6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ORTHO……ヤツの演算能力は、我々の領域を遥かに凌駕している……もはや、我々に打つ手はないのか?」
「そんなにあっさり諦めてもらっちゃ困るわ」
管制室では、スタッフたちがてんやわんやとしていた。
次々と流れる英数字、何度も鳴るエラー音、駆け回るスタッフの悲鳴にも似た声。素人でも分かるくらいには地獄絵図と化している。
その中で立ち尽くすスタッフの1人に、ちょうど到着したヴィルが声をかけた。
隔離棟に収容されているはずがこれだけゾロゾロと、しかも装備まで身につけているのだから、慌ただしくしていたスタッフたちはさらに騒然となる。
「道案内ご苦労。もういいぞ」
「はい……………んっ!?なっ、なんで俺はここにいるんだ!?脱出用ターミナルに向かってたはすじゃ!?」
「被検体Dのユニーク魔法で、所員を操ったのか!」
「今はそんなことはどうだっていい。所長代理サマはどこだ?」
「イデア様は………」
ジャミルが魔法を解除したことで、案内していたスタッフは正気を取り戻したようだ。
レオナは、イデアから状況の説明をしてもらうという、本来の目的のために所在を尋ねた。
それを聞いたスタッフたちは突然黙り込む。直前まであんなに慌てていたのだ。何かあったのだろう。
スタッフの1人が重い口を開きかけたところで、ここにはいない人物の声が室内に響いた。
「兄さんなら、僕と一緒にいるよ」
「この声は……オルトさん!?」
「さすがはSSR〖前代未聞の問題児〗。隔離棟のドアは、内側から開かない仕様のはずだけど……」
「ああ……言われてみれば確かに建て付けは悪かった気がするけど、開かないってほどじゃなかったわ。それで?これはどういう状況?ボスにご説明願いたいところね。まずアンタたち、今どこにいるの?」
「ごめんね。兄さんは今、手が離せないんだ。だから、僕からお話させてもらうよ」
ヴィルの質問に、兄は今手が離せない状況だからとオルトが代わりに説明した。
イデアとオルトは今、【タルタロス】の最深部の【冥府】と呼ばれる場所にいるらしい。
これから【タルタロス】と【冥府】に捕らえられた”友達”を自由にするためだと言うのだ。
オルトの説明にいまいち理解が追い付かない[#da=1#]は首をかしげる。
それはヴィルも同じのようで、「【冥府】にいる友達……ですって?」とオルトの言葉を反復した。
「ヴィル・シェーンハイトさん、言ってたよね。「最初から無理だって決めつけてなにも行動を起こさなければ、可能性はずっとゼロのままよ」って。だから、ゼロをゼロのままにしないために……僕たちの望む未来を手に入れるために、アクションを起こすことにしたんだ!」
「どう……いう、こと?」
「僕たち嘆きの島の番人は【タルタロス】と【冥府】がある限り、この場所から離れられない。でも既存の世界を一度破壊し、ファントムと共存する世界を再構築すれば……僕たちはどこまでだって行ける!そうでしょ?」
「「「「「『な……っ!?』」」」」」
『……あの時か……』
オルトはヴィルがきっかけをくれたことを、無邪気な子どものように楽しげに話した。
一方で真の目的を聞いた一同は目を見開き、言葉を失う。
なんせ話の内容とテンションが噛み合わない。突飛な話ではあるが、管制室の混乱具合から見ても、あながち机上の空論で終わるようにも思えないのが恐怖を煽る。
[#da=1#]は先ほどオルトの様子がおかしかったことを思い出し、こんなことを考えていたのかと驚いた。
オルトは相変わらずニコニコとし、しまいにはヴィルに「ポジティブな気付きを与えてくれてありがとう」と感謝まで述べている。
「アンタたち……嘆きの島に収容されたファントムを解放して、世界を滅茶苦茶にするつもり!?」
「この世界には余計な積み重ねが多すぎる。一度リセットしなくちゃ、ニューゲームは始められない。もう一度、ゼロからスタートする。【タルタロス】と【冥府】の解放は、その第一歩なんだよ!」
「信じられない……アンタたちが世界を新しく作り変えようというの?そんなの……………フッ、フフフ!アハハハハ!上等じゃない!見直したわ」
『えっ』
誰もが絶句し続けている中、ヴィルはまさかの反応を見せた。
これには[#da=1#]たちも、信じられないと絶句していた口をあんぐりと開ける。
かまわずヴィルは続けた。
「やる前から無理だと決めつけて、ぐじぐじと蹲っているだけの状態より、ずっと健全。アタシはアンタたち兄弟のチャレンジを応援するわ」
「ヴィル先輩!?なにを言ってるんです!」
「本当!?じゃあ、ヴィルさんも僕たちの仲間になってくれる?」
「それはお断りよ」
「えっ……」
「なぜなら、アンタたちと同じで、アタシにも譲れない夢がある。世界で1番美しくなる……という夢がね。残念だけれど今はその道半ば。リセットされるのはとても困るの。夢が叶った後なら、アンタたちが作る世界でさらに世界一を目指すのもやぶさかじゃないけどね。だから……アタシは、アンタたちの計画を全力で潰す」
「………!?」
『…よかった……』
ヴィルはオルトの計画に前向きではあったが、あくまでも心意気を認めただけで今協力する気はないようだ。
まさか憧れの人が世界の破壊に手を貸してしまうのかと内心焦っていた[#da=1#]はホッと胸を撫でおろした。
「たしかにな。今の世界がクソッタレなのは同意だが……お前らの言う”新しい世界”になったところで、俺に旨味はなさそうだ。なら、面倒がねぇほうがいい」
「家業に縛られる苦痛は理解できなくはないが……権力者の思いつきに振り回されるのは、大ッ嫌いなんでね」
「もしファントムが溢れ出せば、経済にも深刻なダメージが出るに違いない。コツコツ築き上げてきた財産が水の泡となってはたまりません!」
「規律は独善的な考えで作られるべきではない。よって、キミたちの行動には賛同しかねる!」
『この世界でやりたいことが残ってるので、僕も賛同できません』
「——というわけで、アタシたちは全員、アンタたちの敵に回ることにするわ」
ヴィルが賛同しないことに他の被検体たちも続き、それぞれの理由を掲げた。
若干変わった着眼点を持った意見が出たが、反対であることには変わりないということでヴィルがまとめる。
被検体たちの表情を見わたしたオルトは、「そっか……」と肩を落とした。
「残念だよ。みんなとまた一緒にゲームがしたかったな。さようなら……」
「!!またあの鎧が来たぞ!」
「な、なんて数だ!」
「ターゲットを補足。ターミネーションモード起動」
「イデアさんたちは、本当に僕たちを排除するつもりのようですね」
「いい度胸だわ。やれるものならやってみればいい」
『後方支援ならできるので、必要があれば指示してください』
「わかった。基本は下がっているように」
「猫の手も借りたいとはこのことだな……」
「捕まるような面倒なことは避けろよ。お前ら構えろ。来るぞ!」
オルトが姿を消すと、スタッフがパワードアーマーと呼んでいた無人であろう鎧の集団が多数やって来た。
その数は今までより何倍も多く、確実に仕留めるという意思が伝わってくる。
さすがに少しでも戦力があったほうがいいと考えた[#da=1#]は戦闘の参加を申し出た。
それにリドルが同意し、ジャミルが敵の数にうなだれながら呟いた。
レオナの合図で全員がマジカルペンを構えると同時に、パワードアーマーたちが攻撃をしかけ、戦闘が再び始まった。