1章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「失礼します」
『失礼します…』
「…?ジェイドとエディシアさんですか。何かありましたか」
エディシアはジェイドの後をついていき、VIPルームに通された。
そこではアズールが作業している最中だった。背後の大きな金庫が目を引く。
「彼が問題を起こしたお客様によって腕を痛めてしまったようでして」
『すみません…』
「そうでしたか。初日に当たりくじを引きましたね。座ってください」
ジェイドは冷やすものを持ってくる間に傷を消毒するよう言って一度部屋を出た。
入れ替わりでフロイドが上機嫌で入ってくる。
「あ、さっきの小魚ちゃんじゃーんおつかれさまぁ」
『おつかれさまです』
「ねね、さっきのすごかったじゃん、金魚ちゃんと同じくらいこーんなちっせぇのに。名前なんて言うの?」
「彼はエディシア・ファミーユさん。一緒に昼食を食べたでしょう」
「そうだっけ?」
どうやらフロイドの記憶からエディシアの存在は消えていたらしい。
オクタヴィネルに獣人は多くないようだが、綺麗さっぱりといった様子だ。
アズールがフロイドに「お前は後始末の報告ですか」と用件を尋ねると、フロイドはヘラヘラしながら徴収した金額を机に置いた。
とても学生がするやりとりとは思えない。
「失礼します…エディシアさんお待たせしました。この保冷剤を当てていて下さい」
『ありがとうございます』
「この小魚ちゃん自分よりでかい相手を絞めあげたんだよ。ね、ジェイド」
「えぇフロイド。いい関節技でしたね。若干動きが固そうでしたがこれから良くなるでしょう」
「……エディシアさん、どのように迷惑客の対処をしたか伺っても?」
『……暴れないように転倒したところを抑えました』
家族が人前に立つ仕事をしており、念の為にと身を守る術を得ていたがカフェでそれが生きたのは予想外だった。
ただ場所が場所なので改めて聞かれたエディシアに不安が襲う。
しかし支配人のアズールは嬉しそうに目を細めた。
「そうでしたか……まぁフロイドの機嫌も良くなったようなので今回はこれで良しとしましょう」
『……やっぱりスタッフが手を出すのはまずかったですよね……?』
「いえいえ。周囲に被害を出さなければ、今回のように自分で対処して構いません。まぁ紳士的な方法が一番ですがね。でもオーディエンスは盛り上がっていたでしょう?」
特にお咎めは無しのようだが、そんなことを言う店は一般的な世界で耳にすることはない。
この学園に関してはそのくらいの心構えがないといけないのだろうか、とエディシアは想定以上の治安に重い溜め息をはきかけた。
「本当ならいつかのお昼の見返りとして仕事を追加してもらおうと思っていたのですが、自ら働いてくださったようなのでチャラにしてさしあげますね」
『……え?』
「あの混雑の中、4人分確保するのはとても大変な事なんですよねぇ」
「えぇ。あの時のフロイド、席を取るのに非常に苦労されてましたよ」
「うんうん、大変だったなぁー」
わざとらしい茶番が突然始まる。
エディシアは慌てて『ちょっと待って下さい』とフロイドに向き直った。
『先輩、僕の事忘れてましたよね?何が大変だったって?』
「あ?」
『お礼に先輩たちの手間を省くことができてよかったです』
「そうですか、それはありがとうございました!次はぜひ僕も見てみたいものです。またよろしくお願いしますね」
『……ハハ……』
あの時は慣れた様子で席を奪っていたようにも見えたのですが。とは言えなかった。
彼らは慈悲の精神など持ち合わせていないのだとエディシアは確信したのだった。