6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「なんだか妙な気分だよ。誰かの後ろをついていくというのは」
「先導役が僕では心許ないですか?」
「不安なのは間違いないけれど……それは単に、視界が悪いせいだ。キミのことは頼りにしている」
暗闇の中を深海育ちのアズールが誘導し進んでゆく。
道中に何度かファントムとの戦闘があったが、いまだにIDカードは見つからない。
最後尾からリドルとアズールの会話を聞きながら周囲を見回していたエディシアは、突然進行が止まったことで前方を覗いた。
「………エディシアさん、見えますか」
『……はい。前方2時の方向ですね』
「もしかして敵がいたのかい?」
「ええ、ちょうど良く姿を見せてくれました。あのケージの陰です。…合図を出したら攻撃をお願いします」
アズールとエディシアのやり取りに、リドルは眉をひそめ身構えた。
前方のファントムはアズールたちと同じく様子を伺っているようだ。
2人もマジカルペンを構え、ファントムが飛び出すのと同時にアズールの合図でリドルとエディシアが魔法を放った。
「今回も無事に撃退できたね」
「ええ、全員怪我がなくて良かったです。あいにくIDカードは見付かりませんでしたが」
「……どうしたんだい、アズール。声に覇気がないようだけど」
「誰のせいだと……。いえ、なんでもありません。ちょっと気疲れしれしまいました」
「キミにばかり負担を強いるわけにはいかない。敵の撃破は遠慮なくボクに任せてくれ」
「だからそういうところが……。はあ……無自覚だから余計に性質が悪い」
『寮長……』
「そんなに睨まなくてもわかっていますよエディシアさん。先に進みましょう。次も頼みますよ、リドルさん」
「ああ。ボクの魔法を存分に活用するといい」
『本当にお願いしますよ2人とも。もう少しで最奥部なので、ブロット管理はより慎重にいきましょう』
ファントムを倒した3人は互いに大事がないことを確認する。
しかし怪我はないものの、アズールに疲労の色が出始めていた。
それは連戦、索敵しつつの誘導…だけではないらしい。
エディシアは本音を小さくこぼしたアズールに鋭い視線を送る。
暗室でもアズールにはしっかりその表情が見えており、軽くあしらうと次に進むよう促した。
「リドルさん、今です!」
「さすがリドルさん、見事1発で仕留めましたね。次もこの調子で……」
『!上です!!』
「!?危ないッ!」
「あだっ!?」
『えっ蹴…』
「急になんです!?」
「ファントムだ!……くる!」
その後も別のファントムとの戦闘を無事にやりきり、探索を再開しようとしたところでエディシアが咄嗟に声をあげた。
直後にリドルはアズールの背中に鋭い蹴りを入れ、アズールはその突然の衝撃に踏ん張れることなく前のめりに倒れかけた。
そんなことが目の前で繰り広げられたので、エディシアは呆気に取られてしまう。
『どうして今?』『さっきも見たよね?』『リドル先輩ほんとは見えてるんじゃない?』…など、一瞬の間に様々な考えがエディシアの脳内を駆け巡ったが、リドルの合図の声にハッとし身構えた。
「アズール、大丈夫かい?」
『随分思い切りいきましたね』
「いたた……ハイヒールで蹴られた背中がまだズキズキしています」
「すまない。両手は杖で塞がっていたから、つい」
「あなた、普段は”つい”で足がでるタイプじゃないでしょう」
「”命がかかっているときに、上品さなんて気にしていられない”……だろう?」
「こんなところで学習能力の高さを発揮しなくていいんですよ」
『ハァ……仕返しは今じゃなくてもいいでしょう……。なんだか、前半のほうが喧嘩していたのに妙に疲れる……敵が厄介になってきたからか……』
「ええ。いつどこから敵が現れるかわからないというのは、想像以上のストレスですね。自分のタイミングで戦闘を仕掛けられる分、ケージを開ける方がいくらかマシだったかもしれません」
戦闘を終えたリドルはすぐさまアズールの様子を訊ねた。
ヒールが背中に刺さったことで相当ダメージが入ったらしく、いまだに背中を少し丸めている。
リドルは先ほど自身に受けたアズールの蹴りを根に持っていたようで、「してやった」とでもいうような態度だった。
エディシアは再びピリつきかけた雰囲気に大きな溜め息と共にガックリ肩を落とす。
原因の一旦を担っていることを知ってか知らずか、アズールはそんなエディシアを見やりながら他人事のようなコメントをした。
「………!リドルさん、エディシアさん」
「……いたかい」
「10時の方向、ケージの裏に逃げ込みました」
「出てきたところを仕留める。合図は任せたよ」
『こちらもいつでもOKです』
「わかりました」
「「『…………』」」
「今です!」
再び慎重に進行していると、アズールの足が止まった。
先導役が止まることでおのずと後ろに控えている2人も止まる。
3人は相手に悟られないよう静かにマジカルペンを構え、ファントムの体勢が若干崩れた瞬間を見逃さなかったアズールは大きく声をあげた。
「イカ、ナイデ……イッショに、イヨぉ……」
『あ!今の音は……!』
「IDカードです!これでようやく先に進めますね。しかし……最後の言葉が「行かないで」とは」
「ボクたちをずっとこの場所に閉じ込めようとしていたのか?ゾッとするね」
『別のファントムにもせがまれる前に早くここを抜けましょう』
ファントムの消失と共にカラン、と軽い音が室内に響いた。
それは探し求めていた念願のIDカードであり、すぐさまアズールが拾い上げる。
珍しく言葉を話せた種類のファントムは、裏表を感じさせないほどに純粋で、寂しい最期だった。