6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「〖雷霆の槍〗充電完了。全魔導回路異常なし」
「……………ん、充電が終わったのかい?」
『おはようございます、リドル先輩』
槍の充電を始めてから3時間後、無機質なアナウンスが室内に響いた。
その音でリドルは瞼をゆっくりと開くと、アズールとエディシアのオクタヴィネル2人はすでに覚醒していたらしい。
リドルの寝起きの様子から、熟睡したであろうと感じ取ったアズールはやや呆れ気味に彼の質問に答えた。
「そのようです。というかリドルさん、あなたよくこんなところで眠れますね」
「だって、普段はとっくに眠っている時間だし……携帯食料を食べたら満腹感で眠気が……。キミたち、ずっと起きて見張っていてくれたのかい?」
「タコは生来警戒心が強く、繊細なもので。こんなところではとても眠れません」
『僕は少しだけ睡眠を。ただ環境に耐えられず途中から起きてました』
「そう……おかげでしっかり休憩がとれたよ」
『レオナ先輩の膝を枕にしていましたし、すごいですね…』
「見た目によらず、図太いと言うかなんというか……」
アズールとエディシアの答えを聞いたリドルは、まともな休息をとれたのは自身だけと知り意外に思った。
ファントムがうろつく上に冷たい地べたでなんてリドルだって通常ならお断りだ。しかし嫌でも眠ってしまう条件が揃っていたため仕方が無かったのに、2人からは引き気味な目を向けられてしまった。
若干いい気はしないものの、見張りをしてもらっていたことは事実。
じっくり休息させてもらった分、自分が2人をカバーすればいいと考え、出発を促し腰をあげた。
「〖雷霆の槍〗省エネミーモード。起動時は操縦者による指紋照合、音声認証、または魔力のチャージを行ってください」
「よかった。省エネルギーモードなら、1人でも扱うことができそうだ」
「ならば槍は僕が魔法で運搬しましょう。大きな武器を運ぶのは、下っ端の役目です」
『それこそ下っ端なら僕の方ですが』
「適材適所ですよ。僕は腕力、あなたは聴力でチームをサポートするんです」
雷霆の槍をアズールが受け取ると同時に、「リーダーには前衛に立っていただき、僕たちを守ってもらわなくては」と嫌味を込めた様子でリドルに向けてこぼす。
それを聞いたエディシアは始まったか…と眉間に皺を寄せ、リドルは不思議そうに片方の眉を上げた。
「キミ、やっぱり何か勘違いをしているようだけど……ボクが守っているのは、キミじゃない。”法律”だよ」
「『え?』」
「だってキミはタコの人魚で、変身薬を使って今の姿になっているんだろう?」
「おっしゃるとおりですが……それとルールになんの関係が?」
次はリドルが意味ありげばことを言い始めた。
変身薬は使用に際し、行政の許可と専門家の監督が伴う特別な魔法薬。
そのため処方箋、調剤など取り扱いにも限られた魔法医術士にしか許されていない。
大幅に肉体を変化させることから、変身薬使用中の負傷及び処置は細心の注意が必要であり、専門資格を持たない者による医療行為は、法律で禁止されているとのことだ。
ここまでの説明をリドルは一切噛まずに並べている。
「つまりキミが【タルタロス】で負傷すれば、ボクが法を侵す可能性があるということだ。それは絶対に避けねばならない!よって、キミは怪我すべきではない。以上だ」
『…………今、法を侵すのを避けるためにアズール先輩を守っていると言いました、よね……?』
「たった今そう言っただろう」
「…………………は。は、はは……あははははははははっ!!」
『あっははは!』
最終的に伝えたかったであろうことを口早にリドルが告げると、あたりが静寂に包まれた。
エディシアが恐る恐る沈黙を破り質問したが、変わらず凛とした声でリドルは返す。
再び沈黙が訪れたが、互いに見合ったアズールとエディシアは間もなく吹き出し大笑いした。
「なんで笑うんだい?今の話に笑うべき部分はなにもなかったと思うけれど」
「信じられない。あなた、この状況でずっとそんなことを気にしていたんですか!?アハハハ!本当に変な人だな!エディシアさん、海もそうですが陸には彼のような人物、そうはいないですよね?」
『もちろんですよ、僕も初めてです。ははは!お、おなかいたい……ふふ……!』
「へっ……変だって!?法律を遵守することは、すべての国民に課せられた義務であり……!」
「だったら最初からそうと言ってください。てっきり、僕を弱いもの扱いしているとばかり……」
「はぁ!?最初に「キミが戦えることはわかっている」と言ったじゃないか!なぜ言葉の通りに受け取らないんだい!」
「あんな態度をとられれば、煽られていると解釈されたって文句は言えませんよ。あなたのおかしな”マイルール”なんて、普通は想像がつきません」
「マイルールじゃない!法律だ!!!」
「グルルル……!タノシソウ……イイナァ……」
リドルの態度が自身の勘違いだとわかったアズールは安堵感から笑いが止まらずにいた。
それにつられるように、エディシアも彼らの反応がおもしろくお腹を抱えヒィヒィ言っている。
そんな2人から笑われているうち、リドルの声には徐々に語気が強められてきた。
しかしその3人の空間に別の存在の声が突然飛び込み、エディシアたちは咄嗟に声のした方へと視線を向ける。
「!!この気配……キミたちが大声で笑うから、敵が寄ってきてしまったじゃないか」
「これは失礼。では怪我に細心の注意を払いながら戦うとしましょう。……フフッ」
『ふふ…寮長、その間槍は僕が預かります』
アズールとエディシアの笑い声がかなり響いていたようでファントムが数体這い出てきた。
誤解が解けたことでアズールから先ほどまでの荒々しい態度は消えている。
後衛に控えるエディシアは、それを見ながら雷霆の槍を受け取った。