6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「かつて発売されていた数々の大ヒットゲームを、インターネット経由でダウンロードしてお楽しみいただけます」
「あっ、あっ、みなさん、ゲゲ、ゲームとか興味ないですよネ」
オルトのコンピューターゲームで時間を潰すという提案に、イデアは声を震わせながら被検体たちの顔色を伺った。
オルトはニコニコしているが、イデアはしきりに目を泳がせている。
「ふぅん。どんなゲームがあるの?」
「サーセン、オタクってやつは往々にして気が読めないもので……えっ?」
「だから……どんなゲームがあるの?」
「エッ。ヴ、ヴィル氏……イケイケのスーパーモデルなのにゲームに興味あるの?」
「なにその偏見。どんな職業にだって、ゲーム愛好家は一定数いるでしょう。というか、移動や撮影の待ち時間を潰すために携帯ゲームを持ち歩く芸能人は多いわよ」
ヴィルがゲームの詳細について訊ねると、イデアは思わず聞き返した。
様々なゲームが普及しているこの時代は職業や年齢問わずたくさんの人々に好かれている。暇つぶしで嗜む程度の層も合わせれば、数はさらに跳ね上がるだろう。
ヴィル自身もゲーム機を持ち歩くことはしないが、誘われてやったことは何度もあるようだ。
「3時間ただ無意味に過ごすより、普段やらないことをやってみるのも悪くないと思っただけ」
「ふむ……ヴィルさんの言うことも一理ありますね。ゲームの実況動画などで生計を立てているマジカメグラマーもいるといいますし。新たなビジネスのきっかけになるかも
しれません」
「実家には何台かゲーム機があったが、ナイトレイブンカレッジに入学してからは全然やってないな」
『僕が実家にいたころは休日たまに遊ぶ程度でしたが、アプリなら今も空いた時間に遊ぶことがあります』
被検体たちはそれぞれのゲーム経験について話した。
アズールはここでも金儲けの話に繋げようとしている。
イデアは残りのリドルとレオナにも確認した。
「鬼教官……じゃない、真面目なリドル氏と、王子様なレオナ氏は家庭用ゲーム機で遊んだりは……」
「あぁ?するわきゃねーだろ。暇を持て余してパソコンに入っていたチェスゲームをしたことがあるが……その程度だ」
「ゲーム機以前に、実家にテレビが置いてありませんでしたね」
「想像通りの回答、安心しましたわ……あざっす」
レオナはただのチェスではなくパソコン上でもプレイしたことがあるらしい。
エディシアははじめ意外に感じたが、ジャックからVDCの本番前にパソコン内のデータが消えたものの、レオナのおかげで復旧したと聞いたのを思い出した。
リドルは何かと世間知らずなところがあったので、ゲーム経験が無いことは全員予想できていた。
「じゃあ、初心者でも遊べる簡単なゲームをチョイスするね!」
「いや、ボクは遠慮しておくよ。ゲームには依存性があり、学力低下を招くとお母様が……」
「は?ゲームが学力低下に影響する?あ~、やだやだ。いるよねぇ。自分にとって都合が悪いものを、”誰にとっても悪”って決めつける人!」
「……でも、ゲームにのめり込みすぎれば学習時間が減るのは確かでしょう」
「そりゃ、「のめり込みすぎれば」ね?」
オルトがゲームを紹介しようとすると、リドルが不参加の意思を告げた。
理由を聞いたイデアは先ほどまでのしどろもどろとは打って変わって、ハキハキと話し出した。
イデアが言うには、のめり込みすぎずに節度を守って楽しむなら、ゲームは思考や判断能力に良い影響を及ぼす、という論文も存在するらしい。
オルトは豹変したイデアを呆然と見て「ありゃ……」と肩を落とした。
「あ!勘違いしないで欲しいんだけど、拙者は別にリドル氏にゲームの良さを理解してほしくて言ってるわけじゃないから。「ゲームを楽しもう」って気持ちがない人がケチつける前提でプレイするなんて、完全に時間の無駄だし全方位に失礼。リドル氏の考えを否定する気はないし、実際リドル氏はそのマインドで生きてて長年学年主席キープしてるんでしょ?なら現状維持でいいんじゃないですか?万が一にもゲームに触れたことで、学力低下を招いたら困るでしょうから!ドュフッ!」
「な……っ、は……!?」
「あーあ……リドル、捲し立てられて完全に固まっちゃってる」
