6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「グオオオオオオ……!!!」
「「『ハァ、ハァ……』」」
雷霆の槍の雷撃を受けたタイタンは地を這うような低い叫び声を上げながら、よろけてタルタロスの穴へと落下していった。
突如として訪れた静寂にリドル、アズール、エディシアの3人は固まる。
そしてタイタンが姿を消して数秒ほどしてから互いに顔を見合わせ、「勝っ………た?」とポカンとしながら状況の確認をした。
「……った……やったぁ!!!すごいよアズール!エディシア!ボクたち、原初のファントムに勝ったんだ!」
「はははっ!やってやりましたね、リドルさん!エディシアさん!」
『すごいですよ!ははは!』
「「『あはははは!』」」
「〖雷霆の槍〗のバッテリー残量が低下しています。残り10%です。充電ステーションに設置してください」
「「『……っは』」」
ようやく状況を理解し始めた3人は、達成感から無邪気に笑い合いハイタッチを交わす。
このまま肩まで組み合うのではないかという勢いの中、無機質なアナウンスが雷霆の槍から流れたことで我に返り固まった。
気まずさが沸き上がったことで互いにそっぽを向き、リドルはわざとらしく咳き込み、アズールは眼鏡をクイと上げ、エディシアは上向きでゆらゆらさせていた尻尾を下げるというそれぞれの反応を見せる。
「ゴホン。こ、この槍は、1度でエネルギーを使い切ってしまうんだね」
「ンンッ。あれだけ協力な一撃を放つんですから、当然でしょう」
『そ…それにしたって燃費が悪すぎます』
「この先でも強力なファントムと戦うことになるかもしれない。ここで充電していく他ないね」
どれだけ不満を感じても充電が必要なのは事実。
エディシアが充電完了までの時間を投げかけると、リドルが雷霆の槍に表示されているメモリを確認した。
しかしその数字に目をギョッとさせる。
「充電が終わるまで……3時間!?なんて悠長な!ボクらは先を急ぐというのに」
「機械を急かしてもどうしようもありません。非常用の保存食と缶詰が置かれていますし……決して美味しいとは言えませんが、食事がてら1度ここで休憩をとりましょう」
『では使えそうな布など探してきます』
あんな頼りになりすぎる強烈な攻撃力を見せられては、3時間といえど充電しないわけにはいかないだろう。
奥に進むほどファントムの危険度が増していくことからタイタンのようなレベルに遭遇するとも限らない。
今の彼らにとって使える武器があるに越したことはなかった。
「……リドルさんはぐっすりですね」
『そうですね。アズール先輩も何度も魔法で戦闘をしていますが、眠らなくて大丈夫ですか?』
「結構です。それにこうして栄養を摂ってゆっくりしているだけでも十分です。エディシアさんのブロット具合はどうですか。あまり食事も進んでいないようでしたが」
『先輩たちのおかげでそこまでは。ただ身体的な疲労感はけっこう溜まってますね……』
食事を摂ってから少しすると、エディシアの隣でリドルの寝息が静かになった格納庫内で小さく音を立て始めていた。
その様子を見たエディシアが風邪を引かれては困るとリドルの肩から落ちていた布をかけ直す。
疲労からか好みの味では無かったからか、エディシアの食欲の無さに懸念を抱いたアズールは睡眠を促すことにした。
しかしエディシアは『こんな硬くて冷たい床に毛布も無しだなんて』と嫌そうに目を細め、小さな拒否を示した。
「ハァ……では、これでも羽織りなさい」
『………正気ですか?あのアズール先輩が……?』
「なんて顔で見るんですか。ちなみに床に敷くのは厳禁ですよ」
全く、とアズールは溜め息をつくと寮服のコートを脱いでエディシアに差し出した。
アズールの部下にあたるエディシアはその状況に目を見開き、目の前のコートと自身の寮長を交互に見て訊ねた。
エディシアなりにアズールも相当疲れているのではと懸念したことから出た言葉だが、当の本人は心外そうな反応を見せる。
「人手不足ですし、あなたのユニーク魔法を使用してもらう可能性があるかもしれませんからね」
『……なんだか、ウィンターホリデーでのことを思い出します』
「…?ああ、そういえばそんなこともありましたねぇ。あまりにもあなたが哀れだったので、慈悲の精神が働いてしまいました」
アズールの続けて出た言葉に、コートを受け取ったエディシアはオーバーブロットしたジャミルによって時空の果てまで飛ばされた時のことを思い出した。
あの時もアズールは言い訳がましく言葉を連ねながら、エディシアに寮服のコートを羽織らせていた。
たしか以前も人手が足りないと言っていたなと思ったエディシアはつい笑みをこぼす。
しかし同じように思い返していたアズールは、懐かしむように言っているものの言葉には皮肉が含んでおり、それを聞いたエディシアは密かに眉間に皺を寄せた。
『その節はありがとうございました。ではこのコートの対価に、あの時の泣き虫タコさんのようにブロットを取り除いて差し上げましょうか』
「ふむ……それもそうですね」
『え』
エディシアも仕返しとばかりに皮肉を込めて伝えると、アズールはすんなり受け入れてしまった。
想定外の返答をされたことで面食らったエディシアは固まる。
アズールはアズールで怪訝そうにエディシアを見た。
自身としては確実に回復できる手段を対価として提示されたのだからメリットだと感じたのだ。
「なんです。提案したからには時間は問題ないのでしょう?」
『ま、まぁ……テストの時も、このくらいの淀みで30分程度あれば目が覚めましたけど……』
アズールから魔法石を見せられたエディシアは、おおよその完了時間を尻すぼみになりながらも答えた。
冗談半分とはいえ自ら提案してしまった以上、やっぱりできません、なんて言える状況でもなくエディシアは仕方なしにアズールの肩に触れ詠唱を始めた。
エディシアのユニーク魔法はどんな病気や傷でも治せるものの、対象に触れながら詠唱しないと発動できないなど様々な制限がある。
『〈貴方が消えれば私は悲しみ、私が消えれば貴方は喜ぶ〉……【眠りの国】』
「……ありがとうございます。おかげさまで肩も軽くなった気がします」
『まさか本気に捉えられるとは……』
エディシアが魔法を発動すると、突如としてティーカップが現れミルクが注がれた。
そのミルクにはアズールの疲労とブロットが込められている。
軽いものなら眠気程度に落ち着くが、今回はそうはいかないだろう。
一方のアズール本人は風呂上りかのようなサッパリした気分に満ちていた。
ミルクによって眠るエディシアの体は、あくまでもミルクの中の成分を分解するために活動が制限されるだけで、本当に眠っているわけではない。
つまり30分寝たところで脳や体の休息になるわけではないのだ。
分解が終わったらしっかり休もう…と自身が発した冗談を恨めしながらティーカップを空にし、間もなくやって来る抗えない眠気に備えて羽織っていたコートが落ちないように深く身を包んだ。
コートからはアズールが好んでよく使っているコロンの香りがふわりとエディシアの鼻腔をくすぐった。