5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ヴィル……ああ、美しきひと。どうか目覚めておくれ……」
「……………う…………アタシ、どうして………?」
「ヴィル!よかった。瞳にいつもの輝きが戻ったね」
倒れるヴィルをルークが支えた。
ブロットの化身は消え、ヴィルは元の姿に戻っている。
倒れたヴィルが目を覚ますと、安堵の声が周囲から出た。
『ヴィルさん…よかった…!』
「ほんとによかった……グスッ、ううっ、ヴィル~。心配させやがって……」
「なんでお前らが泣いてるんだ」
「よかった……打ちどころが悪かったらどうしようかと」
『そうですよ…あのヴィルさんがそんなことになるはずありませんけど……』
号泣するカリム、瞳を潤ませる[#da=1#]をジャミルは引き気味に見た。
そんな2人の様子、メンバーたちの負傷具合を視認したヴィルは静かに呟いた。
「……………とんでもない醜態を、晒してしまったようね。癇癪を起こして他人に当たり散らすなんて、最低だわ。この世で一番、美しくない行為……」
「そうですね。癇癪を起こしていいのは3歳児までじゃなかったですっけ?」
「ははは…ここでそれ言っちゃう?」
以前言われたことを、エペルは仕返しとでも言うかのようにニヤつきながら尋ねた。
しかしヴィルが無事に目が覚めたこと、そしてエペルの発言がきっかけで全体の空気が柔らかくなったようだ。
しかしヴィルからの返答は暗いものだった。
「そうね……エペルの言う通り。こんなアタシは、もうアナタたちのリーダーでいる資格なんてないわ……」
「自惚れてはいけないよ、毒の君。残念だが…私たちは誰1人、地に伏していない」
「え……?」
ルークの言葉を聞いたヴィルは固まった。
まだ誰も傷つけていないと付け加えたカリムの言葉に目を見開く。
一息ついたところでジャミルは今後のことについて提案した。
「やや苦しいが………レッスンに熱が入りすぎてメンバーで喧嘩をしただけ、ということで」
「この騒ぎを無かったことにしようっていうの?」
「そうは言っていません。ただ、先生がたに事情の説明するのを、大会の後にするだけです」
ジャミルはこの後の言い訳について話を合わせておこうというのだ。
たしかにヴィルがオーバーブロットをしたなんて知られては失格一直線だ。
それなら熱心に練習していたが故に、不慮の事故として起こってしまったことだということにしてしまえば、まだ失格の可能性は低いだろう。
「……ふっ。ジャミル、アンタやっぱり悪い男……うっ!」
『「ヴィル/ヴィルさん!」』
「少しよろけただけでしょう。情けない声出さないで」
「あれだけのダメージを負ったんだ。どうか無理はしないで、私の肩に身を預けておくれ」
『そうですよ。いくらヴィルさんといえど、あんなことがあった直後なんですから…』
ヴィルがよろけるとルークと[#da=1#]が駆け寄った。もはや2人は親衛隊に等しい。
ルークの肩をヴィルが借りると、エースが思い出したようにデュースに話しかけた。
「そういえば、ヴィル先輩を最後にぶっ飛ばしたデュースの魔法……あれ、なんだったわけ?」
「たしかに、あの強烈な一撃、スゴかったんだゾ!デュース。オメー、いつのまにあんなスゲー魔法覚えたんだ?」
「いや、あれほど威力が出たのは、僕じゃなくてシェーンハイト先輩のおかげだ」
「どういうことだ?」
デュースは自身の使った魔法について解説した。
相手からくらったダメージをデュース自身の身体に溜めて、そのまま相手にブッ込むという仕組みだ。
つまり、ヴィルが与えた魔法が強かったから、あれだけの威力が出たというのだ。
それを聞いたエースは喧嘩のお礼参りかとコメントした。
「エペルと、海に行って絡まれた時に初めて使えたんだ。その時は、攻撃を耐えているうちについうっかり出ちまったって感じだったんだが……」
『ああ、あの日からなんだ』
「はぁ……。うっかりで一般人を魔法で攻撃するな。ことによっては停学モノだぞ」
「うっ、す、すんません」
練習中に飛び出したエペルとデュースは、イグニハイド寮で借りたマジカルホイールで海へと向かい、そして海辺で出会った不良たちに絡まれ喧嘩した。
しかしあれから何度やってみようとしても全然使えなかったらしい。さっきヴィルに本気でボコボコにされて、やっと感覚がつかめたと言うのだ。
「あっはっは!ほらな、やっぱお前は難しく考えちゃダメなんだよ。つまり、それがお前の個性ってことだろ!」
「個性?…あ、そうか……もしかして、これが僕の……ユニーク魔法!?」
「えっ、無自覚だったの?」
『しっかり呪文叫んでたよ』
「ああ。必死だったからよく覚えてないんだ。……って僕、呪文唱えてたのか!?やばい、全然覚えてねえ!」
”デュースは考えることに向いていない”というカリムのアドバイスは本当だったようだ。
考えることをやめてからデュースはユニーク魔法を手にしたのだから。
「マーベラス!素晴らしいよ。見事に殻を破った姿を見せてくれたね、ムシュー・スペード。ごらん。ヴィルもキミの渾身の一撃をお見舞いされてもう全身メロメロさ」
「全身ボロボロの間違いでしょう。でも……確かに。アンタからの最後の一撃、ガツンと効いたわ。やるじゃない、デュース」
「……………はいっ!!」
ヴィルに初めて名前を呼ばれたデュースは少し固まった後、大きく返事をした。
実際、学園内でも太刀打ちできる生徒は限られる寮長クラスのヴィルを、1年生で不器用なデュースが倒したのだ。
「デュ、デュースがオレより先にユニーク魔法覚えるなんて…マジかよ~…?」
「オレ様、絶対にデュースにだけは先を越されないと思ってたんだゾ」
『早くみんなのユニーク魔法も見てみたいな』
「ふふっ。僕たちも頑張らないと、かな!」
常にデュースの一歩先を進んでいたエースが一番驚いているだろう。
正直この中でデュースが最初にユニーク魔法を覚えたのは誰も予想していなかった。
しかしここでゆっくりしているわけにはいかない。
「さて……あとはこの崩壊したステージをどうするかだな。幸いにも、ヴィル先輩がコロシアムに充満させていた毒霧によって、この騒ぎの目撃者は俺たち以外の誰もいない」
『ヴィルさんのユニーク魔法が継続効果が長いタイプで逆に助かりましたね』
「ああ。バレないうちに会場を修復し、呪いを解いて外に出たいところだが…俺たちの残りの魔力ではすべてを元通りにするのは不可能だろう」
「でも手作業じゃ現実的じゃないし…まぁ僕は魔法使えないから手作業になるんだけど…」
「……くっ、どれだけ考えても手詰まりだ。さすがにどうしようもないかもしれない」
ステージは全壊。とても〖VDC〗が行える状態ではない。
これでは失格の可能性を下げる言い訳を考える以前の問題だ。
熟慮の精神に基づく寮所属かつ参謀のジャミルでさえも途方に暮れていると、ここにいるはずのないメンバー以外の声が飛んできた。
「おやおや……これはどうしたことだ?」
「「「『!!!!』」」」
「アンタは……」