5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「…………オレ…………。メインボーカルに選ばれなかったの、結構悔しくってさ」
「へ?全然そんなふうに見えなかったんだゾ」
「オレも発表された時はなんにも感じなかったけど、さっきベッドに入って目を閉じたらだんだん悔しくなってきて……。いてもたってもいたてなくて、練習しにきたんだ。……オレ、こんな気持ちになったの、初めてでさ」
「はは~ん。さてはオメー、今まで出に入らねぇもんなんかなんにもなかったんだろ!すげー大富豪だもんな。羨ましいヤツなんだゾ~」
「あ~、う~ん。そうなんだけど、そうじゃないっていうか……ちょっと違うんだよなぁ」
「オレ、「自分が選ばれて当然だ」なんて考えたことさえ、一度もなかった。ってことは、それが一度も頭をよぎらないくらい、ジャミルがオレに席を譲ってくれてたってことなんだよな…きっと。……悔しいよ。スゲー悔しい」
「そんなこと言ったら、オーディションに落ちたオレ様のほうがよっぽど悔しいんだゾ」
「あっ、それもそうか。悪い、嫌味を言うつもりじゃなかったんだ!いやぁ、オレ、こういうとこだよな~。ほんとスマン!」
「…ゴホンッ!そう思うなら絶対に〖VDC〗で優勝するんだゾ」
「そうだな。頑張るから応援してくれよ!騒がしくして他の奴らを起こしたくないし、歌の練習はやめにして今日は寝るとするぜ」
「また明日から頑張りましょう。おやすみなさい」
「おう。おやすみ、ユウ。グリム!」
「ユウ、オレ様たちも早く部屋に戻ろうぜ。肉球の裏がヒエヒエなんだゾ」
「……………」
『……だ、そうですよ、ジャミル先輩』
「…っ…お前だったか…着込みすぎてて一瞬誰かと思ったぞ」
『夜の冬空はとても冷えるので』
みんながそれぞれの部屋に戻った後、カリムが外で歌の練習をしていることに気づいたユウとグリムが本人と話していた。
そのやりとりを物陰からひっそりと聞いていたジャミルに、これでもかと着込んだエディシアが声をかけた。
エディシアの部屋は分厚い防音シートに覆われ、防音室のようになっているので外の音はあまり聞こえないが、寝る前にトイレを済ませておこうと廊下を歩いている際、聞き覚えのある歌声がして外にやって来たのだ。
『初めて手加減無しの実力でカリム先輩を出し抜いた気持ちはどうですか?』
「そんなこと聞いて、どうせまた他のヤツらに配信でもしてるんだろ」
『失礼ですね、ただの興味ですよ』
ジャミルは計画が暴かれた原因でもあったホリデーでの配信の件が軽いトラウマになっているようで、あのときと同じオクタヴィネルで尚且つ現場にいたエディシアを警戒した。
しかし『今そんな面倒なことをしてなんのメリットがあるのか』と返されてしまった。
「…それもそうか…。………いい気味だと思ったさ。今さら焦って自主練なんてらしくないことまで始めるのも実に滑稽だな」
『ずっと我慢してましたもんね。あのラップパートも、ジャミル先輩がいなかったら全員でダンスオンリーのパートにする予定だったんですよ』
「そうだったのか?ずいぶんな期待だな」
『ムシュー・マルチなんて呼ばれるほどなんでもこなしちゃいますからね。僕としても流行りを取り入れられてよかったです』
今回メインボーカルの1人であるジャミルにはラップパートが任されている。
エディシア自身、最近の曲にはラップパートが挟まれることが多いので使いたかったし、ジャミルなら歌い上げられるだろうと考えたのだ。
「お前こそ曲ならなんでも作れるのか?まさかあんなのまで用意できるなんて、少し意外だった」
『それが自分でもよくわからないんですよね。曲作りに反映させられるほどあのジャンルは聞いてこなかったし。でも朝起きたらファイルが1つ増えてて、開いてみたらあのパートのデータが入ってたんです』
「なんだそれ…ついに寝ぼけながら曲を作るようにでもなったのか?」
作曲者本人はあのパートを完成させた記憶がなかったというとんでもない事実が飛んできた。
しかも見本用に自身の声で録音までしていたのにそこすらもわからないと言う。
『でもあのデータに入っていた歌い方…なんだか…』
「?」
『…いえ。それより先輩、手真っ赤じゃないですか…これ使ってください。手荒れになったらヴィルさんの雷が落ちますよ』
「え、あぁ。それはどうも…」
エディシアが心当たりのある様子を見せたもののすぐはぐらかした。
しかしジャミルの手は本当に冷え切っているようで、褐色でもわかるほどに肌が赤みを帯びていた。
ポッケからカイロを渡したエディシアは『明日からは朝練も始まりますし早く寝ましょう』と促した。