1章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「………アイツ以外他に人はいないな?あのチビ猫には厳しい躾が必要だな…骨格変わるまであの小綺麗な顔を殴って後悔させてやる」
「手癖も足癖も悪いっすからね。あーいってぇ……」
エディシアは植物園に駆け込み茂みの中に潜る。
そして見つからないよう息を潜めながら、そっと震える手で自身のスマホを取り出した。
例のライオンは「何かあったとき、昼寝スポットに俺がいなければ連絡しろ」と言っていた。
あの時は見逃されたが本当に信じていいのか、油断させるための甘言ではないのか、とエディシアはスマホ画面に映る彼の名前を凝視する。
2人から発せられる声や物音が所々に移動し探しているのがわかる。
徐々にエディシアの方へと近づいてきた。それと比例するようにエディシアの鼓動も脈が速くなっていくのを感じる。
「ほら早く出てきてくれよ猫ちゃーん」
「かくれんぼより楽しい遊び思いついたんだぜ」
「ほぉ?それはどんな遊びだ?」
『…………』
2人の生徒が愚痴をこぼしながらエディシアを呼んでいると、不意に別の声が飛んできた。
エディシアは聞き覚えのある低い声にピク、と自身の耳が動くと同時に目を見開く。
「げっ……レオナ寮長……!?」
「俺の昼寝を邪魔する価値があるほどの楽しい遊びなんだろ?さぞかし有意義なんだろうなァ?」
「邪魔してすみません寮長!えっ、と……実は野生の猫がいたんで仲良くなろうとしてたんですけど、植物園の方に入って行ったので……」
「あ?ここに?てめぇらが入ってくるまでは余計な匂いも音もしていないが。ったく、猫くらいでキャンキャン騒ぐなよ」
「そ、そうっすか……なら気のせいだったみたいです、失礼しました!」
「失礼しましたー!」
『…………』
2人の生徒とレオナのやりとりを聞いて本当に寮長だったのだとエディシアは確信した。証拠が得られていない分どこか半信半疑に思っていたのだ。
バタバタと2人分の足音が慌ただしく響き、扉の閉まる音を最後に静寂が訪れた。
「……もういいぞ」
『………』
「………ハァ」
レオナはエディシアが植物園内のそう遠くないところにいるのはお見通しだったようだが、声をかけるも反応が無い。
耐え兼ねたのかレオナは隠れた場所を聞かされていないのにまっすぐエディシアのいる箇所まで歩き出す。
音や魔力などから把握しているのだろう。さっきの生徒たちとは違いあっさりと茂みをかき分け見つけてしまった。
「立てるか」
『………』
レオナが膝をつきエディシアに手を差し伸べた。
さっきの生徒たちのような、いきなり力任せに引っ張ったり急かす事も無くただ待っている。現在彼に悪意がないことは誰にでもわかった。
エディシアはその様子に躊躇しつつも震えが治まらない手で取ると、立ち上がった事で乱されたネクタイや服がレオナの目に入り、レオナが「お前…」と眉間に皺を寄せた。
パッと顔を上げたエディシアはいつもの落ち着いた笑顔を作り言葉を連ねはじめた。
『はは、どうけしかけようか考えてる間に助けられちゃいましたね』
「………他に追い回してたのはいねぇか」
『はい、あの2人だけです。なんか怒らせちゃったらしくて気づいたら大喧嘩ですよ』
「おい」
『またここで昼寝していたとは思わなくて……巻き込んじゃってすみません』
「おい、今は笑わなくていい」
『何、言ってるんですか……すぐ出ていくんで昼寝なり寮なりへ戻ってくださいよ』
「……お前が落ち着いてからそうする。よく頑張った。とりあえずこっち来て座ってろ」
エディシアは腕を引かれた先で腰を落とすよう誘導され、ライオンは横にドカッと座った。
少しスマホを触ってからエディシアの方へ顔だけ向ける。
「……他に怪我はしていないか」
『………大丈夫です』
「そうか。治癒魔法で血止めるから少しツラ貸せ。その間に服を整えてろ」
『…手元見ないとやりづらいんですけど』
「違っていればあとで直せばいい。…悪いが触るぞ。顔以外は触れないから安心しろ」
エディシアはレオナに傷の状態を確認されている間に言われた通り服を直していく。
後でもいいのではと思うくらいに手元を見れない状態でのボタンのかけ直しは位置が掴みづらい。
どうにか掛け違えのないようにしたいと意識を集中する。それはもう目の前のサバナクロー寮長が自身を触っていることも忘れるくらい。
そのときにふと、レオナがなぜ今直せと言っていたのか察したような気がした。
『……治療なんてあの時の話には上がっていなかったです。何を要求するつもりですか』
「その減らず口は一生治らねぇのか?少し眩しくなるぞ」
レオナの指先から暖かい光が傷を包みじんわりと熱を帯び、やがて頬や口元の痛みがエディシアから消えた。
エディシアは光がおさまったことで目を開けると、レオナの緑色の瞳と視線がぶつかった。