6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ま、ま、待つんだ君たち!」
「まだなにか御用?」
ヴィルを先頭に管制室から出ようとするとスタッフが声をかけた。
そのスタッフは何やら色々な物を抱えており、「せめて、これを持っていってほしい」と抱えているそれらをヴィルに渡した。
「これは……IDカードと本部の地図に、トランシーバー、それから……キーホルダーが3つ?」
「現在、館内の通信デバイスは使用不可能。だがインターネットや中継機を必要としないアナログ無線のトランシーバーであれば、遮蔽物が少ない場所でなら通信が可能なはず。そして君がキーホルダーと言ったものは、起動キーだ。対ファントム用決戦アームズのね」
「対ファントム用決戦アームズ?」
『なんだかすごそうなのが出てきましたね…』
タルタロスは3本のタワーからなる巨大地下収容施設で、最下層に近いほど危険なファントムが収容されているそうだ。
特に危険と言われているのが、最下層である第12層に収容された3体の〖タイタンズ〗と呼ばれる、〖神々の時代〗に封じたとされる〖原初のファントム〗らしい。
神々の時代や原初という、桁違いと思わせるワードたちに全員が目を見開いた。
スタッフは構わず、各タワーの6層に格納庫があること、そこにジュピター家の始祖が〖タイタンズ〗を封じた際に用いられたとされる、〖雷霆の槍〗が1本ずつ安置されていることを説明した。そこでその起動キーの出番となるということらしい。
「いかに君たちが優秀な魔法士であろうと、〖タイタンズ〗に特別な武器なしでは太刀打ちできない。起動キーを差し込めば、使用法についてはナビシステムがサポートしてくれる。学生である君たちにこれを託すしかない、無力な我々を許して欲しい…………」
「私たちがタルタロスに向かうことに、あなたたちが責任を感じる必要はない。どうやらオルトを焚き付けてしまったのは、アタシみたいだしね。〖雷霆の槍〗、ありがたく使わせてもらうわ」
「使ったら、必ずチャージするのを忘れないでくれ。我々もできることに手を尽くす。……どうか無事で」
第1タワーには岩のファントム〖タイタンズ・アース〗、第2タワーには氷のファントム〖タイタンズ・クリスタル〗、第3タワーには炎のファントム〖タイタンズ・マグマ〗がそれぞれ封印されている、神々の時代に暴れていた大物だ。
それに対抗しうる強力な〖雷霆の槍〗はもちろん気軽に使えるものではなく、一度使うと再充填までに時間がかかってしまう。
しかも非常用電源に切り替わっているため再充填できる場所が限られているというのだから、扱いには要注意と言えるだろう。
「さて……【S.T.Y.X】スタッフの話によれば、【タルタロス】を形成するタワーは3つ。時間もないし、全滅のリスクを避けるためにも3チームに分かれて攻略するべきと考えるわ」
『仲間内での喧嘩もありえますしね』
「それに、全部のルートを通ってみないとグリムクンも見つけられないかもしれないし……」
「そうね。じゃ、チーム分けについてだけど……3年生で寮長であるアタシとレオナは、先導役として別のルートに向かうのが妥当ね。アタシが第1タワー、レオナが第2タワー。残る第3タワーは……」
「第3タワーの先導は、ボクがつとめます。寮長歴でいえば、レオナ先輩の次にボクが長いので」
管制室を出たエディシアたちはこれからのことについて話し始めた。
第1タワーはヴィル、第2タワーはレオナと自動的に決まり、第3タワーの先導にはリドルが立候補した。
同じ学年のアズールは座学も実技も自分よりずっと成績優秀だから、と寮長歴以外の面でも適任だと賛成する。
そしてメンバーをどう振り分けるのかという話になり、同じ寮だからとルーク、エペルはヴィルについていくこととなった。
共に過ごした時間が長いぶん、ユウのフォローもしやすいということからヴィルのチームは合計4人となる。
「残るはアズールとジャミルとエディシアだけど……」
「ちょうど精密検査で魔法の性能や性質がわかったことですし、魔法の相性の良いリーダーとチームを組むべきかと。というわけで、僕とエディシアさんはリドルさんと共に第3タワーへ向かいます。レオナさんのユニーク魔法で生じる”乾き”は人魚が最も苦手とするものですから」
『僕もですか?』
「監督責任もありますが、戦いはコンビネーションだとルークさんも言っていたでしょう。むしろなぜ聞くんです?」
『いえ、人魚は寮長だけなのでつい』
「なら俺はレオナ先輩と第2タワーだな。……よろしくお願いします」
「…それじゃ、さっさと出発しようぜ」
『(さすがに無理だよなぁ)』
アズールがエディシアも連れてリドルにつくことを発言したことで、自動的にメンバーが決まった。
オクタヴィネルのモットーは自己責任だ。それである程度自由に動ける可能性を[#da=1#]は考えていたが、やはりそういうわけにもいかない。
この状況で同じ寮の1年生を監視下に置くのはごく自然な流れだろう。
エディシアは輸送機内でのレオナとの約束事を思い返し、これで逆に変な空気になってしまうのもということで大人しく従った。
