5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「君たちだって君たちにしかできない素晴らしいパフォーマンスだったよ。確かに僕らはこの大会で一番になったけど、ヴィーくんたちに投票した人たちにとっては、君らが”世界一”なんだ」
「ネージュ……」
どうやらネージュがヴィルを慰めていたようだ。
彼の言葉を聞いたヴィルの頬から伝う涙は、溢れそうではあるものの止まった。
そこにルークも加わり、ハンカチをヴィルに手渡す。
「あっ、君は開場前に僕を呼びにきてくれた……ルークくん、だったよね」
「ウィ。先程は急かしてしまって、すまなかったね」
「ルークくん。君、僕の握手会に欠かさず来て、お手紙をくれる”R”さんでしょう?」
「「「『えっ!!??』」」」
ネージュがルークの姿を確認するととんでもないことを言い出した。
まさかの発言に1位発表のときと同じくメンバー全員が目を見開く。それはルークも例外ではなかった。
「え……どうして、それを……?」
「僕を”白雪の君”なんて素敵な名前で綴ったお手紙をくれるのは、ファンの中でも1人だけだから。さっきそう呼ばれた時、ピンときたんだ」
なんでも、ネージュのファンイベントに来るたびにブロマイドを全部買い、1枚ごとに感想の詩を贈る熱心な人物がいるそうだ。
それがファンの中で唯一”白雪の君”と呼んでいた”R"だというのだ。
「えっ、ハント先輩が、ネージュ・リュバンシェのファン!?」
「それどころか、ブロマイド1枚ごとに感想とか……ガチ中のガチじゃん!」
「………はっ!もしや、ルーク先輩が合宿に持ってきたあの分厚いアルバムは……まさか、あのアルバムの中身は全部、ネージュ・リュバンシェのブロマイド……!?」
ジャミルが、ふと合宿初日の荷物点検のことを思い出した。
それを聞いたメンバーたちから再び驚愕の声が上がる。
先ほどの空気が霞むのではないかというくらい衝撃の連続だ。
『わかる……推しに関する物は側に置きたいですよね……でも全てに感想を綴って送ってたなんて、僕でもしなかったよ』
「シェーンハイト先輩が絡むと[#da=2#]とハント先輩に似た空気を感じていたけど、そんな共通点があったんだな……」
「そんなに大ファンなら、間近で会えてよかったじゃないか。ルーク!記念に握手してもらえよ!」
「あ、ああ……そう、だね。……………………」
唯一しみじみと聞いていた[#da=1#]に、デュースが若干引き気味に納得した。
カリムは最初こそ驚いていたものの、せっかくだからとルークにネージュと握手をするよう背中を叩いてやった。
しかしカリムの後押しで握手をすることができたルークは特に何か挨拶をするでもなく黙り込んでしまう。
「ルークサン、黙り込んじゃってどうしたの……かな?」
「フン。さすがに気まずいんじゃないの?」
『……いや、違いますね』
「なぜそう言い切れる?」
『ファンとしての傾向が僕と近いようなので。よく見てみてください』
「…………………………ウッ…………」
「し、静かに泣いてる……!」
「マジか…」
[#da=1#]に言われ全員が黙り込んでいるルークを注視すると、小さく嗚咽を立てていた。
どうやら握手会とは別の機会で握手を交わし、こうして交流できることに嬉しさが上回ったようだ。
メンバーたちにネージュのファンであることがバレたルークは吹っ切れたのか、嬉々として自己紹介を始めた。
「白雪の君……こうして名乗るのは初めてです。私はネージュ・リュバンシェファンクラブ”Eternal Snow”会員番号0000002……ルーク・ハント」
「ファンクラブにまで入っているんですか!?」
「しかも会員番号、若っ!」
なんとルークはファンクラブの最古参だった。新たな衝撃にまた驚愕する。
活動内容やファンクラブを早々に見つける行動力は、ヴィルを長年追っている[#da=1#]よりうわてのようだ。
「私は、あなたの美しさで人生を照らされ、希望を胸に生きられるようになったひとりです。こうしてお話することができ、光栄です。今日はありがとうございました」
