6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「はぁ、なんだか暑い。オルトに腹を立てたせいで、頭がのぼせているのかな」
「奇遇ですね、リドルさん。僕もなんだか顔が熱くて」
『僕もです……さっきまであんなに冷えていたのに』
「暑すぎて、まわりの景色まで陽炎のようにゆがんで……ん!?待て、さすがにおかしい」
次の場所へ歩みを進めている最中でリドル、アズール、エディシアの3人は突然の異常な暑さにみまわれた。
陽炎が発生していることを目にしたリドルはそこでただの暑さではないことに気付く。
陽炎とは、温められた大気に密度のばらつきが生じ、光の屈折率が変化することで起きるシュリーレン現象のひとつとされている。
「つまり、熱くなっているのはボクたちじゃない。大気のほうだ!」
ズシン!!
「うわっ!?海底火山の噴火か!?」
『それでこの暑さと揺れ!?……いや、2人とも耳を澄ましてください』
「……なにか巨大なものが、近づいてくる!」
「「『!!!!』」」
リドルが今の状況について言い放った直後、鈍く大きな音が響いた。
慌てて3人は身を低く構え音がした階下に注目する。
エディシアが今の衝撃音とは別の音を拾い2人に伝えた。それはズシン、ズシンと最初の衝撃音ほどではないが鈍く響き渡っている。
リドルが確信するとヌッと巨大な溶岩にまみれた怪物が3人の前に現れた。
「おそらくあれが原初のファントム……〖ファントム・タイタンズ・マグマ〗」
「ドコダアアア!!!ジュピタアアア!!ガアアアア!!!」
『っ、ジュピター……風貌からも間違いはないみたいですね。あぁ鼓膜がビリビリする……』
「僕たちの魔法では歯が立たない。〖雷霆の槍〗はどこに……!?」
「格納庫はもう近いはずだ!走れ、アズール!エディシア!」
原初のファントムはけたたましい叫び声を上げ、その場の3人は思わず耳を塞いだ。
今までのファントムたちとは比べ物にならないほどの瘴気から、まともにやり合っては全滅してしまうと察し格納庫へと走り出す。
タイタンはもちろんエディシアたちを追いかけたが、幸い動きは鈍いようで無事3人は目的地へと駆け込んだ。
「熱ッ!タイタンが身にまとったマグマでドアが熱されて……!」
「このままではドアが熱で溶かされてしまう。僕が氷でバリケードを作ります!リドルさんとエディシアさんは〖雷霆の槍〗を探してきてください!」
「わかった、すぐに戻る!」
『寮長、よろしくお願いします』
1人も怪我なく格納庫には入れたが、息が整うのを待てるほどの猶予はないらしい。
アズールは杖を構え、リドルとエディシアは雷霆の槍を探すため二手に分かれ再度走り出した。
リドルとエディシアは雷霆の槍がどのような大きさ、色、保管方法になっているのか不明なため隅々まで注意を巡らせる。
あってほしくないのは魔法や組み立て式の関係から小型化され、視認しづらい保管方法がされているパターンだ。
もし組み立て式であれば、すぐそばにタイタンが迫っているにも関わらず準備に時間を要してしまう。
エディシアがそんな最悪なパターンを想定しながら見渡していると、突如いかにもな巨大な物体が目に入った。
『リ、リドル先輩!来てください!これ……!』
「巨大な魔法石の槍……これが〖雷霆の槍〗!?なんて大きさだ……起動前なのに、息苦しくなるほどの魔力を感じる。ボクに扱えるのか?」
「2人とも、早く!ドアの向こうから伝わる熱で、作るそばからバリケードが溶かされていきます!」
『扱えるのはこの中で…いえ、学園内でもリドル先輩です!』
「わ、わかった。躊躇っている時間もないね。起動する!」
呼ばれたリドルがエディシアの元に駆け寄ると、その物体の存在感に一瞬たじろいだ。
それは誰もが雷霆の槍だと一目で認識できるほどに神々しく、凄まじい魔力を感じさせていたのだ。
見つけずらかったり組み立てが必要だったりといった心配がいらなかったのは幸いではある。
しかし呆けている暇はない。タイタンの侵入を抑えていたアズールから限界が近いことを知らせる声が飛んできた。
あまりの威圧感にリドルは躊躇するが、エディシアはリドルの肩を掴み目を合わせながらまっすぐ伝えた。
その眼差しにリドルは一瞬瞳を揺らし、覚悟を決めると力強く頷き雷霆の槍に向き直る。
「コード:ティタノマキア。緊急レベルAの突発重大案発生と認定。全魔導回路を解放。充電率100%。〖雷霆の槍〗起動します」
『っ……!』
「ぐっ、体が吹き飛ばされそうだ……っ!」
「操縦者の指紋登録を行います。パネルに手を触れてください」
「……いくぞ!」
『はい!』
リドルが雷霆の槍を起動すると、先ほどよりもさらに強い魔力が槍から放たれた。
その圧力にリドルとエディシアの肌はビリリとひりつく。
雷霆の槍から流れるアナウンスの指示通りにリドルは手袋を外し、自身の手をパネルに触れた。
手を触れてから間もなく、操縦者の登録が完了し安全装置のロックが外れるも、すぐに問題が生じることとなる。
「槍から放たれる魔力が暴れて……このっ!言うことを、きけ!はぁ、はぁっ……なんて重さとパワーなんだ。とてもボクだけじゃ扱いきれないっ……!エディシア、頼む!」
『わかりました。…………っ!?いやいや何ですかこれ、びくともしないっ……僕、意味あります!?』
「正直、まっっったく意味がない!!」
『悔しいですがそうですよね……アズール先輩を呼びましょう。僕は照準を安定させるため先端に注力します!』
「それが良さそうだ…」
照準サポートモードとして起動されたようだがあまりにも槍自身が扱いにくく、魔力が豊富とはいえ小柄なリドル1人では困難を極めた。
エディシアも加勢するもたかが知れており、どんなに踏ん張るも状況が変わる様子が無い。
アズールの腕力が凄まじいことを記憶していたエディシアは、すぐさま適役に任せるべきだとリドルに提案した。
「アズールッ……力を、貸してくれ!」
『僕ではびくともしないんです』
「ほう?いいでしょう。腕力には自信が……ぐっ!?お、重い!一体どんな人が使う想定で造られたんですか、この槍は!?」
『寮長でもこんな反応なんて相当ですね……』
「ええ。あなたたち2人では下敷きになっていたでしょう」
2人から応援を呼ばれたアズールは持ち場を離れ槍を支える。
しかし想定外の重さに自身のバランスを崩しかけた。
それでもしっかりと持ち上がり、先端の照準をエディシアもサポートしたことで槍の暴れ具合がかなり緩和されたようだ。
これで制御可能であることが確認取れたと同時に扉が勢いよく破壊されてしまった。
共に格納庫内の温度が急上昇する。
「ドアが破られた!タイタンが入ってくる!」
「アズール、そのまま槍を支えていてくれ。エディシアはその角度のまま維持を!」
『はい!』
「任せてください!」
リドルの指示でアズールとエディシアは大きく頷き、2人の反応を確認したリドルは雷霆の槍に意識を集中する。
すると、凄まじい魔力を放っていた槍から一瞬魔力の気配が小さくなった。
その気配は槍の内部、芯から先端にかけて濃縮されたのだ。
「くらえええ!」
リドルの咆哮と共に強烈な一撃が槍から放たれる。
それはまさしく雷霆のようだった。