5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ボンジュール!ユウくん。グリムくん。これから4週間、お世話になるね。よろしくたのむよ」
「これもツナ缶のためだ。しかたねぇんだゾ」
「いらっしゃいませ」
『ついに強化合宿が始まるのか…』
———合宿初日。オンボロ寮に続々と荷物を持ったNRCトライブのメンバーがやって来た。それを元々の住人であるユウ、グリムと、作業に籠るため最近泊まり込んでいる[#da=1#]が出迎えた。
「おぉ、なんか天井が低い屋敷だな。魔法の絨毯に乗ったら頭をぶつけちまいそうだ」
「はぁ……まず、屋内で飛ぼうとするな。ユウ、悪いが俺の部屋はカリムと同じか隣の部屋にしてくれないか?鏡舎を通らないぶん、スカラビアよりもセキュリティが甘いからな」
出迎えた途端カリムからは悪気ゼロの素直な感想が飛び、ジャミルは部屋の要望を注文した。カリムが刺客に狙われないために最善を尽くしたいということだった。
しかし当事者であるカリムは入学以来狙われたことがないと悠長に構えている。
ユウは当たり前のように交わされる物騒な内容に苦笑いを浮かべながらリクエストを了承した。
「おじゃましまーす」
「ユウ、今日から世話になる。これ、トレイ先輩から」
「ん?箱の中から甘くていい匂いがするんだゾ」
「トレイ先輩特製のチョコレートケーキとアップルパイ。別の寮に世話になるんだから、手土産くらい持っていけってさ。お母さんかっての。あとでみんなで食べようぜ」
『トレイ先輩お手製ならすごく美味しいだろうけど…』
「にゃっはー!さすがは食えないメガネ、気が利いてるんだゾ」
「———残念だけど、その手土産は没収させてもらうわ」
ハーツラビュルからは手土産のケーキが持参された。
スイーツ好きの[#da=1#]は心躍らせたが、はたしてこれから合宿というときにヴィルが許すのか……そう考えていると案の定ストップがかかった。
「良かれ」で甘やかして相手を駄目にする一番気を付けなきゃいけないタイプの男——それがトレイに対するヴィルの評価のようだ。
たしかに彼なら相手をグズグズに甘やかし、得意のケーキ作りでブクブクに太らせても「俺は今のお前もマスコットみたいに可愛げがあって好きだぞ」と言いそうではある。
ヴィルが荷物を持ったまま談話室に移動するよう指示したことで全員が玄関から移動を始めた。
「で、ヴィル。なんなんだ?大事な話って」
「みんな、持ってきた荷物を開けてみせてちょうだい」
「えぇ?荷物広げるなら部屋に行ってからのほうが……」
「いいから開けて」
メンバーが広げた荷物を確認したヴィルはエースとデュースを「新ジャガ1号、2号」と呼び、お菓子やジュースが荷物に入っていることを指摘した。
そう、荷物検査が始まったのだ。
カリムも荷物の大半が食べ物のようで、ジャミルの作った揚げ饅頭とクナーファを持ち込んできたようだった。
クナーファは小麦粉のお菓子で[#da=1#]もお気に入りである。
「ジャミルは食べ物を持ち込んでないようだけど……なに?この大きな布の包みは」
「有事の際にすぐ解毒薬を調合できるように魔法薬と薬草のセットです。魔法薬学に長けたヴィル先輩がいらっしゃるので必要ないかとも思ったのですが。念のために」
「なんか物騒ね……。まあいいわ」
ジャミルは従者らしく高校生が持ち込むとは思えない物が荷物に入っていた。
エペルは林檎のドライチップを持ってきていたが、ナッツやドライフルーツなら食べすぎなければOKということで持ち込みを許可された。
「最後にルーク。アンタのことは信頼しているわ。でも荷物が分厚いアルバムだけって…一体なんなの?」
「はは。それはただのライフワークの記録さ。肌身放さず持っておきたくてね。プライベートなものだから、今ここで開かれると恥ずかしいのだけど…」
「失礼ね。アタシも他人のプライバシーを侵す気はないわ」
最後のルークの所持品はアルバム一冊。まさかのこれのみだった。
さすがに中身を開けることはなかったが、分からないことでより異様な存在感を発揮している。
「さて、それじゃあ……ここにある砂糖や小麦粉を使ったお菓子、ドリンク類はすべて没収よ!!」
「「「えぇ~~~~っ!?」」」
「なんでだよ。別に毒なんか入ってないぜ?」
「スカラビアコンビは発想がいちいち物騒!そういうことじゃないわよ。強化合宿をなんだと思ってるの?アンタたちには〖VDC〗に向けて、心身を曇り一つない鏡のように磨き上げてもらわなきゃならない。本番までの4週間……肥満の原因になりやすい単糖類と小糖類たっぷりのスイーツやドリンク。そして肌荒れの原因になる脂質や香辛料を多量に含んだ食事は一切禁止!」
この大事な時期、演者自身も美しく磨き上げるためにヴィルがお菓子類を許すはずが無かった。
どんなに洗練されたパフォーマンスが出来るようになったとしても、ニキビやくすみがあるだけで見栄えは悪くなってしまう。
カリムとデュースは驚愕し、エースは育ち盛りなのにと没収の反対を主張した。
しかしヴィル本人は、必要な栄養と睡眠を摂ることで183cmまで身長が伸びたとあっさり論破してしまった。
「なあ、オレ様たちは選抜メンバーじゃねぇんだから食ってもいいんだろ?」
「好きにすればいいけど、メンバーの前で食べてストレスを与えるのはやめて」
「き、厳しい……」
『まぁ正論だね。グリムだって我慢してる目の前でツナ缶やごちそうを食べられたらムカつくでしょ?』
「まぁ…それはそうだけど…」
ユウとグリム、[#da=1#]はステージに立たないからということでカリムたちほどの厳しい制約は無いものの、共に合宿するチームである以上ある程度は演者たちと同じ条件で過ごすこととなる。
グリムはまだ始まっていないというのにぐったりした。
「はっはっは。大丈夫、心配ないさ。なにもヴィルはキミたちにダイエットをさせようとしているわけじゃない。食の観点からも、より効率的に身体を引き締め美しくなってもらおうというだけさ」
「さ、さすが。テッペン目指してる人は覚悟が違うな…」
「フッ……この程度で”覚悟”ですって?これはただの”基本”よ。じゃあさっさと自分の部屋に荷物を置いてきて。すぐにレッスンを始めるわよ」
~~~♪
「ん、マネージャーから電話……なにか急用かしら?」
ユウ、グリム、[#da=1#]が部屋の案内で演者たちを連れていき、談話室にはヴィルが1人残った。
そんなときにスマホの着信が鳴り、電話を取った。