6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「———ハッ!?ボクは……いつのまに気を失って……くっ、敵はどこだ!?全員首をはねてやる!……み、身動きが…それに、真っ暗でなにも見えない!いったいなにが起こっている!?」
あれからさらに時間が経ち輸送機に乗ってから合計3時間が過ぎた頃、ついにリドルが目を覚ました。
なかなか起きない様子から生きているのかすら怪しまれたが、相変わらず膝を枕にされているレオナからの生存報告で無事ではあるようだった。
むしろ目を覚ました途端に暴君のごとくだったのでピンピンしている。
「……さて、全員目を覚ましたところで、状況を整理しましょう。僕は、部活中に突然やってきた、魔導装備で武装した集団に連行されてきたんですが……どうも、僕らを攫った連中とイデアさんは顔見知りのようでした」
『イデア先輩が?』
「………イデアと連中の関わり合いについては知らないが、俺たちを攫った相手には察しがついてる」
アズールは、侵入者たちと平然と会話していたそうだ。
意地でも対面での会話を避けるあのイデアが、しかも身一つで彼から武装集団に話しかけに行ったという。
レオナは、先ほどの集団を昔に何度か夕焼けの草原の王宮で見かけたことがあったらしい。
「奴らは【S.T.Y.X】の荒事専門チーム【カローン】。オーバーブロットした魔法士を捕獲し、嘆きの島に輸送するのが連中の仕事だ」
「「「「!?」」」」
「通常オーバーブロットを起こした魔法士には、魔法執行官や魔法機動隊が対応することが多いが……場合によっちゃあ、それでも手に負えなくなるときがある。そのときは、【S.T.Y.X】の出番ってワケだ」
彷徨える魂を嘆きの島に運ぶという役目から、”渡し守”とも呼ばれているらしい。
【S.T.Y.X】はブロット研究のスペシャリストとして、当事国からの要請があろうとなかろうと介入することがあるという。
「俺があの連中を見かけたのも、おそらくはその緊急事態が起きたからだったんだろう」
「【S.T.Y.X】……とは?」
「どの国にも属さない、非政府組織だ。魔法技術やブロットの研究をしているらしいが、組織の規模、研究内容、構成員……全てが非公開。【S.T.Y.X】本部があるとされている”嘆きの島”は、世界地図のどこにも載ってねぇ徹底ぶりだ」
リドルが【S.T.Y.X】の詳細について訊ねた。
しかしほとんどの情報が公開されていないことからたいした情報量にもならない。
所在地すら明かしていないなんてまるで禁域だとジャミルは思わずこぼした。
[#da=1#]は”嘆きの島”の名前を知っていたらしく、『そういえば』と口を開いた。
『祖母から聞いたことがあります。「あそこには冥府の住人たちがいる。悪いことをすれば住人たちに”嘆きの島”へ連れて行かれ、魂を食われてしまう」と幼少期に躾で言われていました』
「あながち間違っちゃいねぇかもな。……しかし、”渡し守”がとっ捕まえにくるのは、オーバーブロットし、もう”引き返せなくなった”状態の奴らだと思っていたんだが……」
「ちょっと待って。アタシたちはもう、あの忌まわしい状態から解放されているわ。その後も魔法医術士に適切なカウンセリングとケアを受け、経過観察も異常なしよ。それなのに、何故突然こんな乱暴な方法で捕らえられなければならないの?」
「そんなこと俺が知るかよ」
レオナの説明からすると、本来自分たちが【S.T.Y.X】に連行されるのはおかしい状況のようだ。
ヴィルの言う通り、ここにいるオーバーブロット経験者5人は誰も後遺症などの異常は見られていない。すこぶる順調なくらいだ。
「ブロットの研究をしているということだから、[#da=1#]はユニーク魔法の関係で捕まったってところかな」
「ブロットを抜き取り強制的に化身との繋がりを絶つ……もし有効活用できれば大もう……オーバーブロット者への対応も時短できるでしょう」
『今大儲けって言おうとしましたよね。まぁ実際ここの半数以上は僕のおかげで正気を取り戻してますからね。遠慮せず何度でもお礼してくれていいですよ』
「半数以上だって?」
「そんなにいたの……?だからアタシにも使おうとしていたのね」
「…………」
