6章
お名前編集はこちら
この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「レオナさん、金色のヒドラは高得点だよ!」
「アアーッ!伝説のトレーナーの人形は叩いちゃダメ!」
「はぁ?このすっとぼけた顔したヤツが、伝説のトレーナー?だいたい、特訓中に飛び出してきたら叩かれたって文句は言えねぇだろ」
モニターに映しだれたゲーム画面に、次々と得点源であるヒドラが顔を出し、それをレオナは容赦なく倒していく。まるでモグラ叩きのようである。
ヒドラたちの中には金色の高得点ヒドラや、叩くとペナルティーを受ける伝説のトレーナーも時折姿を見せた。
『へぇ、伝説のトレーナーってわりにはかわいいデザイン』
「レオナ先輩、たしかここから一気にヒドラの首が増えてきますよ」
「チッ……なんで俺がこんなこと!」
ジャミルの言う通りヒドラの出てくる数が突然増えた。
レオナは難なく反応できているが、イデアの忠告を無視して減点対象である伝説のトレーナーを相変わらず叩いている。
先ほどの言い方からしても、つい叩いてしまっているというわけではなく、わざと叩いているようだ。
最後のラッシュが終わると終了時間になり、最終スコアが表示された。
「わー!持ち前の動体視力と反射速度が反映された、高スコア!」
「そりゃどうも。……で、このゲームのどこが俺向けなんだ?」
「それはね……」
良くも悪くも出てきた対象を全て叩ききったため、得点は低くはなかった。伝説のトレーナーを避けていればさらに高得点が望めただろう。
ここでオルトがようやくレオナに勧めた理由を話し始めた。
なんでも、〖ヒド逆〗のプレイ動画に猫が夢中になってじゃれつく動画が大バズりしたことを発端に、愛猫家たちが”#猫VSヒドラ”とタグで次々モニターにじゃれつく猫の動画を投稿し盛り上がっていたらしい。
その後、動画を見たとある研究者がライオンも〖ヒドラの逆襲〗に夢中になるのか?という実験をしたところ、ライオンも猫同様にスクリーンに映し出されたヒドラに興味を示し、長時間じゃれつき続けることが判明したそうだ。
「【S.T.Y.X】のデータベースによれば、レオナ・キングスカラーさんはライオンの遺伝子を継ぐ獣人属。だからこのゲームなら飽きずに楽しめるんじゃないかなって予測をたてたんだけど……」
「ブッ!!オ、オルトそれは……」
『ふはっ……く……ふふ…ヒ………息、できな……』
「フッ、フフ……ッ!やるじゃないオルト。完璧なチョイスだわ」
「…………はァ?」
理由を聞いたレオナ以外の一同は堪えきれずに噴き出した。
そして本人はというと目を点にさせ呆然としている。
オルトは追い打ちをかけるかのように、「やっぱり僕の予測は外れてなかったみたい!楽しんでくれて嬉しいよ!」と明るく言ってみせたことでイデアまで撃沈した。
「オッホホwww確かに、乗り気じゃなかったのにこの高スコア。思わず夢中でヒドラの首を追いかけてしまったのは事実では~~?」
「猫科のサガには逆らえないなんて、レオナにも案外可愛いところがあるのね?」
『(本人には悪いけど、フォーカスされたのが自分じゃなくてよかった……)』
ジャミルはスキあらば相手を煽ることに余念がない3年生たちを呆れたように眺め、[#da=1#]は自分が笑われずに済んだことに安堵した。
[#da=1#]にとっては笑われたくないだけでなく、変に注目を浴びることにも繋がりかねない。
注目を浴びれば違和感に気付くメンバーが出るかもしれないため、それが避けられたのは大きかった。
「レオナさん。楽しんでくれたなら、もう1ステージやってみない?」
「…………………はぁ~~~………」
オルトはレオナが心底夢中になって楽しんだと思ったようで、続けてのプレイを提案する。
それを聞いたレオナは深い溜め息をつくと、全く本心ではないであろう声色で語りかけた。
「悪いなァ、おチビさん。そちらのみなさんが仰る通り、俺は猫科のサガに逆らえないタイプでな、昼間は眠たくてしかたねぇんだ。もっと遊びたいところだが、眠くて眠くて続けられそうにない。悪いが他をあたってくれ」