「最初に【冥府】の門にたどり着いたヤツが、誰にも邪魔されずカイワレ大根をボコれる権利を得るってわけだ。実に楽しみじゃねぇか」
「イデアに一発くらわせるのをモチベーションにするのは悪くないアイデアね」
「……ここから先は、訓練ではありません。全員気を引き締めていきましょう」
レオナの発言から自然とどのチームが最初にイデアを殴れるか、というナイトレイブンカレッジらしい目的に切り替わる。
本来ならこの後ゆっくりして翌日には学園へ帰れたのが、今ではこんなことになっているのだからそのくらいの姿勢でないとやってられないだろう。
しかしリドルが真剣に取り組むよう伝えたところに、ルークがとんでもないことを提案した。
「そうだ!離れ離れになってしまう前に、みんなで円陣を組もうじゃないか」
「はァ?」
「なぜそんなことをする必要が?……うわっ!ちょ、ルーク先輩!引っ張らないでください!」
『ルーク先輩、力つよ……』
「さあさあ、みんな、隣の人と肩を組んで!」
ルークの提案に一番円陣と縁遠そうなレオナが最初に反応した。
続いてリドルも訊ねたが、文化部とは思えないほどの剛腕には勝てずグイグイ引っ張られ、あっけなく円陣を構成する最初のパーツとなってしまった。
ルークは他のメンバーの反応を全く意に介さず明るく声をかける。
「試合の前に気合いを入れるヤツですね!おっしゃ!やりましょう!」
「ウチの学園では、運動部すら試合前に円陣を組む習慣はないように思うが……」
『見たことも聞いたこともないですね……』
「僕こういう体育会系のノリ、苦手なんですよねぇ」
「一致団結って感じで僕は嫌いじゃないですよ」
「チッ、なんで俺がこんなこと……」
「フッ。まあ、いいじゃない。世界をかけて勝負に挑む機会なんか、一生のうちに何度もないわ」
『そうですね。やりましょう』
ポムフィーレ組とユウは案外やる気で、エペルは握りこぶしまで作っている。
憧れのヴィルが前向きな様子からエディシアも賛成にまわり多数派になったことで、なかば強引に残りのメンバーを円陣に組み込ませた。
エディシアの両隣には同じ学年のユウとエペルが並んでいる。
「「「『……………』」」」
「……と、いうわけで円陣を組んではみたが……」
「このあとどうするんですか?」
「ボクは円陣のルールについては詳しくないけれど、誰かが号令をかけ、その後解散するのが一般的なはずだ」
『丁寧な概要説明をありがとうございます』
「おい、やるならさっさとしろ。このお寒い状況で、風邪をひいちまいそうだ」
「では、ユウくんに掛け声をお願いしようか」
「えっ?」
全員で肩を組み、円になったことで静まり返った。
このメンバーの多くは円陣をするようなタイプでもないので誰もが読めていたことではある。
掛け声の担当にユウが指名されたことで、3年生の誰かだろうと油断していたユウはポカンとした。
「いいわね。このままじゃ誰が何を言うかだけで揉め始めそう」
「それもそうだけど…」
「気合入れるやつを頼むぜ」
『腹から声出してよ』
「はぁ…わかりました。……必ず全員で学園に帰りましょう!ナイトレイブン———ファイッ!」
「「「「『おーーーーー!!!!!』」」」」
どの寮も歴史があり、それにより寮生のプライドが高い者も多い。
しかしオンボロ寮はそういった寮どうしの確執は無く、こういうときにはちょうどいい立場ではあったのだ。
そういうわけでユウ本人を置いて話がトントン拍子で進み、諦めたユウは思い切り声をあげた。
無機質な建物内に各々の掛け声が響きわたる。
『………あ、エペル』
「どうしたの?エディシアクン」
『さっきは間一髪のところ助けてくれてありがとう。エペルのユニーク魔法だよね?すごいじゃん』
「ありがとう!まだ発現したばかりだから精度は高くないんだけど……それでも助けになれてよかったよ」
円陣で声出しを済ませたところで、解散する前にエペルはエディシアに呼び止められた。
さきほどパワードアーマーに襲われかけた際の礼ができていなかったという内容についてだった。
エディシアは平均的な身長のエースやデュースより体格が劣る。しかしエペルはそんなエディシアよりもさらに小柄だった。
零れ落ちそうなほど大きく潤んだ瞳、ふわふわと柔らかそうな髪——。体格だけでなく1つ1つのパーツが愛らしさに溢れているが、本人は男らしさに憧れていた。
しかしいっとき自身の見た目がコンプレックスだったが、今ではそれを受け入れ強みにしている。
『エペルとポムフィオーレ寮らしい、綺麗で強い魔法だね。これから頑張ってもらわないと』
「エディシアクンのユニーク魔法とは少し違ったサポート系になるね。もっと使いこなせるように頑張るよ!同じチームじゃないのが残念だけど」
『そうだね。ユウや先輩たちを守るんだよ』
「もちろん!」
みんなを守れる力が欲しいと強く思っていると力が湧き、気付いたらユニーク魔法を使えるようになっていたとのことらしい。
体を張って守れる男らしい筋肉はまだ足りないが、愛らしさと同じように別角度の強さで守れる力を手に入れたというのは逆境でも諦めないエペルらしさがある。
互いに激励しているところで、それぞれの寮長から「この場に置いていく」と急かされたため足早に解散となった。