6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「非常用の照明もついていない……真っ暗だ。今、魔法で明かりを……」
「待ってください」
『?』
室内が暗闇に包まれ何も見えない状況にリドルは明かりをつけようとマジカルペンを構えると、アズールがそれを制止した。
アズールは、この暗闇が故意に作り出されたものではないかと推測していたのだ。
もしそうであればわざわざ居場所を敵に知らせることになる。
この部屋だけ、それも最後の関門で明かりが落とされているという状況に違和感を持っていたようだ。
「敵も手強くなってきた。形勢が不利になるのは避けたい。今ここで明かりをつけるのはやめておきましょう」
「わかった。マニュアルによれば……緊急脱出用キーが、収容所のセキュリティボックスに入っているはずだ。探してみよう」
『わかりました。ではなるべく固まって動いたほうがいいですね』
アズールの提案に納得したリドルとエディシアは頷き、暗闇の中をそのまま進み始めた。
しかし少し歩いたところでリドルはベチョッとゲル状のようなものを踏んでしまい、突然のことと不快感から咄嗟に声が出てしまった。
それにつられたエディシアも小さく飛び跳ねる。
「うわぁ!」
『わ!?』
「シーッ!リドルさん、エディシアさん声をおさえて!」
『すみません。リドル先輩の声についびっくりして……』
「……おや?このあたり、床に何か液体が飛び散っていますね」
「妙にぬるぬるしているんだ。うっかり踏んでしまって転びそうになったよ。これはいったいなんだ?」
『うわ……ほんとうだ』
「そうだ。魔法でマントを大きくして、テントのようにすれば……それっ!」
2人に注意したアズールは、原因となった謎の液体の存在に気付いた。
リドルとアズールが着目する足元に、エディシアも間もなく気付く。
暗闇だが、周囲に湿度を感じるような水気ぽさは感じられない。
その液体の正体を確認するため、リドルは自身を羽織っていたマントに魔法をかけた。
リドルの着用しているマントは遮光性が高く、布の中なら明かりをつけても問題ないと判断したそうだ。
あっという間に数人が入れる程度の大きさになったマントの中へ入るよう持ち主に促されたアズールとエディシアは、おずおずとかがみ中に入る。
リドルが魔法で明かりをつけると、そこに照らされた光景に3人は目を丸くした。
「なっ……!?床にタールのようなものがべったりと……これは、ファントムが纏っているブロット?」
『こんな汚いもの踏みつけたんですか』
「なんて顔でボクを見るんだ、首をはねてしまうよ。そもそもキミたちだって確認のために踏んだだろう」
『犬のフンでないことはわかってるんですが、なんか生理的にというか……』
液体の正体はブロットだった。それは誰もが嫌悪感を抱くような色、粘度、量である。ショッキングともいえるような状況に、エディシアはつい思い切り踏んだリドルを引き気味に見つめた。
自身もちゃっかり踏んでいたにも関わらず信じられないとでもいうかのようなエディシアの目つきに、リドルは小さく怒りを現した。
「2人とも、遊んでいないで見てください。リドルさんの足元に【S.T.Y.X】のスタッフがつけているIDカード用のベルトが落ちています」
「うぇ……べたべただ。カードは……抜き取られてるね。というか、このベルトの持ち主はどこへ?」
「「『……………』」」
リドルとエディシアのやり取りをよそにブロットの範囲を見まわしていたアズールは、足元に広がっているのがブロットだけではないことに気付いた。
リドルの足元に落ちていたベルトは、ぱっと見では気付けないほどにブロットにまみれていた。
カードの抜きとられたブロットまみれの空のベルト、という異常としか言えない様子に静寂が訪れる。
状況からしてファントムがIDカードを持ち去ったと考えてもおかしくはないだろう。
そうなると必然的に、明かりをつけたところを目印に襲うため明かりを落としたという可能性にも現実味を帯びてくる。
「想像よりかなり頭が回るようですね」
『最後の関門なだけあります。IDカードの捜索はどう動きましょうか?』
「この暗闇の中でIDカードを持ったファントムを探すのは無理だ。まずは照明のスイッチを探そう」
「いえ……このまま敵を探しましょう」
「なんだって?」
考えれば考えるほど合点がいってしまう考察に、アズールは気持ちを落ち着かせるかのように眼鏡を上げ直した。
エディシアがこの後のプランを訊ねると、リドルは照明スイッチで室内全体を明るくすることを提案した。
しかしアズールは静かに逆の提案をする。
床のブロットは点々と続いており、それを辿ればおのずと抜き去ったファントムを捕らえられる可能性があった。
そのため暗闇にあえて潜み、不意をつこうというのだ。
「僕は深海育ちで、暗いところには慣れています。すでに目が慣れてきました。ナビゲートはお任せください」
「……わかった。今回はキミを信用しよう」
『では僕は最後尾から周囲をの物音を警戒します。寮長ほどではありませんが夜目も利きますし』
「お願いします。では行きましょう」
危険の多いとされる深海で育ってきたアズールの暗闇を利用した提案には、成功の可能性の高さを感じさせる説得力があった。
少し思案したリドルはアズールの提案に賛成し、それに乗っかる形でエディシアも続き殿(しんがり)に挙手する。
作戦が固まったことでナビゲート役にアズール、主力役のリドル、背後や周囲の索敵役としてエディシアの順に縦一列を形成し、移動を再開した。