「そっか。残念……」
レオナの返事を聞いたオルトは、それなら仕方がないと素直に引き下がった。
その様子を見ていたイデアは思わず「さすがレオナ氏…」と感嘆の声をもらした。
何かとやりたくないことはそれとなく理由をつけてかわしてきたため、もはやプロである。
「というわけで、後はテメェらで勝手にやれ。おらよ、コントローラーだ」
「おっ、とと……。どうやらご機嫌を損ねてしまったようですね」
「気にする必要ないわ。アイツは機嫌がいい時のほうが珍しいんだから」
『(……これは自分も猫科だからってことで離れるチャンスでは…?)』
放り投げられたコントローラーをジャミルが受け取り、レオナは壁際に端から端まで連なる長ソファへ移動し横になった。
[#da=1#]は自然と会話の参加から離脱したレオナを見て『便乗して時間になるまで息を潜めていられるのでは』と考えていると、先にオルトが発言した。
「ジャミル・バイパーさんも〖ヒドラの逆襲〗をプレイする?それとも猫の遺伝子を継いでいる[#da=1#]・ファミーユさんがいいかな?」
『僕は遠慮するよ』
「それなら、ヴィル先輩のゲームの腕前を拝見してみたいな」
「アタシの?」
「ええ。先程からずっと見ていらっしゃるだけなので」
「アタシも普段はゲームをしないし、見ても面白いことはないわよ。でも、そうね。眺めているのも飽きてきたし、なにかやらせてもらおうかしら。オルト、アタシにオススメのゲームはある?」
『(くそ……ヴィルさんがゲームをプレイするところ……すごく間近で見たい……)』
ジャミルの提案に、ヴィルはまさか自分に白羽の矢が飛んでくるとは思っていなかったようで小さく驚いた。
ヴィル本人が乗り気になったことで[#da=1#]は開きかけた口を閉じてしまった。
プライベートなことは液晶や雑誌越しの情報のみで収集している。[#da=1#]にとってのイデアの言葉で言う”推し”が、生でコンピューターゲームをする姿、見たい。
こんなことは後にも先にも今しか目の前で見れないかもしれない。
[#da=1#]のそんな邪な感情が無意識に行動に制限をかけてしまっていた。
「待ってました!ヴィル・シェーンハイトさんには絶対コレをやってもらおうって決めてたんだ!世界的モデルで、輝くスターであるヴィルさんには……〖スター・ローグ ~英雄への道~〗!」
「キターーーーー!!拙者たちのレジェンド!!!これはあるひとりの男が、本当のヒーローになるまでの物語である——」
オルトが事前に暖めていた候補があったようですぐにオススメを切り出し、タイトルを聞いたイデアがテンションMAXで作品のあらすじを語りだした。
この兄弟のコンボ技の前では、たとえ[#da=1#]に邪な感情が働かなくても成功は難しかったであろう。
イデアの話を周囲は静かに聞いており、彼が自分1人で盛り上がっていることに気付くとハッとした。
「あっ、サ、サーセン、つい盛り上がっちゃって……シュ、シューティングゲームなんだけど、ほんと、全編ストーリーがエモエモのエモなんで……よ、よ、よかったらやってみてクダサイ……」
「なんでそこで急にしぼむのよ。アタシたちなにも言ってないじゃない」
『先輩の説明を聞いていただけでしょう』
「そうだよ兄さん。推しゲーは自信を持ってプレゼンしなきゃ!」
「せ、拙者のプレゼンより、プレイしてもらえれば面白さがわかってもらえるはず。とりあえず、まずは1ステージやってみて!」
生き生きと喋っていたのに、突然小声でしどろもどろになったためヴィルたちは首をかしげた。
オルトも今は小声になるところではない、とイデアの背中を後押ししようと励ます。
しかし弟の励ましを持ってしても対面での圧力には屈してしまうようで、まだ若干うろたえている様子が残っている。
「アタシ、シューティングゲームってほとんどやったことないんだけど……」
「なら初心者モードに設定しておくね。ヴィル・シェーンハイトさん、コントローラーをどうぞ。では……」
「「”遥か彼方の栄光を目指し、流星のように駆け抜けろ!”」」
コントローラーを受け取ったヴィルは、兄弟の掛け声と共に表示されたゲーム画面に目を向けた。