6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「下から吹き上がってくる高濃度のブロットの影響で、飛行術も使えないなんて。最下層にある【冥府】にたどり着くまで、どれほど階段を下ればいいやら……」
『まともな飛行術ができるのは、リドル先輩くらいでしょうけどね……僕はまだ自由自在ってほど慣れてませんし…寮長は…ほら、まぁ……』
チームごとに解散し、第3タワー。
長く大きな螺旋状の階段を降りながら、アズールは暗い底を覗き込んだ。
自身の寮長のコメントに対し、[#da=1#]は冷える体をさすりながら茶々を入れる。
寒がってはいるが冗談を言う余裕はあるらしい。
「何が『ほら、まぁ』ですか。全く………吐く息が白くなっている……気温もかなり低いようだ。僕は慣れっこですが、リドルさんとエディシアさんは低体温症にならないようお気を付けて」
『お気遣いありがとうございます……』
「先が思いやられますね……ウィンターホリデーのときみたいに、まともに歩けないなんてことにならないでくださいよ」
『川に飛び込むようなことがなければ頑張れます……それよりいいんですか?徐々に離れてますけど…』
「え?…あれ、リドルさん?えっ、どこに……あっ!?かなり先まで階段を降りて行ってる!?走りますよ[#da=1#]さん!」
人数を割いたことで仲間割れ発生の確率は抑えられたが、1年生であろうと今は貴重な戦力だ。欠員は避けたい。
アズールの脳裏に一時戦力外となったときの[#da=1#]の姿が浮かび、溜め息をついた。
そんなことを考えていると、[#da=1#]の一言で先頭を歩いていたリドルとかなり距離が空いていることに気付き、慌ててリドルの元へと駆け寄った。
「ちょっと!1人で勝手に進まないでください!」
「ボクが1人で勝手に進んだ、だって?キミたちが勝手に遅れたの間違いだろう。観光に来たわけじゃないんだ。のんびりおしゃべりしている時間はないよ」
「僕は雑談をしていたわけじゃありません。まずは状況把握をするのが定跡でしょう」
「先んずれば人を制す、後るなれば人の制する所を為る。他人よりも先に行動を起こせば、有利な立場に立てる……定跡だろう?」
『せっかく魔法の相性で決まったのに、性格の相性はダメダメだな……』
2人とも成績優秀ではあるが、盾のアズール、矛のリドルと性質は真逆であり、その凹凸は綺麗にはまることはなかったようだ。
それぞれの言い分に間違いは無いが全く受け入れる様子が感じられない。
結局アズールが「このチームのリーダーはリドルさんだから」と先に折れたが、最後まで嫌味を言っていたので納得してはいないようだ。
[#da=1#]は2人のやりとりを聞きながらさっそくこれからに不安を募らせた。
「スタッフから貰い受けたマップによれば、入ってすぐに下に降りられるエレベーターが……ああ、あった。これだね」
「リドルさん待ってください。もしなにか罠が仕掛けられていたら……!」
カチッ!
「「『……………』」」
「何も起こらないな」
『何も起こらないですね』
「【S.T.Y.X】の設備は今、すべてオルトさんのコントロール下にある。エレベーターも使えなくて当然です」
リドルがマップを確認し、最初の目的地のエレベーターに到着する。
アズールの制止も聞かず真っ先にエレベーターのボタンを押すも、特に何かが起きるわけではなかった。
どうにか降りていくしかないか……と3人が考えようとすると、反応のなかったエレベーターから機械音が鳴り、瞬時にエレベーター内へ視線が集まる。
「エレベーターのドアが開いた」
「フッ。こんなあからさまな罠に自ら飛び込む馬鹿はいないでしょう」
「自ら敵を内部を招き入れようとするなんて、いい度胸がおありだね。いいだろう。その勝負、受けて立つ!」
「ちょっ……僕の話聞いてました!?どう考えても罠ですってば!」
「そんなことは承知のうえさ。もたもたしていると置いていってしまうよ」
『…実際進むならこの先しかなさそうですし、行くしかないかと……』
「ああもうっ!」
エレベーター内に入ることが可能となり、リドルが迷いなく中へと進む。
それをアズールがまた制止しようとしたが、聞く気のないリーダーと周囲の状況を見渡した[#da=1#]は諦めるよう進言した。
仕方なくついていくことにしたアズールの声色には、徐々に焦りや苛立ちが含まれてきている。
「やあ!みなさん。呪われた収容所【タルタロス】の第3タワーへようこそ!」
「言わんこっちゃない。だから罠だって言ったのに……」
「だとしてもこれが最短ルートだ」
「全滅への最短ルートにならないといいんですがね!」
『はぁ………』
「あれれー?冒険に出る前からもう仲間割れ?」
『ずっとこんな感じだよ』
「ふふ、[#da=1#]さんは苦労していそうだね。でもみんな、そんなことでこの先に待ち受ける試練の数々を乗り越えていけるのかなぁ?」
3人がエレベーター内に入ると、目の前にオルトが映像となって現れた。
険悪なリドルとアズール、そんな上級生に呆れて溜め息をつく[#da=1#]の様子から良いスタートが切れていないと悟ったオルトは、含みのある言い方で3人の意識を自身へと向ける。
冒険には試練が付き物だと言って見せたのは、先ほど何度も見聞きしたゲーム作品だった。
「これは……リドルさんは我を忘れて挑んでいた〖冥界伝説〗じゃありませんか」
『どうしてここでゲームの話が出るの?』
「今から【冥府】下りに挑む君たちには、ぴったりのチョイスでしょ?」
「まさか、このゲームが試練だっていうのかい?」
「そうだよ。あ……リドル・ローズハートさんにはファントムと戦うよりも難易度が高かったかな?」
「なんだって!?ゲームなんかクリアしなくても、ボクが本気を出せば魔法で扉をこじ開けて……」
『え!?それはやめましょうリドル先輩!』
「待ってくださいリドルさん!」
オルトの提示した試練とは、船頭を操作し死者の魂を集めてポイントを競うゲーム作品〖冥界伝説〗のプレイだった。
はじめはリドルがボタンの位置や操作をよく理解できておらず、一番簡単なステージにも関わらずあっという間にゲームオーバーとなっていた。
そんなゲームをする経験のなかったリドルはオルトに煽られ、エレベーターの扉に手をかけようとする。
それにはさすがに2人がほぼ同時に慌てて制止に入った。
この密室でリドルが本気で魔法を使えばそれこそ全滅になってしまう、とアズールがゲームの操作に立候補しどうにか事なきを得た。