『……はい。増援は絶望的の緊急事態でしたので』
[#da=1#]の魔法を受けていないリドルとヴィルは驚いた。
2回しか把握していなかったレオナは無言の圧力を[#da=1#]に向ける。
もう使うなと何度も釘を刺していたのに、その後も黙って使っていたのだからそんな反応にもなる。
暗闇でもわかるほど圧を感じた[#da=1#]はつい口走ってしまったと冷や汗を垂らした。
「……うぅん。考えれば考えるほど謎です。こうして僕らが捕らえられたこともですが……世界から秘匿された組織とイデアさんに、一体どんな関わりが?」
『あのイデア先輩が対面でも平気で話せるほどでしょう?長い付き合い……家族が【S.T.Y.X】に勤務しているような関係者とか?』
「たしかイデアの実家って、カリムの実家に引けを取らないほどの大富豪だったでしょう」
「「「『えっ!?』」」」
「本人があんなだから、あまり実感が沸かないけど……シュラウド家って、海底油田やレアメタルで財を成したジュピター財閥の分家のひとつだったはずよ」
「「「『はあああああ!!??』」」」
[#da=1#]が連行される理由はおおよそ納得できるが、他はオーバーブロットしたものの引き返せなくなった状態ではないので、時間が経過していることも含め理由が見つからないでいた。
そこでヴィルがシュラウド家についての情報を口にする。
分家といっても財閥の一族だ。特別な権限をもつ立場の人間であれば、【S.T.Y.X】と接触する機会もゼロではないのかもしれないというのがヴィルの見解だった。
しかしイデアの家柄のことを知らない[#da=1#]と2年生たちは、情報のとんでもなさに揃って大声をあげた。
「ジュ、ジュピター財閥って……世界最大のシェアをもつOSや、検索エンジンを開発した”オリンポス社”を傘下にもつ、あの!?」
「ジュピター財閥の分家のひとつに”シュラウド”という名前の家があることは当然知っていましたが……イデア先輩は、偶然同じファミリーネームなのだとばかり……!」
「一切メディアなど表舞台に顔を出さず”影の統率者”として名を馳せているシュラウド一族……イデア先輩が、まさかその一員だったとは」
『僕の知ってるイデア先輩って青い頭でボソボソ喋るひょろっとした人なんですけど合ってます……?本当にあの人ですか?人違いじゃなく?』
「財閥に名を連ねる名家出身だというのに、何故いつもあんな調子なんだい、あの人は!?」
イデアの実家が名家であることに衝撃が隠せず、ヴィルとレオナ以外の4人は口々に言う。
同じ部活で直接会うことも多かったアズールは、ビジネスという面でも魅力的なパイプラインがずっと近くにいたことに気付けず相当なショックを受けているようだ。
アズールのその様子にリドルは呆れて溜め息を吐く。
「しかし、そんなお方が従者も連れずに1人で学園に入学してくるなんて……あっ!そうか、学園に特別に許可された”弟”の存在は、そういうことだったのか」
『なるほど……寮の部屋も一緒に過ごしているとオルトから聞きました。メンテナンスや管理をするためと思っていたけど、一緒なら身を守れると……』
「”影の統率者”と”秘匿された組織”………なにか繋がりがあってもおかしくはないわよね」
ここで人間でもないオルトがなぜ特別に入学を許可されたのか、理由が見えてきた。
これだけ情報が揃えば、いよいよイデアに何もないはずがない。
「でも、これで少し安心できましたね。イデアさんが口添えしてくだされば、案外すぐに解放されるかもしれません」
「…………どうだかな。俺たちは”被検体”として捕らえられたんだ。どんな目に合わせられるかわかったもんじゃねぇ。俺が昔王宮で呼んだ歴史書じゃぁ……”渡し守”に嘆きの島へ連行されて、戻ってきた魔法士はいないとか」
「「「「『…………』」」」」
アズールの考えた可能性はレオナの情報によって一瞬で潰えてしまった。
状況の悪さが変わらないことに全員が黙り込む。
するとゴウン…と鈍い音と揺れが起き、延々と続いていた飛行音が停止した。
「……この揺れ。どこかに到着したみたいね」
「輸送機内の気圧を調整完了。エアロック、解除します」
オルトの声でアナウンスが流れると閉め切っていた扉がついに開かれる。
長時間暗闇にいたことで、一同は眩しさに目を瞑った。