5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「それではみんな、今日までお疲れ様」
『長いようであっという間でしたね』
「また[#da=2#]とヴィルで曲作ってさ、それをオレたちで歌ったり踊ったりしようぜ!」
総合文化祭1日目と〖VDC〗が終わり、NRCトライブはオンボロ寮に集まっていた。
強化合宿でオンボロ寮を利用したので片付けと、所持品の回収のためだ。
「こんな寮でよければまた呼んでください」
「次はツナ缶を山盛り用意して”お願いしますグリム様!”って頼むんだゾ!」
「おかげで有意義な時間を過ごせたからね、そうさせてもらうよ」
「アンタたち、今日は身体をよく温めて早く寝るのよ。どうせ明日歩き回るんだから、疲労を残さないようにしなさい」
『文化祭2日目がありますからね』
「そういうこと。それじゃ早速帰りましょう」
「ありがとうございました!」
ヴィルの言葉でメンバーたちはオンボロ寮に背を向け、鏡舎へと向かった。その様子をオンボロ寮の住人であるユウとグリムが見送る。
同じ選抜メンバーだったからと1つにまとまるでもなく、それぞれのペースで進んでいくのであっという間に散り散りになった。こういうところがロイヤルソードとの違いだろう。
後方にはヴィル、エペル、ルーク、[#da=1#]が歩いていた。
「…[#da=1#]。アンタのことなんだけど……、!?」
「オーララ!白い猫(ル・シャ・ブラン、いつの間に泣いていたのかい?」
「えっ、大丈夫?どこか痛む?」
『……ぐすっ……う…大丈夫……』
ヴィルが[#da=1#]に話を振ろうと視線を向けると、そこにはボロボロと滝のように、しかし静かに涙を流していた姿が映った。
近くを歩いていたルークとエペルも気付き、[#da=1#]に歩み寄る。
大丈夫と言うその声は小さく震え、非常に情けなく全く大丈夫そうではなかった。
「…痛むのは心だね?」
『………ちゃんと、曲作るの初めてで…憧れのヴィルさんの、頼みで……凄く、がんば、ったんです……ひっく…』
「う、うん」
『頑張ったのに……たった一票差なんて…悔しくて……ごめんなさ……ぐすっ…うあぁああ…』
「……〖VDC〗は終わったし観客たちもいないけど、まだここは屋外よ。そんなにみっともない泣き方をするんじゃないわよ」
「ちょ、そんな言い方ないんじゃないですか?」
「いいんだよエペルくん」
「え?」
結果発表では頭が真っ白になり、その後は驚愕の連続で休まる間がなかった。
今こうして合宿先であるオンボロ寮を全員で出て歩いているうちに、本当に〖VDC〗は終わったのだと自覚し、今日までの様々なことを思い出してしまったようだ。
しかし[#da=1#]の必死に紡いだ言葉を、ヴィルは小さく溜め息をつくとバッサリ切り捨てた。
それを聞いたエペルはキッとヴィルを睨んだ。しかしルークに問題ないと制止されてしまう。
「…でもね、アンタが謝るのは違うわ。アンタの才能は本物よ。実際初めての試みで世界に手が届きかけたし、ちょうど話そうと思ってたことなんだけど、作曲者を紹介してほしいと音楽会社から何社も問い合わせが来てる」
『ぐすっ……』
「それってもしかして、スカウト!?」
「すごいね。しかも何社もだなんて」
始めは突き放したような言い方をしたヴィルだったが、[#da=1#]の目の前で少し屈むと頬を伝っていたたくさんの涙を指先ですくった。
その優しい行為だけでもエペルは驚愕だったが、音楽会社から声がかかっているということでさらに驚いた。
ヴィルの向ける柔らかい表情が、次は影が落ちたように暗いものとなった。
「謝るのはアタシの方よ……あんなにアタシに憧れてくれていたのに、最高に醜い行為をしたあげくオーバーブロットまでして足を引っ張ったなんて……失望させてしまってごめんなさい」
『…それは、違います……ぐす……作曲環境を揃えてくれたり、曲のチェックに付き合ってくれたり、全力で僕のことを支えてくれたから…おかげで最高の環境で曲作りに集中できたし、ヴィルさんのアイデアのおかげで曲に反映できた部分もあります。それなのにダンスや食生活まで……今回のヴィルさんは、一生懸命すぎたんです』
「[#da=1#]………。アタシの最後までステージに立つところを見届けてほしいってお願いも、聞いてくれてありがとう」
『…!ヒッ……』
「[#da=1#]クン!?」
ヴィルの謝罪に[#da=1#]は今回の行いについて訂正した。
傍から見れば、不祥事を起こしたにも関わらず擁護するのは頭がお花畑だと捉えるだろう。しかし、いつもストイックなヴィルを知っているからこそ、今回は事故の1つだと[#da=1#]は考えていたのだ。
それを聞いたヴィルは目線を合わせたまま[#da=1#]に笑顔と感謝の言葉を向けた。それは演技ではなくヴィルの本心だった。
しかし[#da=1#]は至近距離で名前を呼ばれ、自身にのみ向けた笑顔に耐え切れずよろよろと倒れ込んでしまった。慌ててエペルが受け止める。
「[#da=1#]クン、気をしっかり!」
『……ハァ……目を開ければまた綺麗な顔…ポムフィオーレは目のやり場に困るな……』
「冗談を言える元気は出たみたいね」
「お互いに讃えあうこの光景も美しい……ボーテだよ!」
やがて[#da=1#]の涙は鏡舎で分かれるまで止まりはしなかったものの、だいぶ落ち着きを見せたようだ。いまだにすんすんと鼻を鳴らしている。
「それじゃあ、今回のことは改めてメンバー全員を呼んで謝罪をさせてもらうわ。そのときはまた時間をちょうだい」
『ヴィルさんのためならいつでも馳せ参じます。……それと、その日は僕もみんなに言えてない、謝るべきことがあるので便乗させてください』
「「「?」」」
「思い当たる節がないけれども…」
『それは…当日お話します』
「あまり追い込まないでね」
鏡舎にて別れ際、[#da=1#]の『全員に謝ることがある』というものにポムフィオーレの3人は首をかしげた。
曲のクオリティは音楽会社から声がかかるほど申し分なく、1位との接戦ぶりからも謝るようなことではないはずだ。
しかし集まった日に伝えるということしか言わないので、重要なことなのだろう。