6章
お名前編集はこちら
この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……ハァ……今どうこうできるわけでもないし、文化祭2日目は楽しもうぜ」
「そうだな……。先輩たちの展示を見ずに終わるのも避けたい」
「グリムクンのことは心配だけど…連絡がないってことは特に進展がないって考えていいんじゃない…かな?」
『…うん。みんなの言う通りだ。グリムへの土産話にもなるし、今日は楽しもう』
「……そうだね」
文化祭2日目。
VDCが終わったことで、NRCトライブのメンバーも自由に回れることとなった。
昨晩グリムが凶暴化し捕獲されてから、ユウたち5人は複雑な面持ちで集まったが、昨夜不在だったエペルがいることもあり今日は割り切ることとした。
今日は5人で文化祭を回ることとなる。
[#da=1#]とユウは先に1日目で回っていたので、展示に関してはちょっとした案内役となるだろう。
「トレイ先輩とルーク先輩んとこ繁盛してたな」
『いろんな植物があってマジカメ映えするって噂になってたらしいね』
「追加料金でビーカーに飲み物を入れてもらったり、砂糖やトッピングの入った試験管で味の調節と実験ぽさを体験できるのも興味深かったな」
「僕、楽しくなってついつい入れすぎちゃった」
ある程度回り、一息つくついでにサイエンス部のカフェに立ち寄った。
マジカメ映えや体験的楽しさだけでなく、VDC出場者のルークが接客しているということでさらに話題を呼び、カフェは大繁盛していた。
この光景をアズールが見たら新たな商売を始めそうだ。
『そろそろお昼にしない?』
「けっこう歩き回ったしねー」
「色々な出店があるし、それぞれ食べたいもの買って合流しようか」
文化祭ではマジフト大会と同じようにたくさんの出店が並んでいる。
固まって動くより、それぞれが自由に見に行った方が効率がいいだろうとエペルが提案した。
『(昼食はホットドックでいいかな。それより出店ならリンゴ飴もほしいな…さっき見かけた気がするけどどこだっけ。コットンキャンディーも捨てがたいよなぁ)』
「失礼。君、ここの生徒だろう?今1人かい?」
『…はい?それが何か?』
「そうかそうか!何を食べようか考えていたのかな?おじさんが好きなものを買ってあげるから、代わりにこの学園の案内をしてもらえるかい?」
出店を見渡しながら[#da=1#]が歩いていると、中年男性が声をかけてきた。一般公開しているため、子どもから大人まで様々な年代が学園を歩いている様子と立ち並ぶ出店は行事ならではの光景だ。
そんな一般客の中年男性は単身で来たものの迷ってしまったらしい。グループ行動している生徒では会話の邪魔をしてしまうと考え、同じく1人でいる[#da=1#]に声をかけたということだった。
『すみません。昼食を買ったら友人たちと合流する予定なんです。道案内でしたら入り口や各所でマップを配布しているので、よろしければそちらをご利用してみてください』
「ううん……君の案内はどうしてもダメかな?食後とか」
『食後はそのまま友人たちと回るので…』
「そこのところ頼むよ…ちょっと案内してくれたらすぐご友人たちのところへ戻ってくれていいからさ」
『(人の予定差し置いて何がちょっとだよ)……はは…いやー…ちょっと難しいですね』
中年男性の内容に徐々に違和感を感じた[#da=1#]は、じりじりと後退した。
しかし何度断られるも中年男性はその場を離れる様子がない。
[#da=1#]は中年男性の品定めするような視線にゾワリと悪寒が走った。
『他にも生徒はたくさんいるでしょう』
「おじさんは君がいいんだよ。その綺麗な青い瞳で見られるとウキウキしてくるね」
『は?』
「何もしないから、ちょっとだけ案内してくれないかな?欲しい物なんでも買ってあげるよ」
『(何もしないやつはわざわざ何もしないなんて言わないんですが)』
いわゆる事案というやつだった。
言動の節々から不信感はあったが、確実な黒だということが判明した。
道案内なんてどうでもよく、[#da=1#]と2人きりになる口実を作りたいだけだろう。
一般人に怪我を負わせるわけにはいかない。ここから走って逃げようか、しかし走るには人が多い。それならこの場で『変態だ』と叫んでしまおうか、証拠も実害も出てないのに周囲は捕まえに動くのだろうか——そんなことを考えている間にも、中年男性はじりじりとニヤつきながら[#da=1#]に近寄って来る。
「おい、大丈夫か?」
「『え?』」
「困っているようだったから。彼に何か用ですか?」
突然、ここの2人以外の声が介入したことで[#da=1#]と中年男性は振り返った。
そこには美しい銀髪と不思議な瞳の色を宿した生徒——シルバーが立っている。
[#da=1#]は昨日リドルと話していたディアソムニアの馬術部員であることを思い出した。
間近で見るとより綺麗な顔立ちをしているのがわかる。
声をかけられた中年男性は口をもごもごとさせた。
「あの…ただこの子に道案内をしてほしくて……」
「少し見ていましたが彼の反応は悪くなる一方でした。もしかして、何度も断っていたんじゃないのか?」
『はい……僕1人"だけ"に案内してほしいと… 聞けば聞くほど困ってないようですし……正直怖くて……』
それを聞いたシルバーは背に隠すように[#da=1#]の前に立ち、中年男性を真っすぐ見た。
目力と暴力的に綺麗な顔立ち、そしてよく見ると布越しでもわかるほどに鍛えられた筋肉に中年男性は思わず怯む。
「…何故、彼でないといけないんでしょうか」
「それは…その…」
「俺のマップを使ってください。マップだけじゃわからなければ、先生に案内させることもできます。何年も勤務しているので生徒より構造や歴史に詳しいですよ」
「………う…ぐ……」
「まだ彼に何か?」
「……いや、なんでもないよ。マップも結構だ。お気遣いありがとう」
中年男性は恨めしそうに今は隠れて見えない[#da=1#]を見たあと、差し出されたマップを手に取ることなくその場から立ち去り人込みの中へと消えていった。
それを見届けたシルバーは[#da=1#]に向き直った。
「もう大丈夫だ」
『あ……ありがとうございました』
「助けになれたようでよかった。先ほどの男性…そんなことはないと思いたいが、念のため先生たちに特徴を伝えて監視したほうがいいかもな。俺が伝えておくから、お前は友人のところへ行くといい」
『いいんですか?助けてもらったお礼もあるのに…』
「気にしなくていい。見回りをしていたところだったし、当たり前のことをしただけだからな」
マップを所持していたのも、道案内が必要な際使えるようにするためだったようだ。
さっそく教師のところへ行こうとするのを[#da=1#]は咄嗟に呼び止めた。
『あ、あの…お名前はなんでしたっけ…』
「何度か姿は見たがまだ自己紹介はしていなかったな。俺は2年ディアソムニア寮のシルバーだ。お前のことも聞かせてもらえないだろうか」
『あっ、[#da=1#]です。1年オクタヴィネル寮の[#da=1#]・ファミーユ』
「そうか。[#da=1#]、楽しい文化祭にしよう」
『はい。ありがとうございました』
シルバーも[#da=1#]のことを認識してはいたようだ。
改めて互いの自己紹介を済ませたところで、シルバーはその場を離れ教師のいるであろう場所へ向かった。
『シルバー先輩……王子様みたいだったな……』
シルバーを見送った[#da=1#]はそう小さく呟いた。
ユウたちと合流してからは、終始機嫌の良さそうな[#da=1#]をエースが気味悪そうに見ていた。