5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「昨晩はひどい目にあったな……」
「硬い床で寝かされたせいで身体中痛てぇ~」
「うぅ、オレ様は出場選手じゃねぇのになんでなんだゾ……」
翌朝、ボールルームに入ってきたエース、デュース、グリムは既にゲッソリしていた。
みんなが寝静まったあと、彼らが没収されたお菓子を食べてしまったらしい。
「みんな大丈夫?」
「お、みんな来たな。おはようさん」
『いつだかにもエースがつまみ食いして、リドル先輩に首輪つけられたんじゃなかったっけ』
「昨晩の騒ぎ、敵襲かと思って飛び起きてしまったじゃないか。人騒がせな…。様子を見に行ったら全員が床に転がってるし」
「好きで床で寝てたんじゃねーし!ヴィル先輩のユニーク魔法でやられたんスよ」
「ヴィル先輩のユニー『ヴィルさんのユニーク魔法!?…あ、すみません…』
エースの口から出た言葉にエディシアが飛びついた。それによって遮られてしまったジャミルは面白くないという顔を向け、謝罪された。
『えっと、それで…ヴィルさんのユニーク魔法ってどんな感じだった?』
「おう。食い物に”呪い”を仕込めるっていうおっかねえ魔法だったんだゾ!」
「食べ物に、呪いィ!?」
ヴィルのユニーク魔法の内容を聞いたカリムは驚愕した。
毒はだいたい気付けるが、匂いも味も変わらない呪いではさすがに気付けないようだ。
「魔力を使用すれば多少の痕跡は残るものだが……ふむ」
「ふーん。じゃあ魔法の探知能力を磨けばわかるようになるってことか」
「ま、鈍感なお前に習得は難しいかもしれないな」
「えー、なんだよそれ。やってみなきゃわかんねーだろ~?」
「あのー、カリム先輩。逆になんで毒なんかに気付けるんすか?」
「ん?ああー、昔、飯に入ってたことがあって」
「「「えぇっ!?」」」
カリムが食事に毒を盛られた経験があったことにエース、デュース、エペルは驚愕した。
すでに知っているグリムはホリデーに毒味をさせられたこと、エディシアは部活で出かけてもあまり外食に乗ってくれないとそれぞれ不満を口にした。
カリムは何度か酷い目にあったことで食事のたびに疑うようになってしまった過去を持っていた。
しかし人のいい彼はそんな目にあっても、誰かを疑わずに美味しく食べたいと考え、結果毒の鑑定が得意分野の1つになったのだ。理由が自分の身の安全のみに留まらないのがカリムらしくもある。
「”これは毒が入ってない”って先にわかってればちゃんと味わって食えるし、もし口に入れてもすぐヤバいと気付けたら取り返しがつかないことにはならないだろ?オレも、相手もさ」
「相手も……って?」
「例えば犯人が後から”間違ったことをした”って反省した時、オレがこの世にいなかったら取り返しがつかない。過ちに気付けたのに、名誉挽回のチャンスがないなんて…そんなの、オレはヤだよ」
「…………」
ジャミルはカリムの話を眉間にシワを寄せながら静かに聞いていた。
実際カリムが危ない目にあったのにジャミルを解雇しなかったのも、まだジャミルとの関係を修復できる信じているからという考えもあってのものだ。
どことなくホリデーの件とリンクする内容に、ジャミルは何とも言えない気持ちでいた。
「熱砂の国には、砂漠の魔術師の伝説だけじゃなく、王様になったコソドロの言い伝えもあるんだ」
「王様になったコソドロぉ?」
「どんなお話なんですか?」
『伝説にもいろいろあるんだね』
突然、カリムは熱砂の国の言い伝えについて話し始めた。
ある日、コソドロは姫に出会い恋をしたことで、過去の盗みや嘘を反省して心を入れ替えた。その後、国を乗っ取ろうと企んだ悪党から王や姫を救い、コソドロは姫と結婚し次の王となった———という内容だった。
「オレ、この話がすっげー好きでさ!だってコソドロが心を入れ替えたことをみんな信じて、挽回のチャンスをくれたってことだろ?」
「やっちまったものはしょうがない。大事なのはその後……ってことか」
「現実はおとぎ話と違って”悪党は成敗しておしまい”じゃないもんね」
「そういうこと!だから、そのためにもオレはちゃんと生きてなきゃ」
言い伝えを話した意味を理解したメンバーたちはなるほど…と納得した。
カリムは「結局は美味いメシを食うための生活の知恵みたいなもんだけどな」と最後に明るく笑い飛ばしたが、何とも言えない不穏な空気感にエペルが思わずこぼした。
「カリムさん、笑ってるけど、だいぶヘビーな話を気かされたような……」
「……さあな。本人が笑ってるなら別にヘビーじゃないんだろ」
「こんな真っ直ぐな人がなぜ闇の鏡に選ばれたのか…」
『やっぱり他の寮長たちとはタイプが違うよね』
「本当なんだゾ。いいヤツすぎて、オレ様耳の後ろがムズムズする」
メンバーたちのそれぞれの感想にカリムが不思議そうな顔をした。
それに対してエペルが「この学園にいる他の人たちとは違う感じがする」と改めて伝えると、とんでもない返事が返って来た。
「あ、そういやオレ、この学園に2ヶ月遅れで途中編入してきたんだ。それとなんか関係あんのかなぁ?」
「「「「『えっ!?』」」」」
「この学園、編入なんか出来るんだ…」
「そんなに驚くことか?監督生だって特別編入だろ?」
「それは、ただの手違いというか…入学式には一応いたんですが……」
『カリム先輩の新情報が毎回すさまじい…』
「ナイトレイブンカレッジって、闇の鏡に魂が選ばれたヤツしか入れないんじゃないの?」
カリムが言うには、選定漏れだったか、特別枠だったかで突然学園から入学許可証が届き、すぐに黒い馬車が迎えに来たのだそうだ。
「後から魂の資質が認められたってことか……?」
「フン。そもそも闇の鏡が魂の資質で生徒を選ぶことすら、本当かどうか疑わしい。……あの学園長のことだ。どうせアジーム家からの寄付欲しさに裏口入学を決めたんだろうさ。おかげでこっちは自由な学園生活がパァだ」
『(たしかにスカラビア寮はカリム先輩が入学してから豪華にリフォームされたって聞いたな)』
「オレはこの学園に来られて、毎日楽しいぜ。ジャミルとも改めて友達になれたしな!」
「だから、俺とお前は友達じゃないって言ってるだろうが…!」
パンパン!
「揃ってるわね。ジャガイモたち」