。照準サポートモードで起動します」
「ぐッ……照準を、タイタンが出てくる場所にあわせて……ッ!」
『…もう少し上に向けます。そのあたりなら中心部を打ち抜いてくれるはずです』
「よし。わかった」
「みるみる氷が溶けていく。なんてパワーだ!」
「待たせたね。時間を稼いでくれたおかげで槍の準備は完了したよ!」
「ジュピタァアアアア!!!!ユルサアアアン!!!」
「今度こそ……お前の首をはねてやる!」
槍について一度目より勝手がわかっているといっても、やはり重いものは重い。
小型化されてはいるが解き放たれる魔力の質量は変わらないので、リドルとエディシアは魔力に吹き飛ばされないよう足腰に重心を集中させながら慎重に照準を合わせる。
そしてリドルの合図にアズールは場を離れ、2人の元へ駆け寄ったと同時に扉が吹き飛ばされた。
叫びながら侵入してきたタイタンへ放たれた雷霆の攻撃が、見事胸部を直撃する。
「リドルさん、あと一息です!!」
『早く…吹っ飛べ…!!』
「ぎ、ぎぎっ……!!」
「「『はああああぁぁぁぁッ!!』」」
「グオォォォォ!!ジュピタァメェエエェ~~~~!!!」
「「『はぁっ、はぁっ………!!』」」
砲撃を受けたタイタンは今回なかなか倒れず、3人が支える雷霆の槍に自然と握力がこもる。
やがてエディシアたちの念が通じたのか、タイタンは雄叫びをあげながら奈落の底へと落とされていった。
3人の荒い息遣いだけが室内に響いている。
間もなく槍から流れたアナウンスによりエディシアたちの意識は現実へと引き戻された。
「〖雷霆の槍〗のバッテリー残量が低下しています。残り10%です。充電ステーションに設置してください」
「こ、今度こそ、やりましたか……?」
『もうあんなのはこりごりです……』
「流石に仕留めたと思いたいね……うっ!」
それぞれが呟いた直後、リドルが軽くよろめいた。
彼の様子に思わずアズールとエディシアは駆け寄る。
槍の主砲だけでなく戦闘で1番の火力を担当していた彼の魔力、体力の消耗は著しいものだった。
それによりブロットも相当溜まっているようだ。
少し下れば格納庫があり、充電と休息を取るべく急ぎ向かうこととなった。
「〖雷霆の槍〗は充電ステーションに置いたよ。でも、フル充電を待つ時間はなさそうだ。1時間ほどしたら出発しよう」
『1時間……すぐですね』
「念の為、ドアの前には氷でバリケードを作りました。これでしばらくは安心でしょう」
「「『…………………………ぷはぁ~~~~~~~~~………………っ』」」
リドルは今後の時間配分のことを考え、滞在目安を聞いたエディシアは力無く天井を見上げる。
ちょうどその頃にアズールはバリケードを作り終え、カツカツと革靴を響かせながら2人の元に戻って来た。
安心という言葉、また3人集まったということもあり、それぞれ顔を見合わせると大きな溜め息と共に崩れるように座り込んだ。
『数時間前までは日常を送っていたのに……暖かいシャワーを浴びて、ホットミルク飲んで、ふかふかのベッドで眠りたい……』
「……学園にいる人たちは、僕らがこんなことになっているなんて考えもしないでしょうね」
「それどころか学園に戻って今日のことを報告しても、誰にも信じてもらえそうにないよ。「悪い夢でも見ていたんだろう」って笑われそうだ」
『きっとあの能天気なロイヤルソードアカデミーの連中でさえも信じないですよ』
「本当に……。部活の先輩があのジュピター財閥の関係者で、”嘆きの島の番人”で……さらには世界をリセットしようとするだなんて……現実味のなさすぎる話です。でも……これが現実なんですよね」
「イデア先輩たちにとってはこの悪い夢のような状況が現実で……学園生活のほうが現実味のない夢みたいなものだったのかもしれないね。……目を覚ませば、すぐに忘れてしまうような」
「ええ。そして僕らの学園生活を取り戻すためには、彼らの夢を壊すしか道はない」
3人は今起こっている非現実的な状況を思い思いに口にした。
しかしイデアとオルトにとって、すぐ側にファントムがいる生活が日常であり、離れられないことも日常。
エディシアたちの在籍する学園には様々な境遇の生徒がいるが、王族以上にシュラウド家はさらに特殊な境遇なのだ。
アズールとエディシアの顔を覗き込んだリドルは、覚悟を確かめるかのように訊ねた。
「彼らと争うのは、心が痛むかい?」
「まさか。”橋を渡るには通行料”……夢を叶えるためには、犠牲がつきものだ。それが美しい声なのか、金や時間なのか、それとも他人の夢なのかは、時と場合によるでしょうが。僕には叶えたい夢がたくさんある。ひとつだって諦めるつもりはありません。学年首席、〖モストロ・ラウンジ〗2号店、配送事業、テーブルウェア事業、ホテル経営……レジャー事業……それから……」
『まだあるんですか?すごい欲求ですね』
「こら、アズール。なんでボクに寄りかかって……あ」
「スーー……スー……」
「……寝てる」
『ぐっすりですね……』
リドルの問いにアズールは真っ先に答えた。
次から次と矢継ぎ早に出てくる彼の夢に、リドルは片眉を上げ、エディシアは徐々に耳が下を向く。
しかし徐々にアズールの勢いが失われ重心が傾き、リドルの肩にアズールの頭が預けられる。
間もなく深い寝息がリドルとエディシアの耳に届いた。
「タコは警戒心が強くて繊細だから、こんなところでは眠れないんじゃなかったの?」
「ぐぅ……」
『つい無防備になってしまうほど疲労が溜まったのか、このチームに慣れたのか……』
壁際で自身の肩にアズールが寄りかかったことでリドルは身動きが取れなくなってしまう。
しかし全く怒ることも困る素振りも無く、むしろ起こさないように、先ほどの彼の言葉を優しく復唱した。
カラン、とアズールの脱力した手から転がり落ちた杖状のマジカルペンを唯一動けるエディシアが拾い、2人はアズールを見つめながら小さく微笑んだ。