6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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『……はぁ……』
「おやおや?こんな時間に出歩くことは許可されていないはずですが?」
『げっ…寮長…』
鏡舎にて解散後、[#da=1#]がオクタヴィネル寮内を歩いていたところを突然呼び止められた。
声や話し方ですぐにアズールだと理解した[#da=1#]は、ギクッと固まりゆっくり振り返った。
「グリムさんの捜索でしょう?先ほど近くにいたようで、デュースさんがグリムさんを元気に呼ぶ声も聞こえてました」
『……そうでしたか。勝手な真似をしてすみませんでした』
「全く…寮のモットーは自己責任ですが、僕の評価が落ちるようなことはやめてくださいね」
アズールは、グリムのことで外にいたことを知っていたようで説明は不要だった。
[#da=1#]以外を告発したところで、自身の寮生も出歩いていたことがバレるのも時間の問題になると考えたようで、内密にはしてくれるらしい。
「グリムさんを探していたということは、あなたたちも状況をご存じで?」
『はい。ユウから聞いて』
「一体グリムさんに何が…?」
『都度なのかはわからないんですが、オーバーブロットしたときに出たらしいブロットの結晶を食べていたようで…』
「は!?そんなもの食べていたんですか!?ということは僕からもそれが排出されていたんですね…」
『先輩のときもグリムは現場にいたので…』
グリムが凶暴化したと思われる原因を説明するとアズールは驚愕した。
無理もない。ブロットの結晶なんて明らかに禍々しいもの、それも石なんて誰が食べようと思うか。仮に見つけたとしても迷いなく捨てるだろう。
「まぁ、捕獲に成功したようですから、後は今後について結果が降りるのを待つだけですね」
『はい……』
「久々にあなたとのまともな会話なのに湿っぽい反応ですね。どれだけ寮から離れていたと思っているんです」
『えっと……1ヶ月半ほど…?』』
「そうです。1ヶ月以上もラウンジを休んでいたんですよ。こっちはいつでも人手不足だというのに」
『ええぇ…寮長が宣伝するならってOKしてくれたんじゃないですか』
アズールは突然、長期間寮を離れラウンジに出勤していなかったことについて言及した。
[#da=1#]が正論で返すと「その通りですよ」と至極当たり前のような反応を示す。
自身の以前の言葉を忘れたわけではないようだった。
それなら何故自分は今責められているのか、と余計に[#da=1#]を混乱させた。
「ですから、昨日は宣伝効果が出すぎてドリンクの移動販売の売り上げが想定以上だったんですよ。SNSのフォロワー数やコメントが飛躍的に増え、支配人である僕の元にも何件も問い合わせが来ました」
『え、あ、そういう…?』
どうやら「長期の外泊届を許可する代わりにラウンジの宣伝も兼ねること」という要望と、名前の公開を避けたいことから作曲者名を”モストロ・ラウンジ”で出していたところ、そのワードで検索した人たちによって一気に認知度が上がったらしい。
作曲者名が明らかに店名だ→なぜだ。実在するのか→SNS発見→今日のVDCで移動販売をしているらしい→買ってみよう。といった流れだろうとアズールは考察した。
おかげで今回のグリム捜索で呼び出しを受けるまでまともに眠れていなかったらしい。
「今後はまた忙しくなりそうです…なんと嬉しい悩みでしょうか」
『そうでしたか……よかった。ではしっかり責務を全うできたということですね』
「ええ…よくやりました。そして同じく音楽を嗜む者として、素晴らしい曲だと感じました。ジェイドやフロイドも称賛していましたよ。お手柄です」
『あー…まだそういう言葉はやめてください…涙腺にくる…』
たとえ眠れないほど対応に追われたり今後の施策を考えることになったとしても、アズールには儲け話として嬉しいことだったようだ。その証拠に上機嫌で悩みを話している。
一方[#da=1#]は、自寮の寮長からの依頼をクリアできたこと、曲がよかったことを褒められ、それなのに優勝できなかったという悔しさがまたこみ上げ涙が溢れかけた。
それを見たアズールはなんて運が良いんだとばかりに口角を上げ、[#da=1#]の顔を覗き込んだ。至近距離で水色の透き通った瞳と青く深い瞳がぶつかる。
「おや?おやおやおや?まさか泣くんですか?あなたが?どうぞ、いつでも動画は撮れますので遠慮しないでください」
『…ありがとうございます。おかげで涙が引っ込みました。弱みコレクションが増やせなくて残念でしたね』
「調子を持ち直したようですね。いつまでもメソメソ引きずっていないで、次勝つための努力と準備をしなさい」
『……はい。そうします』
アズールが嬉々としてスマホを構えたことで、[#da=1#]はスン…と冷静になった。
この寮長は金儲けと人の弱みが大好物である。今回で[#da=1#]の利用価値が上がったことで、握れる弱みが増えれば従わせる力も強まると考えたがそう簡単にはいかなかった。
「はいはいそうですか…」とスマホをしまったアズールは、それなら泣くより手を動かして次に切り替えろと彼なりの励ましと思われる言葉を返した。
それを聞いた[#da=1#]は小さく笑った。