「握手会に来てくれるときとは今とぜんぜん雰囲気が違うから、すぐに分からなくてごめんなさい。いつも応援してくれてありがとう!」
「今日のステージの感想、また手紙を出します」
「ふふっ。今度はイニシャルじゃなく、ちゃんと”ルーク”って名前を書いてくださいね」
ネージュはスマートに返答した。
そんなファンのことをしっかり認識しているネージュの対応力に、ジャミルは「あれは確かに”強い”」と感心の声をこぼした。
純粋にルークのインパクトが強すぎるというのもあるだろうが、言葉に詰まることなく今後のことも伝えるネージュの対応力はさすがと言える。
「…………ハァ。酷い男。最後の最後に、とんだ裏切りだわ」
「……ズッ、私がロイヤルソードアカデミーに投票したことと、私がネージュのファンだったことは関係ない。私は…」
「ストップ。アンタがそういうタイプじゃないことくらい言われなくてもわかってる。馬鹿にしないで」
ルークが投票について訂正しようとするとヴィルが制止した。
同じ学年としての2年間、そして寮長と副寮長という関係としても近くで見てきたヴィルはルークの考え方を理解していた。
しかしプライベートを探られるのを良しとしないルークの秘密主義は徹底されていたようで、ネージュのファンだったことまでは気づかなかったようだ。
「本当に食えない男。……さっさととの涙を拭きなさい。ほら、ハンカチ。アンタのだけど」
「メルシー、毒の君………うっ」
「…[#da=2#]。目が据わってるけど、もしかしてルーク先輩に感化されてヴィル先輩へのファンレター増やそうとか考えてないよね?」
『………ふふ。まさか』
「ちょっと、何よ今の間と笑いは。どうせ校内で会うんだから、直接言いに来ればいいじゃない」
『え、あ、いや、それは……直接感想なんて恐れ多くてとても……それに足止めさせるわけもいかないので……』
「いつもの威勢はどこいったのやら…」
「ふふっ、ヴィーくん。いつもの笑顔、戻ってきたね!」
ルークや[#da=1#]とのやりとりを見聞きしていたネージュは、ヴィルの柔らかくなった表情に安堵の笑みを浮かべた。
そこまではよかったのだが、やはりライバル校。NRCではまず浮かばない提案を真っ先にした。
「ねえ、一緒に歌おう。みんなで歌えば、きっともっと笑顔になれるはずだよ」
「えっ?」
「ほら、行こう!」
「ちょ、ちょっと、ネージュ!」
ネージュはヴィルの返事を待つこともなく手を引きステージ中央に立った。
世界的人気タレントの2人が並んでいることに観客たちは口々に感激の声をあげた。
「ナイトレイブンカレッジのみんなも、一緒に歌おう!」
「「「えっ、え………ええ~~~~~っ?」」」
「いくよー!さん、はいっ!」
なんと、みんなで一緒に歌うというのは本気だったようだ。
手を引かれたヴィルだけだと思い油断していた残りのメンバーたちは驚愕した。これで何度目の驚きだろうか。
強行突破するかの如く、ネージュはNRCトライブの返事を聞く前に曲を再生させた。
観客の前で始まってしまったものは仕方がない。仕方なく、再度流れた”みんなでヤッホー”を全員で歌い始めた。
デュースやエペルは戸惑いながらも一生懸命に、カリムやルークは楽し気に、エースやジャミルは心底嫌そうに歌い繋げる。
ヴィルはネージュと共に笑顔で最後まで歌い上げた。
その様子をサポートメンバーの3人も状況の流れの速さに呆然と眺めていたが、演者側でなくて良かったということだけは心底感じた。
「みんな、どうもありがと~っ!ほら、ヴィーくんも!」
「ふふ。みなさん、また会いましょう!」
「また2人が仲良くなれてよかった!うんうん!」
「なんて美しい光景なんだ……ボーテ、100点……」
「さ、さすがだな、ヴィルサン……」
「舞台から蹴り落したいとまで言ったライバルを隣に笑顔で歌いきってみせるとは……これがプロか」
『本当にすごくいい笑顔…』
「………………。あ”~~~~~~~~っ!!やっぱり誰か今すぐアタシを気絶させて!!」