5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「本番まであと10分か……」
「そろそろスタンバイの声がかかる頃ね。先に舞台袖に……つっ!」
「ヴィル……本当に大丈夫かい?」
『やっぱり僕の魔法で治した方が…』
「痛み止めの魔法薬も飲んだし、擦り傷もメイクで隠した。問題ないわ」
コロシアム内の廊下。
移動を始めようとしたヴィルは痛みで顔を歪めた。
その様子に[#da=1#]がユニーク魔法の使用を提案したが、ヴィルはそれを拒んだ。
「それに、アンタが魔法を使ったら眠りに入ってしまうのでしょう?それじゃあ最後までアタシたちのパフォーマンスを見届けてもらえなくなるじゃない。だからお断り。もっと自分を大切になさい」
『え…えええ……』
「白い猫。ヴィルもこう言っているのだし」
『……そうですね…』
本来であれば[#da=1#]の魔法で一番ダメージを負っているヴィルの負担を取り除いた方が彼の為でありチームの為でもある。
しかし作曲者が不在なんて許さないというヴィルなりの理由があったようで、薬でごまかせるからということで[#da=1#]が折れる形で終わろうとした。
[#da=1#]が了承しようと口を開きかけると、エペルがヴィルを呼んだのだ。
「………ヴィルサン!!あの……僕に、センターを譲ってもらえませんか!」
「「「『え!?』」」」
「エペル、お前突然なに言っちゃってんの?」
「エースの言う通りだ。本番直前に、どうして急に?」
「いくらなんでも、オメーがヴィルの代わりをするのは難しいんじゃねーか?」
「だってヴィルサン、立っているのもやっとじゃないか!それなのに[#da=1#]クンの魔法を断るなんて!」
「………」
「絶対優勝するって言ったけど、もし、もし舞台の上で身体に限界がきたりしたら……俺、あんたが観客の前で無様を晒すところなんか見たくない!」
「ムシュー・姫林檎……」
「俺はあんたとの約束を守って、入学した頃よりずっと愛らしく、甘くてかわいいだけじゃない、立派な毒林檎になれたでしょ?俺がネージュを仕留めます。だから…!」
はじめはメンバー全員が驚愕したが、エペルなりにヴィルのことを考えているのだと知り意見する者はいなくなった。
ヴィルは自身に厳しくしすぎる節がある。エペルはそんな自身の寮長のことがどうしても心配だったようだ。
思いもよらない言い分にヴィルは小さく笑った。
「……ふっ。言うようになったわね。でも、心配は無用よ。スポットライトがアタシを照らしているのなら、たとえ頭上から大岩が落ちてきたって舞台を降りはしない。最後の瞬間まで、勝利を信じて足掻き続ける。それが、悪役の誇り。………どうか、悪役に最後まで舞台に立っていられるチャンスをちょうだい」
「………わかりました。ヴィルサンが、そう決めたなら…」
ヴィルの譲れない熱い思いに、エペルも[#da=1#]と同じく彼の気持ちを優先することにした。
実際ヴィルのプロ意識——もとい臨機応変さと根性は本物だ。これまでに何度も撮影トラブルの経験をしているが、どれもトラブルがあったことを感じさせない高い完成度をファンに届けている。
寮生として近くで見てきたエペルも、熱心なファンの[#da=1#]も、そんなヴィルの努力を知っているから任せようと思えたのだ。
「……ふん。第一、他人の心配なんかしてる余裕あるの?エペル。アンタ、人前に出ると途端にミスが増えるんだから。大事なオーディション、サビでミスったのをお忘れ?」
「なっ!い、今そんな話しなくたっていいじゃないですか!」
「このアタシにセンターを譲れとまで言ったのよ。キッチリ観客のハートを仕留めてちょうだい、毒林檎ちゃん」
「……はい!」
次はヴィルがエペルに仕返しと言わんばかりにオーディションでのミスを掘り返した。
それがきっかけになったのかエペルの声色に緊張感や暗さが抜け、いつもの調子が戻ったようにも伺える。
そうこうしている間に出番が近づいたようで、スタッフがメンバーたちにスタンバイするよう呼びかけた。
「……ついにこの時がきたわ」
「んじゃ、サクッと優勝トロフィーもらいにいきましょっか」
「おう!緊張しすぎて逆に落ち着いてきたぜ!」
「っシャア!!観客のハート、仕留めてみせんぞ!」
「練習通りにやればいい。心配するな。全てうまくいく」
「ジャミルの言う通りだ。最後まで全力で楽しもうぜ!」
「いいか!オメーらの肩にはオレ様のツナ缶富豪の夢がかかってるんだゾ。ぜったい、ぜーーったい、優勝するんだゾ!」
「世界一美しいステージにしましょう!!」
『目指すは世界一の座のみです。最高の景色を見せてください』
「さあ、我らNRCトライブ!いざ征かん、決戦の地へ!」
各々が一言ずつコメントをし、ルークの号令を合図に7人の仲間たちが歩き出した。その背中を2人と1匹が見送る。
「大変長らくお待たせいたしました。全国魔法士養成学校総合文化祭inナイトレイブンカレッジ!音楽発表会〖ボーカル&ダンスチャンピオンシップ〗!!ただいまより開催いたします!」
わあああっ
満席の観客席から歓声が沸き上がる。
まだ開催の合図だけなのにすごい迫力だ。改めて規模の大きさをその身で感じた[#da=1#]は握っていた拳に力がこもる。
『(大丈夫…この曲とメンバーなら1位になっておばあちゃんも認めさせられる…!)』
「最初にパフォーマンスを披露するのは、開催校である”ナイトレイブンカレッジ”の代表選手のみなさんで……”Absolutely Beautiful”です!」