『まぁ、いきなり饒舌になったかと思えば煽りだしましたからね。僕もびっくりしてます』
「……イデアのヤツ、本当に他人をイラつかせる喋りの天才だな」
「イデア先輩って、あんなにハイテンションでたくさん喋れる人だったのか……」
「部活中も、ゲームやアニメのこととなると急に早口になることは多いですよ」
イデアの畳みかけるような言葉たちにリドルは目を見開いた。
言葉も出ていないあたり、理解が追い付かないのだろう。
同じ3年生のレオナとヴィル、そして同じ部活のアズールはイデアのこういう面を知っているようだが、他のエディシアとジャミルは唖然としている。
学園では見かけてもタブレット、そして実体の状態でもこんなに生き生きしているところを2人は見たことがなかったので、けっこうな衝撃だった。
「ば、馬鹿にしないでください!このボクが、ゲームをした程度で成績を落とすなんてありえない!」
「おやおや~?さっきと言ってること変わってませんか?「ゲームは学力低下を招く」とか言ってたの誰でしたっけ?ヒヒッ!」
「それは、自制できなかった場合の話で……っ!ボクはそんなことにはなりません!」
「本当でござるかぁ~?ゲームやってこともないのに、どうやってそれ証明するんですかぁ?」
「いいだろう!それなら、やってやろうじゃないか。そして、ゲームなんかじゃボクの学力に傷ひとつつけられないことを証明してやる!」
「ヒヒヒ!楽しくてやめられなくなっても知りませんぞ。オルト!モニターにプレイできるゲームのタイトル一覧を表示して!」
リドルはハッとするとイデアを睨み応酬した。
もちろんイデアもそれに乗じ、最終的にリドルもゲームをする流れとなる。
指示を聞いたオルトは意気揚々と画面を表示させた。
「あーあ……完全にノセられてる。見てられないわ」
「リドルさん、頭は良いはずなのに煽り耐性がゼロですからねぇ」
『今の状況、まじめであることが裏目に出ちゃってるんですね』
「イデアもイデアよ。後輩相手に大人げない」
リドルがイデアの思うつぼとなってしまったことを、被検体たちは溜め息をつきながら見守っていた。
止めに入ったところで収拾つかなくなるのは目に見えている。骨折り損をするくらいなら流れに身を任せた方がいいと全員が同じ考えに行きつき、結果誰も止めることはしなかった。
「ゲームを始めてプレイするリドル・ローズハートさんに最適なゲームは……シンプルな操作で遊べる〖冥界伝説〗がオススメだよ!」
「初期8bitロムのタイトルを選ぶとは……さすがはオルト、渋いけど良いチョイスですな」
「うん!せっかくなら、ゲームの歴史も一緒に味わってほしいからね」
モニターに表示されたのは荒い画質のゲーム。画面の印象だけでもかなり古いものなのがわかる。
初期と言うプレミア感と8bitという数字の小ささから、ヴィルもそうとう古いタイトルなのではと訊ねた。
「ですです。拙者たちもこのゲームは、デジタル配信版でしかやったことない。なぜならカセット版はプレミアがついてて、なかなか手にはいらんのですよ!」
「〖冥界伝説〗は35年前に家庭用ゲーム機向けに8bitロムカセットとして発売。プレイヤーは死者の国へ魂を運ぶ”船頭”となり、ステージに点在する魂を回収しつつゴールを目指すんだ。横スクロールゲームの元祖とも呼ばれている作品だよ」
『35年前?僕らが生まれるずっと前だ……そりゃプレミアにもなりますね』
「この横スクロールが、シンプルだからこそ逆にハマるんすわ~。死者の国を舞台にしてるのも最高。子どもが「カッコイイ!」って思うポイントをガッチリおさえてる」
オルトから作品に関する概要が説明され、エディシアは小さく驚愕した。
横スクロールゲームは現在定番・人気な分類だ。この作品が横スクロール元祖なのであれば、このゲームが作られない限り横スクロールゲームは誕生が遅れたか、最悪現在も生まれていなかったかもしれない。
そう考えるとかなりすごいゲームのようだ。プレミアがつき、配信版が再発売されるほどの人気があるのも頷ける。
「さあ、リドル・ローズハートさん。この8bitソフト専用のコントローラーを持って」
「あ、ああ」
「難易度はイージーモードに設定して、っと……よーし!それじゃあ、ゲーム・スタート!」