5章
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ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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『…ありがとうございました。ジャミル先輩』
「さきほどまで晴天だったのに。激しく荒れ狂う空…まるでヴィルの心を映したかのようだ」
コロシアム特設ステージに到着し絨毯から着地した。
つい先ほどまでは晴れており、予報も翌日まで晴天だと発表されていたはずだ。
それが今は雨が叩きつけるように降り、風が吹き荒んで嵐のような天候となっている。
「ジャミル、スタッフや生徒のみんなを避難させねぇと!……って、アレッ?あれだけたくさんいたスタッフが、誰もいない!?」
「お前の突拍子もない行動のフォローをし続けて何年になると思ってるんだ。とっくに全員、外に避難させた!」
「エェッ!?どうやって!?」
ステージ周囲を見渡すも誰もいないことにカリムが驚愕していると、ジャミルが溜め息交じりに返答した。
ジャミルは魔法の絨毯を連れてくるだけでなく、人員の避難までさせたという。
そのときのことを振り返った。
「僕、貴方の大ファンなんです!本物に会えるなんて、なんてラッキーだ。…あのう、サインをもらえませんか?」
「もちろんです。どこにすればいいですか?」
「それじゃあ、僕の………瞳に!」
「あ……」
「お前には客寄せパンダになってもらう。さあ、このマイクを握るんだ。そして、コロシアムの外で待機する客を楽しませるために……歌え、踊れ!」
「はい………ご主人さま」
「最小限のリスクで全員を外へ…!?」
『さすが遠謀深慮のスカラビア。外面の良さが生かされましたね』
「外面のいいオクタヴィネル寮生に言われても嫌味にしか聞こえないな」
どのようにしたのか経緯を聞き納得した。
ジャミルの洗脳で世界的人気俳優のネージュを操れば、そりゃ周りの人間たちも食いつく。
[#da=1#]の評価に、ウィンターホリデーの件からさらにオクタヴィネルが苦手となったジャミルはジト目で見やりながら軽くあしらった。
『そう謙遜しなくても。それにしてもよくここまで先回りできましたね』
「さっきネージュたちのリハを見た後、ヴィル先輩の顔を見て嫌な予感がしたんだ。どっかの誰かさんたちが蜂の巣を突くような真似をして、最悪の事態を招くんじゃないかってな」
「えーーーっ!!なんだよその言い方!?だって、放っておけないだろ!?」
「…それが善意であれ、悪意であれ、結果として蜂の巣は落とされた。あとはどう始末をつけるかだけだ」
「く~~~~っ……でも、助かった!ありがとな、ジャミル!」
日々振り回されてきたおかげで、今回の事態にもいち早く察知することができたようだ。
いつもヴィルを観察していたルーク、ウィンターホリデーでオーバーブロットの前兆を目の当たりにしたカリム、そのカリムの様子にいつも先回りしてきたジャミル。彼らが異変に気付いたおかげで現状被害者は0に留めることができている。
ジャミルは「黙っていればネージュ1人の犠牲で済んだかもしれないのに」と不満げだったようだが。
「マーベラスだ、ジャミルくん。キミの鋭い瞳はカリムくんのどんな小さな違和感すら見逃さない。従者の枠を超えた深い絆……実にボーテ!」
「やめてください。そんなんじゃなく、ただの経験の蓄積です。だいたい……このままじゃ、せっかくイメージを回復させようとした俺の計画が、台無しになるだろうが!」
『僕たち…というか主にカリム先輩でしょうけど、助けた理由もそれですか』
「ああそうだ。俺のおかげで今無事なんだから、カリムを見習ってもっと喜んでもいいんだぞ」
「開き直るんじゃねーんだゾ!ムカツク!」
グリムが睨み、それをジャミルが得意げに見下ろしていると、エースが走りながらジャミルを呼んだ。エースの他にデュースとエペルもいる。
コロシアムに残っていた関係者を全員避難させるようジャミルから指示を受けていたらしい。
「誰もいないことを確認して、最後にオレらが外に出ようとしたら、紫色の霧がこのコロシアムを覆っちゃってて」
「あの霧、触っただけで肌が焼けるように痛くなってとても突っ切れなかった…あれ、なんなんですか!?」
「一体、なにおごっちゃんだ?」
「…毒の君がオーバーブロットしてしまった」
「「「ええっ!?」」」
「詳しい説明は後だ!来るぞ!」
ルークの言葉に3人は驚愕した。まさか〖VDC〗当日にこんなことになるとは思わないだろう。
本来は1年生のエースたちも避難しようとコロシアムを出る予定だったようだ。
脱出が許されなかったとなると、外からの救援もそう簡単には向かえない可能性が高いと考えたほうがよさそうだ。
コロシアムに残ったメンバーが集まったところで、大きな雷が目の前に落ちた。
「「「『うわぁっ!!』」」」
「逃がさないわ……アタシの醜い姿を見た者は誰1人生かしておくもんですか!アーッハッハッハッハ!!」
雷と共にオーバーブロットした姿のヴィルが舞い降り、着地すると影のように溜まっているインクから化身が這い出てきた。
「今は総合文化祭。力のある魔法士がこの学校に集まっている。これだけの異常事態に、誰も気付かないわけがないだろう。だが、救援があの毒霧を突破してきてくれるまでは、俺たちで持ち堪える必要がある。腹をくくるしかなさそうだな」
「ああ。それにもし助けがくるまでに魔力が尽きれば、ヴィルの命があぶない。早く正気に戻してやらなきゃ!」
『ユウ、今回もタイミングの指示をちょうだい』
「わかった!」
「ああ……ヴィル。どうかキミの”美”を踏みにじる悲しい行為はもうやめておくれ!」
「んだね!こったの、なんもおめらしぐねぇ!」
「みんないなくなれば……この世界で一番美しいのはこのアタシよ!」
正気を失い、まともに耳を貸さない状態のヴィルに全員がマジカルペンを構えた。
今までより現状の人員も戦力も多く、毒霧さえ突破すれば他にもたくさんの魔法士が来ることができる。
あとはどれだけ凌げるか、ヴィルの魔力が持つか、毒霧がいつ突破できるか。どれが先に来るかの時間の問題だ。