6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ふん。慣れてしまえばたわいない相手だね」
「そうね。学園に現れた連中よりも、カローンたちの動きが規則的で単純に感じる」
『相手が人かプログラムかでこんなに違うんですね。お疲れ様でした』
今回は先ほどよりもスムーズに戦闘を終え、後ろに控えていた[#da=1#]が全員の元へ駆け寄った。
相手を稼動停止させるまでのコツを掴んだようだ。
「お、お、お前たちは被検体の……!」
「被検体?命の恩人の間違いだろ。恩返しに、俺たちを所長代理サマのところまで案内してもらおうか」
「ヒ、ヒィッ!近づくな!化け物!」
スタッフは勢揃いの被検体たちを見るなり悲鳴をあげた。
想定外の言葉をぶつけられた被検体たちは不満を口にする。
「こちとら右も左もわからねぇ迷子なんだぜ?いいから管制室に連れて行けって言ってんだよ。あ?」
「そんな人相悪くて偉そうな迷子がどこにいるのよ」
『王族ってこれがデフォルトじゃないですよね……?』
「ええ。こんな粗暴なのはそうそういないわよ」
スタッフに圧をかけているレオナを見た[#da=1#]が思わず疑問を呟くと、呆れながら眺めていたらしいヴィルから返事が返ってきた。
生きているので多少の個人差はあれど、テレビや物語で知られるような、世間一般的なイメージと言われる王子像が基準と考えて問題ないらしい。
しかし半ば脅しをかけられているにも関わらずスタッフの意思は固いようで、「嫌だ!」と声を荒げた。
「中央地区には……【タルタロス】には近付きたくない!【ケルベロス・システム】が乗っ取られた。ファントムが溢れ出したら、この島はもうおしまいだ!」
「なんですって?乗っ取られたって、どういうこと?」
「うるさい!そんなこと説明してる暇はないんだ!そこをどけ!俺は脱出用ターミナルへ行かせてもらう!」
「やれやれ……仕方がないな」
先ほどオルトが熱弁していた【ケルベロス・システム】が乗っ取られたという。
たしかあのシステムはここの島全体のセキュリティを担っていたはずだ。
それが本当に乗っ取られたというのなら、これだけ取り乱すのも致し方ない部分はあるだろう。
今にも暴れそうな勢いのスタッフの様子を見かねたジャミルは、溜め息を吐きながら前に出た。
「どうぞ落ち着いて。脱出されるにしても、おひとりでは不安でしょう?僕たちに目的地まで警護させてください」
「え……?」
「フッ……俺の目を見たな!〈瞳に映るはお前の主人、尋ねれば答えよ。命じれば頭を垂れよ——〉”蛇のいざない”」
穏やかに話しかけたジャミルに不意をつかれたスタッフは振り向いた。
その一瞬の気の緩みと視線が合ったことを見逃さなかったジャミルは、すかさずユニーク魔法を発動させる。
あっという間に魔法にかかったスタッフは、ジャミルが扉を開けるよう指示するとすんなり従った。
「さすがはジャミルさん。手際がよろしいことで」
『まるでプロですね』
「オクタヴィネルに褒められても全く嬉しくない」
「[#da=1#]……アズールと一緒に寮服で並んでいると、途端にキミまで胡散臭く見えるな……」
『理不尽な……つまりアズール先輩が今まで悪さをしてきたから、変なイメージがついてしまったということじゃないですか』
「悪さだなんて人聞きの悪い」
鮮やかな手際で解決させたことにアズールと[#da=1#]が褒めるも、ジャミルには全く響いていないようだった。
リドルも、[#da=1#]のことはエースとデュースと仲がいいことを認知していたが、今はアズールと同じ近寄りがたさを感じるらしい。
それを聞いた[#da=1#]はアズールに不満を述べたが、アズール本人は何のことやらととぼけている。
「それよりもこのスタッフ、「【ケルベロス・システム】が乗っ取られた」とか言っていたわよね。どういうことか、聞き出すことはできないの?」
「俺のユニーク魔法はあくまで対象の意識を乗っ取り、操れるだけにすぎません。ジェイドのユニーク魔法のように、対象自身から狙った情報”だけ”をピンポイントで引き出すことは難しいですね。やりようによっては、結果として似た成果を得ることも可能かもしれませんが……」
「へぇ?オクタヴィネルの副寮長はそんなユニーク魔法を使うのか。おっかねぇな」
「おっと、失礼……口が滑りました。本人は言いふらしてほしくないようでしたので、他言無用で願いします」
「ご安心ください、レオナさん。ジェイドのユニーク魔法は、レオナさんのように実力のある魔法士にとっては驚異になりえません」
ヴィルが話の軌道修正をするも、ジャミルの魔法では情報を聞き出すことまではできないらしい。
ジェイドなら可能だが、というジャミルの言葉をレオナは聞き逃さなかった。
アズールはすぐ会話に入り話を終わらせたが、ジャミルを睨みながら声を潜めた。
「チッ……いざという時のために、ずっと伏せてきたのに!わざと口を滑らせましたでしょう、ジャミルさん」
「さあ?なんのことやら……」
『ジャミル先輩……顔、顔』
ジャミルはそう言うが、先ほどからしてやったりというような顔をしている。
やり取りを見聞きしていた[#da=1#]がそれを指摘するも、「よくわからないな」と言いながら相変わらず口角を品よく上げ続けていた。
よほどウィンターホリデーでの件を根に持っていたようだ。
「アンタたち、ここは幼稚園バスの中じゃないのよ。雑談はそこまでになさい。ともかく、このスタッフのIDカードと案内があれば管制室まで辿り着けそうね」
「ええ。そしてそこまで行けば、今ボクたちが置かれている状況も把握できるはず」
「進みましょう」
ヴィルが再度話をまとめ、今まで進めなかった道を進むこととなった。
スタッフの言う事が本当かどうか、被検体であっても知る権利はあるはずだ。