5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「少し早く着いてみれば、ステージが滅茶苦茶じゃないか」
「あっ、ツノ太郎!開場時間まであと2時間あるよ!?」
「「「『ツノ太郎!!!!????』」」」
コロシアムに来たもう1人の声の主を見たユウはとんでもない名前を呼んだ。
その呼び名に一同は驚愕したが、そこにグリムが続けて爆弾を投下するものだからちょっとしたパニックに陥る。
「お~!オマエがオンボロ寮の庭を夜中に徘徊してるっていう、ツノ太郎か。ユウから話は聞いてたけど、本当に頭にツノが生えてんだな!にゃっはっは…ふがっ!」
「こら、グリム!!お、お、お前っ!先輩になんて口の利き方してんだ!」
「ユウ!あのヒトをツノ太郎呼ばわりするなんて、命知らずにも程があんでしょ!」
『チケット渡した話でまさかとは思ったけど!よく今まで無事だったね!?』
「おめぇ、あの人が誰だか知らねえのか!?」
「だって好きに呼べって言われたから……名前も教えてくれないし……」
どうやらユウでもグリムでもなく、彼本人が先に許可を出したからそう呼んでいるらしい。
それにしても無知ほど恐ろしいものはない。誰もが恐れるこの人物にツノ太郎と気さくに呼べるのは、ツイステッドワンダーランド中を探してもこの2人くらいだろう。
「ヴィルがユニーク魔法で生み出した強力な呪いの毒霧は、まだ会場を覆っているはずだ。あの呪いに触れたものは、無事ではいられないはずだけれど」
「……ああ、そういえばそんな呪いがかかっていた気もするが…どれほど強力なものだろうと、この僕を呪えはしないさ」
『うわ……さすが世界屈指の魔力……』
「フン。ユウの世間知らずをいいことに随分と戯れていたようね。茨の魔女の高尚な精神に基づく、ディアソムニア寮の寮長……マレウス・ドラコニア!」
「マレウス・ドラコニア!?…あっ…カードのイニシャルのM・Dって……」
「言っただろう?僕の名前を知れば、背筋に霜が降りる心地がするだろうとな」
正式名称を聞いたユウはようやく驚愕した。ホリデーカードのことも合点がいったらしい。
グリムもマジフト大会で名前や話題が上がっていたことを思い出したようだ。
マレウス・ドラコニアは妖精族の末裔で、茨の谷の次期党首でもある。
最近だとマジフト大会でマレウスが入学してから今年を含め3年間、強豪のサバナクローにさえも点を取られることなくストレート勝ちを果たしたことで殿堂入りをした経歴もある。
マレウスは目を細め、薄い唇で小さく弧を描いた。
「ところでシェーンハイト。お前こそ、どんな戯れに勤しんだらそうボロボロになるんだ?そんな姿では、美しき女王の精神が泣くぞ」
「………それは……」
「どうした?さあ話してみせろ、ヒトの子らよ」
「ええと…」
まさかのゲストと事情が事情なために躊躇ったが、断る空気でもない。
周囲を見渡し、[#da=1#]が頷いたのを確認したユウは「実は……」と経緯を説明した。
「……なるほど。そんなことがあったのか。しかし……オーバーブロットするほどの魔力反応を、僕を含めこの学園に集まっている魔法士が誰も気付けないとは」
「ええっ!?外では騒ぎになってなかったってことか?」
「ああ。少し離れた体育館のそばでロイヤルソードアカデミーの生徒たちが歌い、そこに人間たちが群がっていたが……」
「このコロシアムではマジフトの試合や防衛魔法の試験、寮長の座をかけた決闘なども行われる。もともと場外に被害が出にくいよう、特殊な結界が張ってあると先生から聞いたことがあるが……」
『僕たち…本当にギリギリだったのか…』
なんと、あのマレウスですらも今回の騒動には気が付かなかったのだと言う。
コロシアムを張っている結界の強力さをまさかの形で知ることとなった。
ジャミルの結界の話を聞いたエペルとエースは、ヴィルを正気に戻せなかったもしもの未来を想像して顔を真っ青にした。
「………………ふむ。まあ、いいだろう。貸しひとつだ、シェーンハイト」
「え?」
マレウスが周囲の様子を改めて確認すると手を挙げた。
ヴィルが聞き返した直後にゴオオ…と強い魔力がコロシアムを包み込む。
そのプレッシャーにも似た魔法の圧力に全員身構えた。
「ふな”ッ!?なんだ!?全身の毛がぞわぞわするんだゾ!」
「ぐっ……なんてプレッシャーだ!」
『お、重い…!』
「くくっ。ヒトの子よ——お前たちに贈り物を授けよう」
「マレウス、なにをしようっていうの!?」
「この程度、解けた織物を織り直すより容易い。さあ、あるべき場所へ、あるべき姿へ戻れ!」
皆が顔を歪め焦っている中、マレウスは涼しい顔で魔法を放った。
コロシアムは大きな地響きをたて周囲に散乱した瓦礫たちが浮き上がり、やがて音が収まった。
最初に目を開けたエペルの声で全員も周囲を確認し、エペルと同じように驚愕の声をあげた。
なんと全壊していたコロシアム会場が元通りになっていたのだ。
「うおおぉっ!?これ、マレウスが魔法でやったのか!?すっげえ~~~!」
『全力の僕ら全員でかかってやっとだろうに……1人で一瞬で終わらせるなんて…』
「うへぇ……マジフト大会で見た時も思ったけど、レベルが違いすぎ…」
「竜の君、素晴らしいよ。キミの魔法はいつでもマーベラスだ!」
「舞台が元通りになれば、お前たちの余興が見られるのだろう?僕はただ、それに興味があっただけだ」
カリムとルークは、ドン引きしている周囲を差し置いてマレウスを称賛した。
あれだけボロボロだったのが何事もなかったかのように綺麗になっているのだから、魔法士としてのレベルの高さに衝撃するのは無理もない話だ。
「ありがとう、ツノ太郎!すごいよ!」
「ふ、ははっ!お前、僕の正体を知ってもそのあだ名を貫くつもりか」
「えっと、慣れてしまって……ダメだった?」
「いや、かまわない」
『…ユウの肝が据わりすぎて、マレウス先輩の次に怖く感じる…』
「同感…」
マレウスに駆け寄ったユウは相変わらずのツノ太郎呼びをしている。
本人が許しているのだから問題はないのだが、インパクトの強さで言えば今の魔法と引けを取らない。
遠目から見ていた[#da=1#]とエースは終始呆然と眺めていた。
「さて、シェーンハイト。この僕がここまでお膳立てしてやったんだ。たっぷりと楽しませてくれるな?」
「フン。言われなくたって最高のパフォーマンスを見せてあげるわ。スタンディングオベーションする準備をしておいて」
「そうでなくては。では……本番を楽しみにしているぞ」
マレウスは招待されたのがよほど嬉しかったのか、ステージが楽しみなのか、はたまた両方なのか——。
ヴィルに向き直り激励の言葉を告げると一瞬で消えてしまった。
「ふふ。まさか竜の君から祝福を受けられるとは。運は我らに味方せり、だね。今こそ、私たちNRCトライブの結束を見せる時だ」
「ええ……。学園長への言い訳も、後のことも、全部アタシが責任をとる。〖ボーカル&ダンスチャンピオンシップ〗——絶対優勝するわよ!」
「「「『おー!!』」」」
コロシアムに静寂が戻り、ステージを見渡したことでこの後の本番に意識が移った。
もう少しで満席の観客席に見届けられながらステージで歌い踊るのだ。
トラブルはあったものの、あとはやりきるだけである。