6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「「「『ええ~~~~!?』」」」
「あのね。昨日も言ったけど、【S.T.Y.X】はただの人間ドックセンターじゃないの。アナウンス、聞こえなかった?」
突然のことに驚愕の声が響き渡ると、イデアは心底嫌そうに説明した。
データ収集のために【タルタロス】から危険なファントムを解放してテストすることがあることを改めて伝える。
「防衛システム【ケルベロス・システム】があるとはいえ、トラブルが起きる可能性はゼロじゃない。だから万が一に備えて、テストが終わるまではシェルターも兼ねた部屋の中に全員引っ込めって話」
「だいたいの事情は飲み込めたけど……まず【タルタロス】ってなんのこと?」
「あー、サーセン。完全に内輪ノリで喋ってましたわ」
聞き慣れない単語が聞こえたことでヴィルが訊ねた。それについてはオルトが説明した。
【タルタロス】は【S.T.Y.X】本部の地下空間に建設されたファントム収容所の名前である。常時1万体の被検体が収容されていることに[#da=1#]たちは驚愕した。
あの禍々しい化身たちが、この建物の地下に大量に眠っているというのだから恐ろしい。
「世界中からファントムの検体が収容されるとは言っていたけど、まさかそこまでの数が収容されているなんて……」
「【タルタロス】は、初代シュラウド家当主が嘆きの島の番人になった【神々の時代】に建設された。それ以降、カローンたちが世界中から被検体を集めてるから、そんくらいの数にはなるというか……」
『えぇ……何千年前の話……?』
「【神々の時代】から?なら、逆に1万体ってのは少なく感じるな」
「まぁ、時間経過とともに消失する個体も多いですし。でも、中には1000年以上消失せずに収容されている強力なファントムもいる」
「1000年以上も憎悪にまみれた怪物の姿で存在し続けるだなんて……ぞっとするわね」
【タルタロス】の歴史は相当古いようで、かなりの年月を過ごしているファントムもいるらしい。
その途方もない数字に被検体たちは眉をしかめた。
オルトの説明によると、収容されているファントムは危険度によって12グループに分けられており、深い階層に収容されている被検体ほど危険度が高く設定されている。
さっきアナウンスがあった被検体はAクラスなので、かなり要注意な個体といえるようだ。
「でも普段は頑丈な収容ケージの中で凍結されているから、そんなに怖がらなくて大丈夫!さらに、父さんがベースを作り、6年前に兄さんが完成させた防衛システム、【ケルベロス・システム】がある。万が一の時も、安心、安全さ!」
「カイワレ大根が完成させた防衛システムだぁ?」
「逆に不安を感じるけど……」
「えーっ、なんで!?【ケルベロス・システム】はすごいんだよ!伝説に残る【死者の国】の番犬・ケルベロスの名を冠するにふさわしい、完成度の高さなんだから!タルタロスだけにとどまらず、この島全体のセキュリティを全てカバーしてるだけでも凄いのに、非常時には無人でも3つのブレインが議決した最善の方法で敵を…」
「あ、あ~~、オルト。ストップ。皆さん、そういう話ミリも興味がないと思うんで……」
オルトが説明した最後に、イデアが制作に関わったシステムがあることを聞いた3年生2人は信用できないというような反応を見せる。
それに対しオルトは【ケルベロス・システム】がいかに凄いのかを熱く語り始めた。
終わりが見えなさそうな様子にイデアがストップをかけ、話題を戻すことにした。
「ゴホン!というわけだから……諦めてこの部屋で大人しく時間潰しててください……じゃ、拙者はこれで……」
「なにを勝手に話を切り上げようとしてるんですか、イデアさん。せめて暇潰しできるものをなにか提供して欲しいという話が終わっていませんよ」
そそくさと逃げようとするイデアを被検体たちが許すはずがなかった。
彼らがイデアのような上の人物を呼びつけた目的が解決されていないためだ。
「2、3時間なんか昼寝でもしてりゃすぐだろ。ふぁ~あ……」
「長時間の昼寝は、体内時計を狂わせる。夜眠れなくなるわよ、レオナ」
「ご心配いただかなくても、おかげさまで寝付きだけはいいもんで」
「はぁ……アンタって、いちいちそういう物言いをしないと気がすまないの?」
レオナは得意の睡眠でやりすごすようで特に問題視していないようだった。
ヴィルはたびたびレオナに注意するが今回もひねくれた返事が返ってきてしまった。
「見た目だけの男」がヴィルのレオナに対する口癖だ。せっかくの貴重な長所をどうにか広げられればと考えるのだろう。
『イデア先輩……個室にすぐ案内してくれるって話でしたよね?すぐじゃないんですが?』
「あー……それはスマソ……運が悪かったってことで頑張って……」
『所長といっても所詮は代理か……』
「まぁどうせここの連中にバレても無かったことにするんだし、よくない?」
『よくないですよ。なんとかの河に引きずり込みますよ』
「やだ突然の物騒」
[#da=1#]は他の被検体たちとは別の意味で焦燥していた。
本来ならとっくに個室に入っていたが、まさかのタイミングがなくなり、そのまま数時間を被検体たちと魔法道具無しで過ごさなくてはならなくなったためだ。
彼らの状況を見ていたオルトは、イデアにこっそりと相談を持ち掛けた。
「兄さん。この人たちを同じ部屋に3時間収容していた場合、揉め事に発展する確率は87%以上だよ」
「回避策としてそれぞれの望むものを手配したところで、同じ空間に置いておくだけでどうあがいても揉めそう……」
オルトとイデアは先ほどのようにコソコソとやり取りを始めた。
どうやらこのメンバーに揉め事という面倒事を起こさせないための対策を練っているようだ。
「おい家猫。お前さっきゆっくり休みたいって言ってたろ。俺の昼寝派に加われ」
「ちょっと、同じ猫科の獣人を仲間にするなんてずるいじゃない。……あら?[#da=1#]…アンタなんだか少し幼くなった?」
『僕のユニーク魔法に年齢を後退させるような効果はないですが……?ヴィルさんも心労が溜まってるようですから、昼寝派に入るなら僕も入りますよ』
「……悪いけど、遠慮しておくわ。そこのグータラ男と違って寝るべき時間は決めてるから」
「みなさーん、ちゅうもーく!」
「ちょ、ちょっ……オルトッ!」
イデアとオルトの会話に耳を傾けていた[#da=1#]は、レオナとヴィルの会話に参加したことで聞こえていたのは途中までとなった。
ヴィルが違和感に気付きかけたのを[#da=1#]はどうにか逃れ、安堵したところに次はオルトがみんなに呼びかけた。
イデアは後ろであわあわしている。
「これから約3時間同じ場所で過ごさなくてはならなくなった皆さんに、コンピューターゲームのプレイを提案しまーす!」
『…はい?』
先ほどの兄弟の会話は最終的にコンピューターゲームで決定したようだ。
年頃の高校生でやることなら無難なところではあるが、[#da=1#]はこのメンバーでそれを提案するのはなかなか思い切ったなと感じた。